課題番号:1412
東京大学地震研究所
非火山性地震の発生メカニズムの解明-震源域深部の地殻内流体との相互作用
非火山性群発地震活動が最も活発な和歌山地域において,詳細な地殻構造のイメージング(微小地震稠密連続観測・比抵抗構造探査に基づく)と地殻変動解析を通して,(1)群発地震発生域の地殻内流体の精細な分布・存在形態とその起源,(2)群発地震発生域の力学モデル,(3)応力場の変化と群発地震活動との関係,を捉えることを目指す.最終的に,各々の解析結果を統合することで,地殻内流体との相互作用を考慮した非火山性群発地震発生の定量的モデルの構築を目指す.
平成21年度においては、和歌山地域の非火山性群発地震活動域を南部から横断する測線で,広帯域MT観測を実施する.また、合成開口レーダー(SAR)データを用いた干渉解析を開始する.
平成22年度においては、非火山性群発地震活動域を横断する測線で,稠密自然地震観測を実施する. また、前年度に得られたMT観測データの処理・解析を始める.SARデータを用いた干渉解析を継続する.
平成23年度においては,前年度に得られた稠密自然地震データの処理・解析を開始する.また,MT観測データの解析とSARデータを用いた干渉解析を継続する.
平成24年度においては,非火山性群発地震活動域の地殻内の地震波速度構造・反射面の空間分布・詳細な震源分布・メカニズム解分布・比抵抗構造・地殻変動の力学モデルの推定に関する解析を進める.
平成25年度においては,各々のテーマに関する解析を遂行し,全ての成果を統合することで,非火山性群発地震発生の定量的モデルの構築を目指す.
非火山性群発地震活動域の有田川流域を中心に,7月14日~8月13日にかけて広帯域MT観測を実施した(図1).有田川流域では広帯域MT観測装置7式を用いて計9カ所で,地磁気変化3成分と水平電場2成分を測定した.サンプリング周波数32 Hzで連続データを取得し,ノイズレベルの低い2:00~3:00の時間帯のみサンプリング周波数を1024 Hzに上げた.取得したデータを解析し,各観測点の探査曲線を推定した.人工ノイズや低調な太陽活動が要因となり,約1 Hzより低周波側の探査曲線の推定誤差はやや劣るが,高周波側ではシューマン共振が明瞭に捉えられたことに端的に表れるようにデータの質は概ね良い.探査曲線と予察的な2次元インヴァージョン解析に基づくと,群発地震活動域は周辺に比べて比抵抗が減少する傾向を示す.今後は,低周波側の高精度な応答を得るために,ロバスト推定におけるパラメータチューニングの精密化や補充観測を行うと共に,観測域の西側に位置する海水の影響を見積もり,地下深部までの確度の高い比抵抗構造を推定する.また,対象領域の合成開口レーダー(SAR)のデータ収集をおこなった.
平成22年度は,非火山性群発地震活動域を横断する測線で,約60点から成る稠密自然地震観測を実施する.約1 km間隔で1-Hz速度型地震計を直線状に展開し,4カ月間にわたりオフライン型レコーダーを用いて連続波形記録を収録する.前年度に取得されたMT観測データのノイズ処理解析やインヴァージョン解析をおこない,比抵抗構造断面を推定する.また,SARデータを用いた干渉解析を継続する.
東京大学地震研究所:加藤 愛太郎・岩崎 貴哉・平田 直・金澤 敏彦・飯高 隆・酒井 慎一・上嶋 誠・小河 勉・青木 陽介・中川 茂樹
有
神戸大学:山口 覚