1.「定常的な広域地殻活動」研究計画

「定常的な広域地殻活動」計画推進部会

2000年6月15日 22:46版)

 

「定常的な広域地殻活動」においては,島弧−海溝系規模の空間的スケールと地震サイクルの繰り返しを視野にいれた時間的スケールにおいて,場の不均質,その中での地殻活動のメカニズムの解明をし,プレート運動の特性を反映している地震の繰り返し発生の特徴を明らかにすることが重要です.これらにより,プレート運動に伴う,沈み込み帯での応力再配分・蓄積過程に関する新しい知見を得ることを目指すべきです.この目的を達成するため,下記の3項目の観測・研究を重点的に実施することとします.

 

(1)   プレート境界域の地殻活動及び構造不均質に関する研究

太平洋プレート境界の構造及びプレート間カップリングに関する観測研究を実施する.具体的には,三陸沖の海底地震観測によるプレート境界の不均質構造の解明を目指す.制御震源による構造調査とともに,自然地震観測を行い,プレート間カップリングの空間分布の違いの解明することとする.特に,今年度は自然地震観測を行い,沈み込み領域での地震の発生様式(地震震源の空間分布や地震のサイズ,メカニズム)を把握し,プレート間カップリングに関する新らしい知見を得ることを目指す.陸域においては,GPSや広帯域地震計を用いた高精度観測の実施によって,プレート境界部の構造とカップリングの空間的変化の解明を目指す.地震準備過程における観測研究と密接な連携を図ることで,太平洋プレート沈み込みに伴うプレート間カップリングの空間的・時間的変化に関する新しい知見が得られると期待される.

 

(2)   プレート内部の地殻活動・構造不均質に関する研究

プレート内(島弧内)の構造的不均質を解明し,地震活動・地殻変動等の地殻活動との関連性を明らかにする目的で,日高衝突帯を中心とする地域で大規模合同実験観測を行う(8月に実).具体的には,反射法を主体とした制御震源探査を衝突帯前縁部で実施し,この地域の地殻短縮の主要因とも考えられる深部断層系やデタッチメント構造のマッピングを行う.去年の探査結果と合わせることにより,十勝平野から日高山脈をへて石狩低地帯にいたる地殻衝突構造が明らかになると期待される.また,自然地震観測は,今年度も継続するものとし,日高山脈から陸側斜面(1982年の浦河沖地震震源域を含む)までの地震活動の様式(震源分布やメカニズム等)を明らかにして,同地域の応力場についての知見を得ることを目指す.特に衝突による地殻変形と,現在の地殻の動的特性の現れである地震活動や地震メカニズムから推定される応力場との関連性等の解明を目指す.また,トモグラフィ等により,制御震源探査のみでは不十分である,地殻の3次元的構造とその空間変化を解明する.この実験観測と平行して,北海道を含む数カ所において電磁気的探査を実施し,島弧地殻スケールの電気伝導度構造を解明するとともに,日高衝突帯の詳細な構造を明らかにするための観測を行う.最終的には,地震学的構造と電磁気学的構造を総合的に解釈し,同地域の地殻不均質構造に関する,新たな知見が得られるものと期待される.

 

(3)   地震発生の繰り返しの規則性と複雑性の解明

地震発生の繰り返しの実態の解明は,地震発生の場における定常的運動及びその揺らぎを明らかにする意味でも,また地震の発生時期の長期的予測を行う基礎という意味でも重要である.地震発生の繰り返しの間隔は数百年から数千年に及ぶ場合が多く,地質学的手法を取り入れた活断層調査,津波痕跡調査及び歴史地震調査を実施する.このような研究は,対象とした地震断層の物理的性質(震源の静的・動的パラメータ,破壊伝播様式,破壊強度分布等)の解明に貢献すると考える.特に,地形判読,音波探査,地層抜き取り,トレンチ調査を行い,断層のずれの量を測定し,その空間分布を解明する.これらの研究によって地震発生時期の予測精度を高め,アスペリティの位置や破壊伝播方向などの予測を試みる.

 

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