課題番号:1414
東京大学地震研究所
大規模活断層システムにおける長期地殻歪みの蓄積過程の解明
本課題では、これまで個別的な理解にとどまっていた活断層をより広い島弧単元でのシステムと捉え、その長期的な歪み蓄積過程の解明から地震発生様式の理解に新しい視点を与えることを目的としている。対象地域は、東北地方南部と金沢平野東縁断層帯である。東北日本南部については、現在、東北日本の日本海側で実施されている「歪集中帯の重点的調査観測・研究」と相補的に、奥羽山脈から太平洋側の活断層帯について検討し、島弧スケールでの長期歪みの実態を定量的に明らかにする。金沢平野東縁断層帯を代表とする北陸地域の逆断層帯は、日本海東縁の逆断層帯の南方延長にあたり,大規模な変形構造を有するものの、地下形状が不明なまま残されている。本計画では、これらの断層群に対して地震研究所の反射法地震探査システムを用いた浅層反射法地震探査を行うとともに、地形・地質情報を併せて、長期的な歪み速度を求める。
平成21年度は,会津盆地・郡山盆地などの東北中南部周辺地域の活断層帯において,探査の具体的計画を立案するための地質・地形調査・資料収集を行う。
平成22年度は,平成21年度の調査に基づいた反射法地震探査(1測線)を実施する。
平成23年度は,金沢平野東縁断層帯などの北陸地域の活断層帯において,探査の具体的計画を立案するための地質・地形調査・資料収集を行う。
平成24年度は,平成23年度の調査に基づいた反射法地震探査(1測線)を実施する。
平成25年度は、探査結果に基づき、大規模活断層システムの震源断層モデルの構築・長期地殻歪みの蓄積過程の解明にむけた成果のとりまとめを行う。
平成21年度は,会津盆地・郡山盆地などの東北中南部周辺地域の活断層帯において,探査の具体的計画を立案するための地質・地形調査・資料収集を行った.その結果,東北日本背弧域のうち前弧側に位置する高速変形帯である会津盆地西縁断層帯においては,断層の上下すべり速度は年間約1mmと比較的よく求まっているのに対し,その断層構造がこれまでの調査ではよく分かっていないこと,また断層上盤側で内部変形が生じている可能性がある事が明らかになった.
平成22年度は,平成21年度の調査で明らかになった問題点を踏まえ,東北地方南部・会津盆地西縁断層帯を対象として,地震研究所の反射法地震探査システムを用いた浅層反射法地震探査(測線長5km程度を予定)を行い,断層を含む東北日本背弧域の長期ひずみ速度を推定するために,反射法地震探査を実施して断層の形状を明らかにする.
また,地形・地質情報を併せて,会津盆地西縁断層帯の長期的な歪み速度を求める。
東京大学地震研究所 地震火山噴火予知研究推進センター 佐藤比呂志
有
東北大学大学院理学研究科 今泉俊文 石山達也