八つの計画推進部会

史料・考古1000年を超える歴史資料と理学データの融合

史料に基づいて過去に発生した大地震などを推定する研究はこれまでにも行われてきました。しかし、これまでは多くの場合、地震や火山の研究者が史料を読み解いたために、史料の信頼性などの評価は十分とは言えない状況でした。東日本大震災後は、日本史研究者の協力のもと、史料に基づいて過去の大地震や火山噴火を組織的に調べる研究が始まり、新たな史料の収集とデータベース化、解釈などが進められています。また、遺跡などの考古資料にも過去の地震や火山噴火の痕跡が見つかることがあります。これらについても、考古学研究者の協力を得て組織的な調査を始めています。

地震計などの近代的計測による、地震や火山噴火の観測データは100年ほどの蓄積しかありません。しかし、東日本大震災から分かるように、大規模な地震や火山噴火は数百年や数千年に一度の頻度で発生します。つまり地球物理学的な観測データを一度も手に入れることなく、大規模地震や火山噴火を迎えることが多いのです。そのため、歴史資料からこれから起こり得る地震、火山噴火を推定することが重要になってきます。

このような1000年を超える歴史資料に基づく研究に加え、地質学に基づく過去の地震や噴火の研究、さらに地球物理学的データに基づく地震や火山噴火の理解を組み合わせることが重要です。歴史資料だけから地震や噴火の特性を詳しく知ることはできません。地震学や火山学の知識を利用して、断片的な歴史資料から過去の大地震や火山噴火を詳細に推定することにより、大規模地震や火山噴火の予測に役立てたり、これらに備えるためのデータとしたりすることを目指しています。

  • 部会長:榎原 雅治(東京大学史料編纂所)
  • 副部会長:佐竹 健治(東京大学地震研究所)

データベース・データ流通観測研究基盤としてのデータベースの共有化

地震・火山の研究を進める上で、観測データをはじめとする各種データは欠かせないものです。日本には世界でもトップクラスの地震や地殻変動の観測網があり、これら観測で得られたデータを利用してレベルが高い地震・火山研究が行われています。日々蓄積されている膨大なデータを有効に活用するための技術開発が行われ、これらデータを用いて得られた結果は広く公開されています。

巨大地震や大規模火山噴火のような発生頻度が低い自然現象を解明するためには、長期にわたる観測データの蓄積は重要です。何十年、年百年かけてひずみやマグマが蓄積されて巨大地震や大規模噴火に至るのですが、その間の地殻変動や地震活動などの変化を明らかにすることが、これらの発生の予測に必要なことは言うまでもないことでしょう。また、最近は日本中に張り巡らされた観測網により日々膨大な観測データが得られています。このようなデータを保存し、多くの研究者が利用できるようにすることが、地震・火山研究のためには重要です。

研究を進める上で重要なのは観測データだけではありません。例えば、歴史資料から推定された近代観測以前の地震や火山噴火の記録もデータベース化して公開することで、多くの関連研究者が利用して研究の加速につながることが期待できます。ほかにも、地殻構造などの解析結果、これまでに発生した大地震の震源過程などの研究成果などもデータベース化することにより、関連分野の研究者が互いの研究成果を理解し、利用しながら研究を進めることができるようになります。解析ソフトウエアも研究者間で共有化することで、より効率的に研究が進められます。これらを通して、観測基盤としてのデータベースの共有化を図ります。

  • 部会長:鶴岡 弘(東京大学地震研究所)
  • 副部会長:大見 士朗(京都大学防災研究所)