課題番号:1431
東京大学地震研究所
次世代の機動的海底地殻変動観測に向けた観測技術の高度化
地震予知研究において実際の地震発生の場・現象を捉えるためには、海域での地震観測研究は欠かせないが、現象を把握できる時間軸はおよそ数100秒まででしかない。現在計画されている高機能な海底ケーブル観測網では測地学的センサーを含み得るが、その観測領域は限られている。今後、測地学的時間軸まで時間的観測空白域を網羅し、空間的にもより広い領域で新たな知見を得るためには、機動的な海底地殻変動観測技術の新たな開発が必須である。これまで、海底における圧力観測としては、広帯域海底地震計に海底差圧計を組み込み、試験観測を行ってきた。これらより、本課題では、以下の2つについて、技術開発を行う。
(a)海底絶対圧センサーによる機動的な海底地震・圧力同時観測の技術開発。
(b)海底での傾斜観測を機動的観測として実現するための先端的技術開発。
平成21年度においては、上記(a)については、機器設計、(b)については、仕様検討を行う。(a)については、地震・圧力同時観測を行うために、既存の広帯域海底地震計に圧力センサーを併設するために設計、機器開発を行う。(b)については、海底における傾斜観測の可能性を含めて、センサーの選定などの検討を進める。
平成22年度においては、(a)の機器試作を開始し、(b)の機器設計を進める。
平成23年度においては、(a)の試験観測を開始し、(b)の機器試作を開始する。
平成24年度においては、(a)の試験観測を継続し問題点を解決する。(b)の試験観測を開始する。
平成25年度においては、(b)の試験観測を継続し問題点を解決する。開発に関するとりまとめを行う。
本年度は、(a)海底絶対圧センサーによる機動的な海底地震・圧力同時観測の技術開発についての機器設計と開発、(b)海底での傾斜観測を機動的観測として実現するための先端的技術開発についてセンサーの選定などの仕様検討、を計画していた。
前者に関しては、既存の広帯域海底地震計(BBOBS)のレコーダーが備える高精度基準周波数源を利用する方式で試験機を作成し、2009年12月に3台を紀伊半島沖に設置し観測中である(図1)。後者については、レーザー光源の小型傾斜計を地震研究所内で共同開発しつつあり、オフラインの機動観測に適合する改良を検討中である。
(a)については、絶対圧センサーによる本格的観測に適するレコーダーの仕様設計・試作機の開発を進め、また試験観測のデータを解析しより高度化を進める。(b)については、BBOBSで使用している広帯域地震センサーの出力信号から傾斜の情報を取り出すことを試験するとともに、他のセンサーについても仕様検討を引き続き行う。
篠原雅尚・金沢敏彦・塩原 肇
無