課題番号:1440
東京大学地震研究所
光技術を利用した大深度ボアホール用地震地殻変動観測装置の開発
レーザー技術を利用した大深度ボアホール内における広帯域地震計測・傾斜計測法の開発を行う。
平成21年度においては、大深度ボアホールの高温環境下で使用可能な部品の選定や基礎測定を実施する。具体的には高温・耐振動対応のセンサ部・光ファイバーケーブル・光学素子の仕様(材質、目標精度等)の決定や個別部品の特性の測定をおこなう。
平成22年度においては、前年度に選定した部品を組み合わせ、観測機器として動作可能な状態に組み上げる。
平成23年度においては、組み上げた装置の精度や高温・耐振動特性などを評価する。
平成24年度においては、前年度の結果を受けて、問題点を改良する。
平成25年度においては、高温試験、ボアホール観測を実施し、大深度ボアホールで観測可能であることを実証する。
本研究の目的は、大深度ボアホール内における高温環境でも使用可能な広帯域地震計測・傾斜計測装置をレーザー技術を用いて開発することである。今年度は、レーザー干渉計をセンサーに用いた振り子式広帯域地震計の性能評価、およびその構成主要部品であるレーザー干渉計ユニットの高温下での性能試験を実施した。
図1は鋸山観測所(地震研究所、千葉県富津市)においてレーザー干渉型広帯域地震計を真空容器に収納した様子を示す。地球磁場による擾乱および空気の対流による誤差をさけるために、パーマロイによる磁気シールドを施したうえで容器内を真空にした。広帯域地震計の帯域は1mHz~50Hzである。この地震計と同じ基台に設置してあるSTS1型地震計との並行観測を行い、両者のスペクトルから雑音レベルを見積もった。図2にその結果を示す。レーザー地震計(Laser)とSTS地震計(STS1)は4mHz以上の帯域ではほぼ一致したスペクトルを示している。海に近いため脈動が大きくLow Noise Model(LNM)よりも0.5~1桁程度大きいレベルであるが、レーザー地震計固有の電気雑音(Electric noise)やレーザー干渉計部分のノイズ(Interferometer noise)はこれよりも十分小さいレベルであり、4mHz以上の帯域ではレーザー地震計は正しく地動を記録しているといえる。4mHz以下の帯域ではSTSよりも大きい値を示しているが、このレベルは時間変動が認められ電気雑音やレーザーノイズよりもかなり大きいことから、磁場などの外来ノイズを感受しているものと推測される。今後ノイズ源を特定していく。
レーザー干渉計ユニットの高温下での性能試験として、ユニットを恒温真空槽内に収納し、干渉状態を保ったまま干渉効率の温度依存性や加熱による障害の発生の有無を調べた。0度~50度の範囲内では干渉効率の著しい低下は認められず、障害の発生もなかった。今後温度範囲を広げて調査する。
平成22年度は、レーザー地震計の低周波の感受性の原因を特定する。また、光学部品の温度試験の温度範囲を広げ、大深度ボアホール内の高温環境下で使用可能な光学部品を選定し、レーザー地震計に組み込む。
東京大学地震研究所 新谷昌人、高森昭光、堀輝人
無