課題番号:1802
京都大学防災研究所
地震発生頻度のリアルタイム予測
本課題では主として次に挙げるモデルを検証する.
・グーテンベルグ・リヒター則
・ETAS(Epidemic-type Aftershock Sequence, Ogata, 1988)
・現在の微小地震との関係
・過去の大地震の位置との関係
・活断層との関係
これらのモデルを用い,ある特定の地域の特定の期間に対する地震活動の事前予測を行なう.第一段階として,日本の内陸と海域をいくつかの大きな地域に分割し,1年から5年の期間の予測を行なう.
最初の4つのモデルは時間依存であり,1日ないしはそれより短時間に更新されるリアルタイムな情報更新システムに適応できる.例えば,米国カリフォルニア州では,グーテンベルグ・リヒター則に基づき1日間の地震発生を予測するシステムが運用されている(http://pasadena.wr.usgs.gov/step/).この他,歪みレートや歴史地震,活断層の情報を用いた静的なモデルの検証結果を利用し,その手法を改善する方法を検討する.
地震活動を正確に特徴づけるため,考慮しなければならないいくつかの課題がある.例えば,小イベントについての空間的な検出可能範囲の整合性,長期間にわたる最小イベントの整合性,深さの決定精度,海域での震源決定精度,検出能力の整合性である.これらの要素を地震データ(気象庁一元化カタログ)で検証する.
この課題の重要な部分は,実際の地震データを用いた定量的な事前予測の検証である.我々は,すべての結果を再現し点検できるように,用いたアルゴリズムを明確に記述する.現在のデータを用いて継続的にモデルを改良する予定であるが,これらのモデルを統一的に評価できることを保証する.また,事前予測の結果と過去のデータによる後予測の結果とをはっきりと区別する.改良したモデルに対応する物理モデルを逆問題的に推定し,地震発生のメカニズムに帰着させる.
平成21年度は,特にグーテンベルグ・リヒター則およびETASを用いて,日本の内陸と海域をいくつかの大きな地域に分割し,1年から5年の期間の地震活動の事前予測を行なう.地震活動の記録を整理し,検証・開発すべきモデルを特定する.特にグーテンベルグ・リヒター則およびETASを用いて,1年から5年の期間の地震活動の事前予測を行なう.複合的なモデルを理解する手助けになるよう,視覚に訴える情報表示システムを構築する.
平成22~25年度は,時間依存のモデルのリアルタイム応用手法を開発し,地震活動の事前予測の検証をする.同時にモデルの改良を進め,改良モデルに基づき地震発生メカニズムを推定し,発生予測モデルに物理的意味を与える.すべての記録が全国規模であり,その膨大な情報量をモデルの中で取り扱うために,大型計算機を利用する.
我々はある特定の期間、地域における地震の発生数を予知するモデルを開発した。対象地域は日本全国にわたっている。このモデルは地震の発生数を統計的に予知し、自己回帰過程によって、特定の期間のGutenberg-Richter のb値を決定する。
モデルはまた、マグニチュードの大きい地震についての時間的要素の調整も含まれている。前に大きな地震が起きてから、時間が経つにつれて、また大きな地震が起きる可能性は増大すると思われるからである。この予知モデルは1995 年から2008 年の地震活動に基づいて作られた。我々は今、この結果を2009年2月から2010 年3月の実際の地震密度図と比べているところである。このモデルは従来のものとは二つの点で違っている。密度推定を取り入れたこと、時間変化の要素を加えたことである。モデルはEarthquake Forecasting Testing Experiment for Japan に提出されている。
Fig.1 2009 年2月から2010 年3月までの間に発生すると予知されたM5以上の地震の数
日本の地震予知のためにさらに統計的モデルを開発する計画である。たとえば丹波など、ある特定の地域には特に注意を払って、発生した地震の実態が統計的パラメータにどう関係するかを理解したい。また、declustering の手法を使って、余震の影響についても評価を行う。
James Mori,大見士朗,加納靖之(京都大学防災研究所)
宮澤理稔(東京大学地震研究所)
無