名前:藤井 敏嗣
            職名:教授
            所属:地球ダイナミクス部門
            専門:マグマ学・岩石学
            homepage : http://www.eri.u-tokyo.ac.jp/fujii/index.html
 
 


研究内容

最近は洪水玄武岩マグマの成因および超高圧下における水の組成と物理的性質, 特に移動度に着目している.デカン洪水玄武岩の岩石学的・地球化学的研究から地 殻物質の混染を受けていないマグマの組成を推定したところ,このような組成のマ グマはマントル物質の溶融でできる本源マグマから導くことが困難であることが分 かった.さらに,海洋地殻物質とマントルペリドタイトの高圧下での溶融実験から, デカン洪水玄武岩の非混染マグマは3-5GPaの圧力下で玄武岩の大規模溶融によるマ グマとペリドタイトの小規模溶 融によるマグマの混合によって生じうることが示さ れた.このようなマグマ混合は沈み込んだ海洋地殻の破片を取り込んでマントル中 を上昇する玄武岩-ペリドタイト複合プルームの融解により生じるというモデルを 提唱し,洪水玄武岩の特徴をうまく説明することに成功した.超高圧実験により, マントル鉱物と共存する水は多量のシリケイト成分を溶解し,8GPaの圧力では70% 以上も溶解することが明らかになった.したがって,地球内部の水は多量のシリケ イトを溶け込ませた,いわば低温のマグマということになる.このような水が浅所 に移動すれば,シリケイト成分の溶解度が減少するためマントル物質の分化が生じ ることになる.このような水の 移動度を調べるために,マントル物質に対する水の 濡れ角を測定する高圧実験も行っている.その結果,低温・低圧では濡れ角が大き いため,水は結晶粒界にとどまってしまい,移動できないが,3GPa以上の圧力にな ると,濡れ角が小さくなって,結晶粒界の水は連結して移動しやすくなることが分 かった.我々はこのようにマントル中での水の移動度が圧力によって変化するため に,沈み込み帯における火山前線の位置と沈み込むスラブの深さの関係が決定され るというモデルを提唱している.
 
 

主要論文・著書主要論文・著書

Sato, H., Nakada, S., Fujii, T., Nakamura, M., and K. Suzuki-Kamata, Groundmass pargasite in the 1991-1995 dacite of Unzen volcano: phase stability experiments and volcanological implications, Jour. Volcanol. Geothermal Res., 89, 1/4, 197--212, 1999.

Mibe, K., Fujii, T. and Yasuda, A, Control of the location of the volcanic front in island arcs by aqueous fluid connectivity in the mantle wedge, Nature, 401, 6750, 259--262, 1999.

Fujii, T. and S. Nakada, The 15-September 1991 pyroclastic flows at Unzen Volcano (Japan): a flowing model, Journal of Volcanology and Geothermal Research, 89, 1/4, 159--172, 1999.

中田節也・渡辺秀文・藤井敏嗣, ボーリングコアから見た伊豆大島火山の発達史, 月刊地球, 21, 7, 424--429, 1999.

三部賢治・藤井敏嗣・安田敦, マントルウエッジ中の水の移動と沈み込み帯における火山フロントの形成, 地学雑誌, 109, 4, 590--599, 2000.

藤井敏嗣, 火山のもと−マグマのできかた−(山下輝夫編著「大地の躍動を見る−新しい地震・火山像」), 岩波書店, 2000.