課題番号:2909
公募研究
透過弾性波を用いた岩石の破壊過程のイメージング
(本課題は平成21年度公募研究である)
(平成21年度公募研究計画)
内陸地震は地殻内部における岩盤の破壊と摩擦すべりの中間的な現象である.一方のエンドメンバーである摩擦すべり現象については、摩擦構成則の構築、透過弾性渡による強度変化のモニタリングなど、研究が進められ多くの知見が積み重ねられてきている。他方のエンドメンバーである破壊については、現象の複雑さゆえ、破壊およびその準備過程における変形、クラックの形成・成長など明らかにされていないことが多い。地震波散乱の理論や数値計算において、単一のクラックが存在する場や遍在的なランダム不均質場に関する理解が進められてきている。しかし、自然断層では様々なサイズのクラックや局在化した不均資の存在が予測されるため、観測によるクラックと透過弾性波の関係についてはまだよくわかっていない。したがって、この知見を活かすためには、破壊に関連してどのようなスケールのクラックがどの程度局在化しながら卓越するかを実際に調べることが必要である。そこで本研究では、室内岩石破壊実験中に集録される透
過弾性波の減衰の周波数依存性を求め、散乱帯中で生成・成長するクラック不均質と結びつけ、現象の定量的理解を深めることを目的とする。発展的には、クラックの直接観察も視野に入れる。本研究は、地震破壊の素過程に着目するものであるが、その成果は準備・先行過程等の散乱波を用いた研究に対する基礎的な知見を提供するものである。
内陸地震の発生層浅部に相当する封圧80~100MPa程度で、花崗岩試料の三軸圧縮試験を実施した。この際、Kawakata et al. (1997)に準じて、周方向変位制御により破壊を安定的に成長させるとともに、高速弾性波集録システム(Kawakata et al., 2009)によって透過弾性波を14ビット、100MS/sで集録した。本研究では、三軸条件下としては初めて広帯域圧電センサを使用した計測に成功し、集録波形を100回重ね合わせることでノイズを低減した結果、200-1000 kHzで十分なS/N比をもつ広帯域の記録を得た。減衰について検討するにあたり、まずその基本パラメタである振幅と速度の変化について検討した。その結果、最終破壊に至る過程で、圧縮軸方向の波線に関する透過P波の速度と初動振幅が低下し続けることが示され、さらに強度後、差応力の低下が急激になるのに同期して、初動振幅が顕著に低下することが明らかにされた(Yoshimitsu et al., 2009)。振幅変化の周波数依存性に関しては、いくつかの帯域で低下が確認できるものの、初動振幅ほどの明瞭な結果は得られなかった。
平成22年度は引き続き、内陸地震の発生層浅部に相当する封圧80~100MPa程度で、花崗岩試料の三軸圧縮試験を実施する。この際、Kawakata et al. (1997)に準じて、周方向変位制御により破壊を安定的に成長させるとともに、高速弾性波集録システム(Kawakata et al., 2009)によって透過弾性波を集録する。弾性波は、圧縮軸方向の波線だけでなく、円筒面内の波線についても計測を試みる。さらに、広帯域の圧電トランスデューサを使用することにより、弾性波の透過特性の時(空)間変化について、その周波数依存性についても検討し、試料内部に形成される断層の不均質スケールについて考察する。また、本課題と関連して実施を検討するマイクロフォーカスX線CTスキャンの結果とも比較し、破壊の成長と弾性波透過特性についてその理解を深める。
立命館大学 総合理工学研究機構 川方裕則
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