課題番号:3005
(独)防災科学技術研究所
地震波速度構造等に基づく地震発生ポテンシャル評価法の研究
高分解能な地震活動評価を行う手法確立をめざして、地震活動予測手法の開発と妥当性評価・検証の枠組み構築が建議(1-2-1ウ)で謳われている。これまでの地震活動予測手法は、過去の地震活動に基づくものが大部分である。地震発生が震源域における物性や状態に大きく影響を受けることを想定するなら、地震波速度やその他の地球物理学観測量と地震発生ポテンシャルとの関係を定量的に表現することは重要である。本研究課題では、地震波速度構造など地殻構造のデータに基づき、日本列島域における大地震発生ポテンシャルを、地震確率モデル等として定量的に評価し、モデルの妥当性を検証する。
計画期間の前半においては、地震波速度構造のデータに基づく大地震発生ポテンシャルの評価手法について、既存の知見から経験則を導く。これまでの研究により、活断層の直下とそれ以外の地域では、地震波速度に有意な差があることが知られている。この様な現象が地震震源において期待され、地震発生ポテンシャル評価に利用可能であると推察する。得られた経験則から、地震発生ポテンシャル評価手法としての有効性を、情報量の概念に基づき評価する。次に、有効な経験測については、日本列島域を対象として、経験則に基づく大地震の確率モデルを構築する。
計画期間後半においては、構築された地震確率モデルを検証するためのソフトウェアを整備し、当該年度に観測された地震を用いて、モデルの妥当性を検証する。また、地殻構造に関わる他のデータ(地温勾配や重力など)について、地震発生ポテンシャル評価への利用可能性を調査する。
地震波速度構造のデータに基づく大地震発生ポテンシャルの評価手法を開発するために,過去に観測された地殻内地震の発生域における地震波速度の特徴を統計的に調べた.震央直下(10,15,20,25 km地点)のP波速度の分布を各深さの全国分布と比較した.全ての深さに関し,分布間に有意な違いは認められない.ただ,各深さ間の速度の相関を調べると,震央直下の分布が全体を用いた分布より強い相関を示した.これらの相関を用いて地震モデルを構築すると,1.35倍の平均確率利得が期待される.
平成21年度の調査結果として得られた経験則に基づき,日本列島域を対象とした地震確率モデルの構築を試みる.同時に,既存の地震確率モデルと比較し,より有効性の高いモデルを構築するための手法を検討する.
防災科学技術研究所 地震研究部 井元政二郎、松原 誠
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