課題番号:2903
公募研究
3次元比抵抗構造解析による東北日本前弧側ひずみ集中帯の地殻内流体の不均質分布の解明
(本課題は平成21年度公募研究である)
(平成21年度公募研究計画)
これまでわれわれの研究グルーブの成果として、多くの内陸地震発生地域において電磁気探査から活断層の探部延長に低比抵抗異常体が検出され、それが流体に富み、微小地震の発生、地殻の変形、内陸巨大地震の発生に重要な役割を果たすことが示されてきた(たとえばOgawa et al., 2001, GRL; Mitsuhata et al., 2001 GRL; Ogawa & Honkura, 2004, EPS; Uyeshima et al., 2005, EPS; Yoshimura et al., 2008; Wannamaker et al., 2009, Nature投稿中)。しかしながら、これまでの研究では2次元比抵抗構造解析を基本としており、断層帯の深部における流体分布の3次元的な形状は明らかにされてこなかった。本研究では、詳細な観測点配置により内陸地震地域の深部流体部ぷを3次元的に解明することを目的とする。電磁気探査は地震波トモグラフィーに比べて地殻内の流体の不均質分布に関しては非常に分解能が高いため、流体の地殻内の分布形状を精密に求めることができる。このことは内陸地震発生場の研究にとって重要な基礎的情報を
与える。
まず、平成21年度には、これまで2次元解析がなされてはいるが面的に既存の観測点が展開されている長町利府断層地域において、3次元解析を実行し、断層深部の比抵抗不均質構造と 断層深部で発生したM5.0の震源位置との関連を詳細に解明する。
また、このデータセットの北側に隣接する宮城県北部および岩手県南部においては、既存の2次元的な観測測線データがある。本研究では、それら補完する観測点を離散的に面的に展開し 3次元構造解析を実施する。
これによって、長町利府断層、1962・2003年宮城県北部地震、2008年岩手宮城内陸地震の地域震源域を含む宮城県中部から岩手県南部に至る東北日本前弧のひずみ集中帯における3次元的な地殻内流体の分布を解明することができる。
東北日本前弧側ひずみ集中帯の地殻内の流体の不均質分布を明らかにするために、長町利府断層周辺で取得された広帯域MTデータを3次元インバージョンコードによって解析した。これまで2次元解析によって、脊梁の下部地殻およびより前弧側の下部地殻に低比抵抗層が分布することが知られていたが、3次元構造インバージョン解析によって、その構造が詳細に検討された。南北走向を持つ脊梁の低比抵抗異常が深度20km以深で顕著であるが、前弧側の低比抵抗異常は深度10kmで断層セグメント中央部で南西-北東方向に長さ20km程度に広がり、1998年のM5.0の地震がその低比抵抗異常の縁辺部で発生していることが分かった。さらにこのモデルを南西方向に延長し、すべく、広帯域MT観測を実施している。長町利府断層の北東延長についてもデータのコンパイルを進めた。
長町利府断層セグメントの南西延長および北東延長で、広帯域MTデータのコンパイルおよびデータの取得を進め、宮城県における前弧側のひずみ集中帯の地殻内流体の分布を明らかにする。
東京工業大学 火山流体研究センター 小川康雄
有
東京工業大学理工学研究科 本蔵義守