課題番号:4001
(独)海洋研究開発機構
プレート境界型地震発生サイクルの再現性の向上
超巨大地震や連動型地震などで見られる超サイクルを含めた地震発生サイクル中の再来間隔や規模の変化のメカニズムを明らかにして、南海トラフや十勝沖、宮城沖等を対象として発生パターンの再現性の向上を目指す。
海域に面的に展開した超稠密地震探査・地震観測等を陸域の観測データに加えることにより、巨大地震の発生場の構造及び物性とその変動を明らかにし、数値シミュレーションにより巨大地震発生に関する評価を実施する。
具体的には、地震波、電磁気データ等を用いた各種構造探査を実施し、日本ならびに周辺の精緻な地殻構造を明らかにする。それらと、地震観測・地殻変動観測等によって得られた地球物理的データや物質科学的研究結果を用いて、統合化地殻媒質モデルの構築を行う。また、粘弾性媒質を考慮したモデルでの地殻変動計算を可能にして、観測データとの比較とその再現性向上を目指す。地震発生予測シミュレーションにおいては、粒子フィルター等の最新のデータ同化手法をプレート境界型地震に適用するための基礎研究を行い、計画期間中に二次元断層でのデータ同化手法のプロトタイプを構築する。
日向灘において160台のOBSを用いて行った地震波速度構造探査(図1)の結果、南海トラフに沈み込む海洋性地殻から九州パラオ海嶺の厚い地殻にかけての構造の明瞭な変化のイメージが得られた。この構造境界は1968年日向灘地震の震源域の西南端と一致しており、南海トラフ沿いの巨大地震の西南端も規定していると考えられる。
また、プレート境界の3次元形状を考慮した南海トラフ沿いのプレート境界地震発生サイクルシミュレーションで、階層的アスペリティモデルを導入することで、規模に依存した再来間隔の大きな変化が生じることを示した。そして同様のモデルを釜石沖地震に適用することで、M5クラスの固有地震のアスペリティ内部でのM3クラスの地震の発生をモデル化した(図2)。
さらに、データ同化においては、2自由度モデルの地震サイクルシミュレーションで計算した余効すべりの模擬データと様々な摩擦パラメタの計算結果との残差を調べることで、地震後1日毎のデータで摩擦パラメタのa-bが推定できるもののLの推定は難しく、地震を含む1日以内の高解像度データがあってはじめてLが推定できることを示した。
構造探査については、四国沖での探査結果の解析を行うとともに、紀伊水道沖周辺での探査を行う(図1)。また、地殻変動データと整合する南海トラフ沿いの地震発生サイクルモデルの構築を行う。データ同化については、釜石沖をはじめとして実データへの適用を開始する。
地震津波・防災研究プロジェクト
有
東京大学、東北大学、名古屋大学、京都大学、高知大学、防災科学技術研究所