八つの計画推進部会

火山事象系統樹に基づく火山噴火予測研究

火山噴火は、直接マグマが地表に噴出されるマグマ噴火と、地下浅部にある地下水がマグマにより熱せられ大量の水蒸気として地表から噴出する水蒸気噴火に分けられます。計画では、様々な火山活動の中で、共通する事象と差異のある事象を見つけ、差異を生み出す原因に焦点を当てて研究を進めています。その結果を噴火推移の枝分かれ(事象分岐)を示す事象系統樹にまとめ、噴火予測の高度化を目指しています。

水蒸気噴火は、前兆現象が極めて小さく、予測が難しいと言われていました。長い活動の休止後にはマグマ噴火に先立って水蒸気噴火が起こることが多いため、観光地になっている火山では、不意を衝かれ噴火規模は小さくても被害が甚大になることがあります。御嶽山や口永良部が水蒸気噴火した際に、貴重な観測データが取得でき、噴火直前に明瞭な前兆が見られることが明らかになりました。このような観測データから、水蒸気噴火発生機構を解明するのが課題です。また、マグマ噴火への移行も大きな研究テーマです。

マグマ噴火では、噴火様式の多様性を決める要因の一つはマグマの噴出率であると言われています。この噴出率の違いを生み出す原因が分かっていません。例えば、噴火が継続している桜島火山では、2015年8月に活発な群発地震活動が発生し、短時間に大量のマグマが山頂直下にまで上昇しましたが、噴火に至りませんでした。この時のマグマ上昇率は、通常の噴火時の200〜2000倍でした。何故、このようなことが起こるのかを、桜島火山での通常の噴火時と比較するとともに、他の火山での同様な現象と比較し、噴火発生機構や噴火様式の多様性を生み出す機構を解明する研究を進めています。

  • 部会長:大倉 敬宏(京都大学大学院理学研究科)
  • 副部会長:野上 健治(東京工業大学火山流体研究センター)

地震・火山災害災害の軽減に貢献する災害誘因・素因研究

地震・火山災害部会は、災害科学の確立に資するため「災害」現象の解明に焦点が置かれた部会で、本研究計画で初めて設置された部会です。防災・減災に対する社会の要請を意識しながら、理学、工学、人文・社会科学の研究者が連携することによって、地震・火山噴火の災害事例の実証、地震・火山噴火の災害発生機構の解明、地震・火山噴火の災害軽減のための情報の高度化、研究者、技術者、防災業務・防災対応に携わる人材の育成などを目指した研究を行っています。

災害は、自然現象である災害誘因と、自然現象に襲われた地域の特徴という災害素因との二つの因子の関係によって、被害や影響が大きくなったり特徴が変わったりします。たとえ地震や火山噴火が起こっても、災害素因としての地域の防災力が強ければ被害・影響は小さくなるのです。

これまでの研究計画では、自然現象としての災害誘因の研究に中心が置かれていました。しかし今回の計画は「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画」として「災害科学」を強調しています。つまり、災害誘因の研究に加えて、地域の強さ・弱さといった災害素因の研究も推進しなければならないのです。

現時点の研究成果をふりかえると、災害誘因は、自然現象・被害・影響の発生機構の解明や予知・予測といった現象の理解に研究の重きが置かれています。災害素因は、構造物・ライフライン・情報システムなどのハード面や、社会組織体制や人間行動などのソフト面など、防災・減災を目的とした土木工学・建築学・情報工学・農学などの理工学、心理学・社会学・社会福祉学・歴史学・法学・経済学・地理学などの人文・社会科学の研究者によって研究が行われています。

  • 部会長:木村 玲欧(兵庫県立大学環境人間学部)
  • 副部会長:三宅 弘恵(東京大学大学院情報学環)