課題番号:1439
東京大学地震研究所
小型絶対重力計の開発
マグマなど火山流体の移動を地表の重力変化によって検知するため、野外でも使用可能な省電力・堅牢・高精度な小型絶対重力計を開発する。
平成21年度においては、試作絶対重力計装置と市販の絶対重力計を並行観測することによって、試作装置の精度の評価をおこなう。また、野外での試験観測を実施し、実用性や消費電力についての問題点を洗い出す。
平成22年度においては、前年度の問題点を改良し、精度、実用性などを再評価する。
平成23年度においては、再評価の結果を受けて、火山体でも使用可能な小型絶対重力計を製作する。
平成24年度においては、小型絶対重力計を用いて野外での試験観測を実施する。並行して火山体への設置準備に着手する。
平成25年度においては、小型絶対重力計を活火山体上に設置し、一定期間観測を継続する。
本研究ではマグマなど火山流体の移動を観測するために、精度とともに可搬性にも重点を置いた小型絶対重力計を開発する。今年度は試作した高さ110cm程度の絶対重力計を動作させ、精度の評価および野外で使用する際の改良点の洗い出しを行った。
試作した小型絶対重力計を図1に示す。上部の真空容器内に鏡が貼り付けられたおもり(落体)およびそれを自由落下させるための落下装置が収納されている。下部の窓から波長安定化レーザー光を導入し、落体の自由落下中の動きをレーザー干渉計により高精度計測することにより重力加速度を測定する。地面振動加速度の影響をあとで補正するための長周期加速度計は下部の真空容器に収納されている。
図2は静穏な観測所(国立天文台江刺観測所、岩手県)で測定された約2日間のデータである。干渉計から得られた落体の加速度を長周期加速度計で検知された地面振動(茶)により補正した結果、青のように理論地球潮汐(赤)で示された波形とほぼ一致する値が得られた。両者の残差から見積もった結果、2日間(601回)の測定の重力値の精度は0.8μgalであり、本装置よりもやや大型の市販絶対重力計と遜色のない性能が示された。
野外で使用する際には、落下装置のさらなる小型化と下部の干渉計部分の小型化が必要である。また、消費電力や光源の携帯性も必要である。今後、これらの点を改良していく。
平成22年度は今年度検討された野外で使用する際の問題点(落下装置のさらなる小型化、下部の干渉計部分の小型化、消費電力低減、光源の携帯性、など)を改良、再設計して試作機に反映させる。そのうえで、市販絶対重力計との並行観測による精度の再評価、野外試験観測による可搬性の評価、などを実施する。
東京大学地震研究所 新谷昌人、高森昭光、堀輝人
有
国立天文台水沢VLBI観測所 田村良明