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2004年度AO3班 班会議
日時:2004年8月25日13:00から
場所:東京農工大学 工学部6号館5階514会議室
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 会議進行 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
第1部:衝撃波管実験装置の進捗状況
13:00-14:30
亀田 ・衝撃波管実験装置の解説
・実験装置見学および実演
第2部:他の分担者の進捗状況紹介
14:30-19:00
阿部 (実験準備状況など)
大西(大橋研助手)(数値計算進捗状況)
小屋口 (火山と実験の比較のための算段など)
=小休止(5分)=
高木 (数値計算進捗状況)
伊藤 (数値計算進捗状況)
辻(田中研助手) (数値計算進捗状況)
井田 (噴火予知シミュレータ構築に向けた展望など)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 概要報告 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
・亀田
まず、高粘度気液二相流を用いた衝撃波管実験装置について現状の解説が行われた。
そのあと実験棟に移り、実際の実験装置が紹介され、実演が行われた。
(装置解説&実演風景)
この装置の目的は、高粘性流体中の気泡群が急な大減圧をうけて膨張しながら
円管内を流動する際に現れるダイナミックな現象を実際に観察することにある。
それは火山の爆発的噴火に伴う火道内のマグマ流動過程を模擬することを念頭に
置かれているが、実験は始まったばかりで実験条件の制御に関する課題なども
紹介されて、分担者間で議論された。
また今後の実験方針について議論され、大橋研による数値計算との連携によって、
気泡形状の比較および流れ場の推測を行うなど、分担者間の緊密な連携が確認された。
・阿部
亀田研の衝撃波管は断熱場での空気-高粘性流体の混相流を扱うが、こちらは
「気泡の析出や相変化の影響」に焦点を当てた衝撃波管実験装置について、
現状の解説が行われた。
実験装置の試運転段階として2つの試験例が紹介された。1つは沸点近傍の水を
用いた蒸発(相変化)が伴う衝撃波実験で、もう1つはシリコンオイルにアセトンを
溶け込ませた核形成+析出成長がともなう衝撃波実験である。
今後の方針として、小屋口のほうから提案されている高粘性体に対する衝撃波モデル
から予測される無次元パラメータを念頭に置いて、実験条件設定などを議論しながら
進めていく方針が確認された。
・大西(大橋研)
昨年度までの成果として得られた粘弾性体を扱える格子ボルツマン法について、
その数値モデルのダイナミクスの検証という観点で平面ポアズイユ流れ場における
単一気泡の変形と気泡位置との関係について試験的な結果が紹介された。
他の分担者から、単一気泡については過去の研究事例との比較によってより深い
検証がなされるだろうとの指摘があり、その上で多数の気泡に対する発展的な
現象が再現されることが期待されると同時に、亀田研の実験結果との緊密な連携が
期待されるという見解で一致した。
またそのために、モデルが扱える気泡と液相の粘性比の範囲の拡張が、今後の
方針であることが確認された。
・小屋口
マグマの破砕現象を対象にした衝撃波管問題と1次元定常流モデル、マグマ中の
気泡生成・成長を対象にした1次元定常流モデルによって、火山噴火現象を
解析的に理解しようとする取り組みが紹介された。
特に強調された点は、例えば非線形なマグマ破砕現象について、マグマが
破砕するかしないかという現象の分岐にかかわる重要なパラメータ群を導出して
提示することが、実験や数値計算との緊密な連携を保持する点だと言うことだった。
またこの観点から、他の分担者による衝撃波管実験に対して、マグマ破砕を
再現するために重要な実験条件と流体物性に対する制約を議論していくことが
確認された。
・高木
分子動力学にもとづいた数値計算(MD法)によって、静止流体中の気泡成長に
対する「気泡の析出や相変化の影響」が紹介された。
蒸発型(相変化)の気泡成長では、複数の気泡の競合によって大きい気泡が
選択的に成長していくオストワルドライプニング的な成長が、場の圧力変動を
媒介にして起こる様子が紹介された。
析出型の気泡成長では、He-Ar系を想定した数値計算結果が紹介されたが、
実際の実験でみられる成長様式と定性的な相違があること、その相違がスケールの
差による可能性があることなど、今後の課題が紹介された。
・伊藤
こちらもMD法による数値計算であるが、衝撃波管実験を想定した試験的な計算
結果が紹介された。
蒸発型の1成分粒子の場合と、気相析出がある2成分粒子の場合とで、衝撃波の
伝播の定性的な様相の違いが見られることが紹介された。
課題として、MDで粘性を一桁かえるのは分子間ポテンシャルの変更だけでは
一般に難しいという点が挙げられた。
今後、物性などで現実のマグマに近づけるかわりに単純化しておいても、衝撃波と
して相変化や析出の影響がどのように表れるのかを理解するツールとしての役割に
焦点を絞り、高木との緊密な連携を深める方向が提案された。
・辻(田中研)
火砕流の流動化現象を理解する目的で取り組まれている、離散粒子法(DEM)と連続
流体力学計算(CFD)のカップリングによる数値計算の現状が紹介された。
火砕流は高温の熱源である粒子と周囲の大気との相互作用が重要であるため、
粒子とガスの力学的な相互作用だけでなく、熱伝達のモデル化が重要な課題で
あることが認識されており、その取り組みが紹介された。
しかし他の分担者から、詳細なモデル化がどこまで必要なのか不明な点、および
モデル化の課題の困難さが指摘された。
そこで分担者間の議論によって、今後の方針として火砕流で再現したい明確な
現象のリストアップ、それぞれの再現のための数値計算のモデル化、それらの検証の
ための室内実験の立ち上げについて、小屋口との緊密な連携をはかっていくことが
確認された。
・井田
火山の噴火予知シミュレータに向けての統合という観点で、これまでの議論に対する
コメントが出された。
噴火現象を巨視的にみたときに観測される現象をモデル化するためには、気泡を
含んだ高粘性流体の流動様式、気泡成長や破砕様式など、微視的な現象および
スケール間相互作用の理解が重要であること、そのため実験や数値計算などを通して
微視的な現象のモデル化に取り組んでいる班全体の現状と今後の姿勢が確認された。
また分担者間の議論で、現在班全体が重点的に取り組んでいる素過程以外に注目すべき
と思われる、気泡連結現象についてコメントがあり、その取り組みに関する現状報告や
分担者間の連携の提案などがなされた。