課題番号:5007
(独)産業技術総合研究所
極微小地震と深部低周波微動を用いたプレート境界の応力場推定
東海・東南海・南海地域のプレート境界近傍で発生している極微小地震と深部低周波微動の発震機構解から、プレート境界における応力場の時空間分布を推定する。さらに数値シミュレーションと組み合わせて、プレート境界の固着状態や応力集中域の推定を試みる。深部低周波微動の発震機構解については、東南海・南海地震域に設置した鉛直ボアホール地震計アレイを用いた手法開発に取り組む。
平成21-22年度においては、紀伊半島周辺をターゲットにし、 プレート境界近傍で発生している極微小地震の発震機構解を大量に決定する。また、深部低周波微動の発震機構解決定法の開発にも取り組む。
平成23年度においては、紀伊半島周辺で推定された応力場の時空間分布と数値シミュレーションを組み合わせて、プレート境界の固着状態や応力集中域の推定を試みる。
平成24-25年度においては、他の地域において同様の解析を実施し、東海・東南海・南海の全域にわたるプレート境界の固着状態や応力集中域を明らかにする。
平成21年度は、S波のPolarization解析により深部低周波微動のメカニズム解を決定できるかについて検討を行った。
一般に、深部低周波微動のようにS/Nが良くないデータの場合、単点の観測データではPolarization解析の結果が不安定であるという問題点がある(具体的には、解析周波数やウィンドウ長のわずかな違いで結果が大きく異なってしまうという問題点)。そこで、産総研が整備した鉛直地震計アレイデータを利用し、鉛直アレイの各深度から求められた共分散行列をスタックして固有値問題を解くことを試みた。その結果、S/Nが良くない場合でも、S波の振動方向を安定して推定できることがわかった。また、推定された振動方向を見ると、ランダムに変化するのではなく、系統的に時間変化する場合が多いことがわかった。エンベロープ相関法から決定された微動の震源位置、理論的に計算した振動方向との比較から、観測された振動方向の時間変化は、低角逆断層のメカニズム解で震源位置が移動することで概ね説明可能であることがわかった。
個々の微動のメカニズム解を決定するためには、単点の観測データも利用する必要がある。そこで、微動の振動方向が系統的に時間変化するという特徴を使い、隣り合うタイムウィンドウの共分散行列をスタックすることを試みた。まだ予備解析の段階ではあるが、単点の観測点でもPolarization解析の結果が安定することを確認した。
以上より、複数観測点のPolarization解析により、個々の微動のメカニズム解を決定できる目処が立った。
S波のPolarization解析による深部低周波微動のメカニズム解決定法を確立し、紀伊半島の微動活動に適用する。
紀伊半島で発生している微小地震の精密震源決定とメカニズム解決定を実施する。
活断層・地震研究センター地震発生機構研究チーム、地震地下水研究チーム
無