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2013年度 オープンキャンパス / 一般公開
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地震計で地球~月~火星の内部を探査する
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新谷昌人 観測開発基盤センター准教授 |
地震は災害を引き起こす怖い現象であるけれども、地震の波を精密に測ることにより、地球の内
部がどのようになっているか調べることができる。仮に地球に穴を掘って調べようとしても、深い
穴は周囲の圧力でつぶれてしまい、せいぜい 10km くらいしか掘ることができない。また、電波な
どは地面を深く伝わることができないので、地球内部を調べるほぼ唯一の方法が地震波を使った観
測である(最近では、本ミニ講演会にあるような素粒子を使った新しい方法も研究が進められてい
る)。もし地球上に地震が全く無ければ、地球の中身に関する知識も相当貧弱なものであっただろ
う。現在では、おおよそマグニチュード5以上の規模の地震が起これば全世界で検知できる地震計
ネットワークがあり、いろいろな場所で起こる地震の波の届くタイミングや波形を世界規模の何百
台もの地震計で測ることにより、地球の内部構造が詳しく調べられている。かつて 1970 年代にア
ポロ計画で宇宙飛行士が月に地震計を置いて、地球と同様に月の内部も月の地震(「月震」とよば
れる)を使って調べられたことがあった。月震は地球の地震ほど規模の大きいものは無いようで、
地下深い特定の場所で地球の引力が引きがねとなり繰り返し起こる奇妙なものも観測されている。
しかし、アポロ計画で置かれた地震計はたった5か所であり月の裏側には無く、月の内部はまだほ
とんど未解明といってもよい。一方、火星にもバイキング計画で探査機に地震計が搭載された。し
かし、機器のトラブルや火星の風の影響で、うまく観測ができず、明確な地震(「火震」とよぶこ
ともある)は捉えられなかった。火星探
査は欧米が先行しており日本はかなり
出遅れているが、得意な地震観測を盛り
込んだ探査計画を検討しているところ
である。火星の低温・強風・高い放射線
の環境に耐えるレーザーを使った地震
計や、風の揺れを逆手にとった探査方法
などうまくいけば月よりもよく内部を
観測できるかもしれない。開発中の地震
計や現在考えている探査計画について
紹介する。
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図:開発中のレーザー地震計.
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