スマトラ島沖の地震

ウェブサイト立ち上げ: 2009年9月30日(水)
最終更新日: 2009年10月27日(火)

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2009年9月30日19時15分(日本時間,現地では5時15分),インドネシア西部のスマトラ島沖(南緯 0.789°,東経 99.961°,深さ80km)でMw7.6(USGSによる) の地震が発生しました.

この地震についての詳細を報告します.(アウトリーチ推進室)


【更新情報】


【概要】

  • 9月30日2時48分(日本時間)に発生したサモア諸島沖の地震との関連はありません
  • 震源深さと震源メカニズムから,プレート内部での地震と考えられます

【テクトニクス背景】

スマトラ島は,オーストラリアプレートがスンダプレート(ユーラシアプレート)の下へ,北東方向に沈み込むところに位置しています.このため,世界的にも地震活動は活発な地域となっています.津波で20万人を超える死者を出した2004年のスマトラ地震(M 9.1, USGS)は今回の地震の北部で起きました.その後,2005年と2007年とに,相次いでM8.5クラスの地震が起きています.

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スンダプレート(ユーラシアプレート)にオーストラリアプレートが沈み込む様子を示した模式図.両プレートの境界で起きる地震を「プレート境界地 震」(図のピンクの部分),沈み込むプレートの内部で起きる地震を「スラブ内地震(プレート内地震)」(図の水色の部分)という.2004,2005 年,2007年の一連のスマトラ島沖地震は,プレート境界地震であったのに対し,今回の地震は図の水色の部分で起きたスラブ内地震である.

一連のスマトラ島沖地震はプレート境界で発生していますが,今回の地震は沈み込むプレート内部で起きた地震と考えられます.というのは,震源の深さが 80kmと深く(一般的にこの地域のプレート境界は50km以浅),震源のメカニズムも,圧縮軸がプレートの沈み込む方向と一致しないためです.

2004年の地震を北限として,スマトラ島沖では,2005年に今回の震源より300km北側のプレート境界で,おおよそ350kmにわたる断層運動によ るM8.6(UGSG)の地震が発生しているほか,2007年には今回の震源より350km南側のプレート境界で,おおよそ250kmにわたる断層運動に よるM8.5(USGS)の地震が発生しています.今回の震源のエリアでは,1797年以降,M8.5以上の地震は起きておらず,この空白域での地震が心 配されていますが,今回の地震がそれを誘発するかどうかはまだ分かっていません.

一連のスマトラ島沖地震の震源域(震源断層の分布).赤星は今回の地震の震源の位置をあらわす.ただし,2004,2005,2007年のスマトラ島沖地震よりは震源が深く,スマトラ島側に位置する.
(Ishii et al., 2005に加筆)


【J-arrayで観測された地震波形】

J-arrayで観測された波形のページ
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地震予知情報センター

【W-phase波形による震源メカニズム】


strike / dip / slip

断層面1: 89.2 / 33.4 /33.8
断層面2: 70.2 / 72.2 / 118.8

以上,横田裕輔氏(修士2年)による


【インドネシアと日本の共同研究】

2004年12月のスマトラ・アンダマン地震を契機として,日本 とインドネシアを含むアジア諸国との間では多くの共同研究が活発に行われるようになりました.地震研究所を中心とする日本の学際研究グループは 2005-2007年度の3年間にわたって文部科学省振興調整費「スマトラ型巨大地震・津波被害の軽減策」(研究代表者:加藤照之)を実施したほ か,2009年度からは新たに文部科学省と外務省の協力のもとに創設された「地球規模課題国際科学技術協力事業」により,新たなプロジェクト「インドネシアにおける地震・火山の総合防災策」(研究代表者:佐竹健治)をスタートしています.


【リンク】