課題番号:1602

平成21年度年次報告

(1)実施機関名

東京工業大学

(2)研究課題(または観測項目)名

水蒸気爆発発生場における火山性流体の化学組成と比抵抗構造のモニタリング

(3)最も関連の深い建議の項目

    • 2.地震・火山現象解明のための観測研究の推進
      • (2)地震・火山噴火に至る準備過程
      • (2-2)火山噴火準備過程
        • ア.マグマ上昇・蓄積過程

(4)その他関連する建議の項目

(5)本課題の5か年の到達目標

本計画の目標は火口湖の湖水及び噴気ガスの組成・放出量を繰り返し観測し,電磁気学的観測と併せて水蒸気爆発場の流体・ガスのダイナミクスを明らかにすることにある.

(6)本課題の5か年計画の概要

平成21年度 湯釜湖水と噴気ガスの組成・放出量の観測手法の検討と電磁気の繰り返し観測システムの構築準備
平成22年度 湯釜湖水と噴気ガスの組成・放出量の観測,湯釜近傍における電磁気の繰り返し観測システムの構築
平成23年度 湯釜湖水と噴気ガスの組成・放出量の観測,湯釜近傍における電磁気の繰り返し観測システムの運用
平成24年度 湯釜湖水と噴気ガスの組成・放出量の観測,湯釜近傍における電磁気の繰り返し観測システムの運用
平成25年度 湯釜湖水と噴気ガスの組成・放出量の観測,湯釜近傍における電磁気の繰り返し観測システムの運用

(7)平成21年度成果の概要

 草津白根山山頂北側斜面では熱活動が定常的に継続しており、これまでにも繰り返し観測が行われている。本年度の放熱量観測の結果、最も活動が静穏だった約10年前に比べて放熱量は数倍に達していることが明らかになった。更なる熱異常の定量的評価と観測システムの構築のための予察的観測として同地域で20cm深の温度観測を実施した。温度異常領域は帯状に分布し、比抵抗構造解析から明らかにされている低比抵抗体との分布に対応関係があることが明らかになった。
 2008年7月に湯釜火口内に現れた噴気地帯において、噴気の繰り返し採取と地温の連続観測を実施した。噴気温度は92〜3℃で安定的であり、観測点の標高での水の沸点とほぼ等しい。地温も2009年5月に観測点の標高での水の沸点に達し、現在もこれを維持している。化学組成に関しても大きな変化は認められない。湯釜湖水の温度は1年を通じて気温よりも高い状態が続いた。山頂直下にあると推定されている熱水系から火山ガスによる熱の供給が増加傾向にあることを示唆する結果である。

(8)平成21年度の成果に関連の深いもので、平成21年度に公表された主な成果物(論文・報告書等)

    (9)平成22年度実施計画の概要

     草津白根山山頂領域において熱活動を面的・連続的にとらえるための観測システムを構築する。
    噴気ガスの組成と放出量の計測システムの構築を目指した予察的観測を実施する。
    湯釜湖水の化学組成を繰り返し観測し、水温・水位・気温などの観測に基づいて熱収支の定量的評価を目指す。

    (10)実施機関の参加者氏名または部署等名

    東京工業大学火山流体研究センター 野上健治 小川康雄 大場武

    他機関との共同研究の有無

    京都大学防災研究所 神田 径、産業技術総合研究所 森 健彦

    (11)問い合わせ先