拠点間連携共同研究 災害科学を実現するための地震・火山研究者と災害・防災研究者との懸け橋を目指す

二つの学術コミュニティーの融合

新研究計画「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画(2014年〜2018年度)」では、これまでの地震学や火山学を中核とした研究体制から、工学、人文・社会科学などの連携によって「災害科学」を実現するための、視野を一層広げた研究体制が求められています。そのため計画における「地震・火山噴火の災害誘因予測のための研究」を推進することを目的として、2014年4月に、東京大学地震研究所と京都大学防災研究所が「拠点間連携に関する協定書」を取り交わして「拠点間連携共同研究委員会」を立ち上げ、共同で研究を行っていくこととなりました。つまり、従来からの研究計画を中核となって進めてきた東京大学地震研究所と、自然災害研究協議会などの災害・防災研究の拠点である京都大学防災研究所が協力することによって、従来からの「地震火山科学研究コミュニティー」と、減災社会を実現しようと実践的研究を行っている「防災研究コミュニティー」をつないで、総合的な「災害科学」の確立を目指していこうというものです。

  • 京都大学防災研究所教授 川瀬 博京都大学防災研究所教授
    大志万 直人(おおしまん なおと)
  • 京都大学防災研究所教授 大志万 直人京都大学防災研究所教授
    川瀬 博(かわせ ひろし)

拠点間連携共同研究の二つの研究スタイル

拠点間連携共同研究は、課題募集型共同研究と参加者募集型共同研究の二つの研究スタイルで進めています。

課題募集型共同研究は、地震火山災害軽減研究のうち、特に地震・火山災害の軽減への貢献を主目的とした研究を、個人またはグループで提案して行うもので、地震・火山研究と防災研究の連携により、研究の推進が期待される課題を公募します。毎年、10件程度の研究課題を採択します。

参加者募集型研究の九つの研究テーマ

参加者募集型共同研究では、南海トラフで発生が懸念される巨大地震を対象とし、地震を起因とする災害に寄与する一連の事象に関して、防災・減災に資する研究を実施したいと考えています。そこで、南海トラフ沿いの地震発生から南関東〜九州沿岸での災害発生後までの事象を、「災害情報の外部発信」「災害のリスク評価と意思決定」「構造物の被害予測モデル」「津波の被害予測の不確実性」「地盤構造と震動の関係の複雑さ」「強震動予想の問題点」「地下構造・波動伝播の複雑さ」「南海トラフ地震の地震像」「コンピューター・サイエンスが拓く地震リスク評価の将来」という九つの研究テーマそれぞれで、研究者を募集します。そして地震・火山研究者と災害・防災研究者とが一堂に会し、議論するワークショップを設けて議論をしながら研究を進めていきます。

共同研究は5年間の期間を設けられていますが、延べ約70の研究を通してリスク評価の精度を高めることで、次の5年に進めていきたいと考えています。繰り返しになりますが、災害リスクを減じることが、拠点間連携共同研究の最大の目標なのです。