課題番号:1433

平成21年度年次報告

(1)実施機関名

東京大学地震研究所

(2)研究課題(または観測項目)名

次世代インライン式海底ケーブル地震計の開発・高度化

(3)最も関連の深い建議の項目

    • 3.新たな観測技術の開発
      • (1)海底における観測技術の開発と高度化
        • ウ.海底実時間観測システム

(4)その他関連する建議の項目

  • 2.地震・火山現象解明のための観測研究の推進
    • (1)日本列島及び周辺域の長期・広域の地震・火山現象
      • イ.上部マントルとマグマの発生場
    • (2)地震・火山噴火に至る準備過程
    • (2-1)地震準備過程
      • ア.アスペリティの実体
      • イ.非地震性滑りの時空間変化とアスペリティの相互作用

(5)本課題の5か年の到達目標

地震・噴火予知研究を遂行する上において、海域においても、陸域観測網と同等のデータを取得する必要がある。その中でも、海底における地震、地殻変動および津波の実時間観測ができるシステムの開発は、必要不可欠である。地震発生域の地殻活動をリアルタイムで知ることができるばかりではなく、地殻活動予測シミュレーションにおいて、データ同化を行う際に重要である。そのためにも、地殻変動帯域から地震帯域までの広帯域で、高ダイナミックレンジであり、かつ、できるだけ空間的に高密度で、障害に強い海底実時間観測システムの構築が必要である。そのために、海底ケーブルを用いて地震・地殻上下変動・津波をリアルタイムで観測する技術を構築する。これまでの海底ケーブルシステムと異なる点は、できる限り多点観測とし、また、システムの海底への設置および回収が比較的容易にできるようにし、機動的な観測を行えるシステムにすることである。さらには、多項目観測ができるシステムをめざす。これらの特長を満たすシステムを開発し、プレート境界型地震・歪集中帯の研究のみならず、大地震の余震観測にも応用する。また,火山島近海での観測も視野に入れる。

(6)本課題の5か年計画の概要

平成21年度においては、文部科学省委託研究事業「次世代インライン型システムの検討 -海底ケーブル・インライン式地震計の開発」、文部科学省委託研究事業「ひずみ集中帯の重点的調査観測・研究 海域における地震観測」と連携し、ネットワーク技術を導入した次世代ケーブル式海底観測システムの製作および評価試験を行う。さらに、これらの結果より、より大規模なシステムに拡張するための検討・システム設計を行う。
平成22年度においては、平成21年度に製作・評価を行ったシステムを日本海に設置する。引き続き、より大規模なシステムに拡張するための検討・システム設計を行う。
平成23年度においては、平成22年度に設置したシステムによる観測を継続するともに、多項目観測のための高度化設計を行う。
平成24年度においては、本年度で、平成22年度に設置したシステムによる観測を完了するともに、多項目観測のための高度化システムの個別要素の試作を行う。
平成25年度においては、多項目観測のための高度化システムの個別要素の評価・改良を行う。

(7)平成21年度成果の概要

平成21年度は、文部科学省委託研究事業「次世代インライン型システムの検討 -海底ケーブル・インライン式地震計の開発」、文部科学省委託研究事業「ひずみ集中帯の重点的調査観測・研究 海域における地震観測」と連携し製作したネットワーク技術を導入した次世代ケーブル式海底観測システムの評価試験を行った。このシステムの特徴は、光海底ケーブルに接続される観測ノードが小型であること(図1)と、インターネット技術の導入による冗長性を備えたことである。また、最新の電子技術を導入したことにより、地震計センサーである加速度計3成分、24ビットAD変換器、CPUおよび2つのイーサネットスイッチを、コンパクトにまとめることができた(図2)。実際に製作したシステムは、4つの観測ノードを持ち、ケーブルの長さが25kmである。観測点間隔は約5kmとなる。このシステムは、平成21年4月から連続稼働試験を行っており、平成22年2月現在、正常に連続動作している(図3)。一方、津波の観測を行うために、高精度水圧計を観測ノードに搭載するための実装方法に関する検討を行った。高精度水圧計のデータを取り込むためのインターフェイスは、現在のシステムに組み込まれている。

(8)平成21年度の成果に関連の深いもので、平成21年度に公表された主な成果物(論文・報告書等)

  • 金沢敏彦、新たなインライン式海底ケーブルシステムによる面的・多点の地震波観測、海洋調査技術学会第21回研究成果発表会講演要旨集、16-17、2009
  • Kanazawa, T., M. Shinohara, S. Sakai, O. Sano, H. Utada, H. Shiobara, Y. Morita, T. Yamada, and K. Yamazaki, Development of compact ocean bottom cabled seismometers system for spatially dense observation on sea floor and first installation plan, OCEANS 2008 - IEEE Bremen, 2009
  • Kanazawa, T., and M. Shinohara, A new, compact ocean bottom cabled seismometer system -Development of compact cabled seismometers for seafloor observation and a description of first installation plan, Sea Technology, 37-40, July, 2009.

(9)平成22年度実施計画の概要

平成22年度においては、平成21年度に製作・評価を行ったシステムを日本海に設置する。引き続き、高精度水圧計を観測ノードに実装するための開発を行う。さらに、より大規模なシステムに拡張するための検討・システム設計を行う。

(10)実施機関の参加者氏名または部署等名

篠原雅尚・金沢敏彦・塩原 肇

他機関との共同研究の有無

(11)問い合わせ先

  • 部署名等
    東京大学地震研究所 地震予知研究推進センター
  • 電話
    03-5841-5712
  • e-mail
    yotik@eri.u-tokyo.ac.jp
  • URL



開発したケーブル式海底地震計システムの観測ノードのエレクトロニクス。3個の直交する高精度加速度計を搭載し、光ファイバーを使って、イーサネットを構築する。電源には、従来の通信用海底ケーブル中継器の技術を用いた。


新規に開発した観測ノード(下)と従来の観測ノード(上)。最新エレクトロニクス技術の利用により、大幅な小型化に成功した。観測ノードの小型化により、製作費を下げることができただけではなく、海底への設置・敷設が容易になった。


本年度に製作した4台の観測点ノード。