課題番号:4005
(独)海洋研究開発機構
総合海底観測ネットワークシステムの技術開発
既存の海底観測システムの継続運用と海底ケーブルシステム高電圧化に関する開発
ケーブルで結んだ多数のセンサーから構成されるリアルタイム総合海底観測システムに関する研究開発及びそれらの運用を行う。これにより、プレート境界における地震、津波、地殻変動を海底において、継続的に観測することを可能とする。
引き続き、相模湾初島沖観測ステーションをはじめ、海底地震総合観測システム(1号機:高知県室戸岬沖・2号機:北海道釧路・十勝沖)、豊橋沖ケーブル先端に接続した海底観測ステーションの運用を継続し、長期連続観測を実施する。平成18年度に開始した「地震・津波観測監視システム(DONET)構築」については、平成21年度中の一部運用開始、平成22年度の本格運用開始を目指している。
また、新たな地震・津波観測監視システム構築に向けた研究開発を実施する。現在構築中の地震・津波観測監視システムは中電圧(3000V)であるため、ケーブル長は300km、観測点数は40観測点が限度である。より拡張性があり、特に広域に展開するにはシステムの高電圧化が必要である。高電圧化によって、観測網展開後に観測網を拡張することが可能となれば、計画当初に設定する海域の外に必要に応じて新たな観測拠点を構築し、さらにそれを中心に観測点を展開できる。そこでここでは、システムの高電圧化に関する下記の技術開発を行う。
・多段分岐可能な基幹ケーブル分岐機能の開発
・給電システムの高電圧(最大10kW)化にともなう海中部構成機器の改良
・任意に拡張する海中観測点と陸上局との間に専用の通信回線を確立する技術
相模湾初島沖観測ステーション、海底地震観測総合システム、豊橋沖ケーブル先端に接続した海底観測ステーションの運用を継続した。給電異常等のトラブルが何度か発生したが、迅速に対処し、復旧した。伊豆半島東方沖群発地震(12月17から19日)や、土佐湾の地震(12月16日)をはじめとする地震のデータを取得し、伊豆半島東方沖群発地震では、地震に伴って発生する泥流を観測することにも成功した。また、ケーブルシステムの保守技術については、ケーブル絶縁不良を水中で修理する技術の研究を行った。地震・津波観測監視システム(DONET)の開発では、観測機器の作成・試験を実施するとともに、三重県尾鷲沖に基幹ケーブルを敷設し、平成21年度末の一部運用開始を目指して作業を続けている(平成22年2月現在)。大規模な海中ケーブルシステムを実現するために不可欠な技術である高電圧化については、実現可能性の調査、問題点の洗い出しを実施した。
既存の海底観測システムを継続運用するとともに、平成21年度に開発した水中修理技術の実海域試験を、海底地震総合観測システム(1号機:室戸沖)を用いて行う。DONETについては、平成21年度に敷設した全長約250kmの基幹ケーブルに、5本の給電岐路ケーブルを接続することにより枝分かれさせ、給電岐路ケーブルの終端にノードを接続する。ノードからはROVを用いて約10km展張し、展張ケーブルの先に観測点を構築する。ノードひとつあたりに接続される観測ユニットは4つで、各観測ユニットは、強震計、広帯域地震計、水晶水圧計、微差圧計、精密温度計、ハイドロフォンからなる。平成22年度末には、予定しているすべての観測点の構築を完了し、本格運用を開始する。観測データは専用回線でJAMSTECに伝送されるとともに、EARTHLANを通じて配信される。また、南海地震の震源域の紀伊半島和歌山県沖において、新たな地震・津波観測監視システム(DONET2)の構築に着手する。平成22年度は、システムの概念設計、観測機器の基本設計、ケーブルルートの机上調査、陸上局舎候補地の選定等を実施する。ケーブルシステムの高電圧化に関する研究については、平成21年度の調査で明らかとなった課題克服に向けた研究開発を行う。
地震津波・防災研究プロジェクト
有
気象庁地震火山部