課題番号:1437

平成21年度年次報告

(1)実施機関名

東京大学地震研究所

(2)研究課題(または観測項目)名

精密弾性波計測による微小応力変化測定手法の開発

(3)最も関連の深い建議の項目

    • 3.新たな観測技術の開発
      • (3)観測技術の継続的高度化
        • ア.地下状態モニタリング技術

(4)その他関連する建議の項目

(5)本課題の5か年の到達目標

地殻変動観測はGPSやSAR等,人工衛星利用技術が主流となっている.しかし地殻変動現象を明らかにするためには,変位や歪だけでなく,応力状態およびその変化も知る必要がある.地殻応力の絶対量は,改良された水圧破砕法(高剛性水圧破砕法)やボアホールジャッキ式乾式破砕法等により,2km以浅については計測可能な手法が開発されたが,これらの分解能は高々0.1MPa,通常はMPaのオーダーであり,伸縮計等による歪計測とは数桁も分解能が劣っている.本研究は,原子時計等,精密な計時装置を導入し,岩盤そのものを計測装置の一部として取り込むことにより,応力変化にともなう弾性波伝播特性変化を検出する手法の開発であり,測定地点近傍のhPaオーダーの応力変化がモニター可能となる.平成21年度は,既設観測点において,精度の向上をはかると同時に,新たに複数観測点に比較観測系を導入する

(6)本課題の5か年計画の概要

平成21年度は,既設観測点において,精度の向上を目指す.また,レーザー伸縮計,超伝導重力計やボアホール水圧計測等,多様な観測系が集まっている神岡鉱山,および石英管伸縮計や水圧計測系が整備されている京都大学防災研究所の観測坑に本研究で開発された手法を導入し,比較観測を開始する.
平成22年度は,前年度に新たに設置された比較観測点の計測系の精度向上をはかる.
平成23年度は,これまでに設置された比較観測点の計測系の精度向上をはかる.
平成24年度は,これまでの開発結果をふまえて,精密応力測定手法の妥当性を検証する.

(7)平成21年度成果の概要

平成21年度は岩手県釜石鉱山や名古屋大学瑞浪観測点の既設の観測系に加えて,当初の計画どおり神岡鉱山に計測システムを導入し,比較観測を開始した.また京都大学防災研究所の屯鶴峯観測壕内に導波棒を設置し,今年度中に比較観測を開始する予定である.図は神岡鉱山に新たに設置した計測系でえられた結果である.弾性波到達時間および初動の半値幅が図示されたおり,それぞれVpおよびQの経時変化と考えてよい.減少し続けている大きなトレンドは,岩盤に波を導入するためのジュラルミン棒を固定したモルタルの強度発現によるものであり,間欠的なステップは遠地地震によるものと思われる.

(8)平成21年度の成果に関連の深いもので、平成21年度に公表された主な成果物(論文・報告書等)

  • 佐野 修,地震予知のための新たな観測窓 -地殻応力の絶対量計測と微小変化測定-,資源と素材秋季大会,特別講演A11-14, 4p, 2009年9月10日,札幌市

(9)平成22年度実施計画の概要

当初目標に掲げた成果は達成したので、この研究課題は完了した。

(10)実施機関の参加者氏名または部署等名

佐野 修,新谷昌人(東京大学地震研究所)

他機関との共同研究の有無

加納靖之(京都大学防災研究所)

(11)問い合わせ先

  • 部署名等
  • 電話
  • e-mail
  • URL


神岡鉱山に新たに設置した測定系でえられた結果.