課題番号:5010
(独)産業技術総合研究所
断層深部における変形・すべり過程の解明
内陸断層深部およびプレート境界深部で見られる非地震性すべりから地震性滑りへの遷移メカニズムをそれぞれ明らかにし、震源付近における応力集中過程と大地震への発展を解明する。さらに、地震破壊の準備過程で起こる現象を統一的に説明できるモデルの提案を目指す。
平成21-22年度においては、かつての断層深部が地表に露出している断層について,震源相当深度において破壊核となった可能性のある場所と,それ以外の場所での応力履歴の違いを検討する。また、ガス圧式高温高圧岩石変形試験機を用い,蛇紋岩の,脆性-塑性変形遷移条件での変形強度と速度依存性を計測する。さらに、様々な内部構造(クラック密度・間隙率等)を有する岩石試料を用いて岩石変形または断層滑りに伴う微小破壊と弾性波減衰等の物性値を稠密に計測する。
平成23-24年度においては、引き続きかつての断層深部が地表に露出している断層についての調査を継続するとともに、明らかになった断層深部の変形をガス圧式高温高圧変形試験機で再現することにより,断層深部すべりの力学的性質を明らかにする。また、岩石中の孔隙構造から変形時の応力を推定する手法を開発する。さらに、岩石変形または断層滑りに伴う物性値の計測データを詳細に解析し、自然地震との対比を行い、岩石破壊モデルと摩擦モデル(あるいはそのパラメータ)の高度化を行う。
平成25年度においては、前年度までの結果を基にゆっくり地震から大地震への発展をシミュレーションするための断層深部すべりモデルを構築する。さらに、地震破壊の準備過程で起こる現象を統一的に説明できるモデルを提案する。
かつての断層深部が地表に露出している三重県中央構造線沿いの応力履歴を検討し、震源相当深度において破壊核となった可能性のある場所とそれ以外の場所ともに、北北東-南南西の一軸圧縮左横ずれ応力場において脆性-塑性遷移を経験したのち、温度 150-200℃において南北の一軸圧縮場、上下方向の一軸圧縮場と応力場が大きく変化した時期があったことが明らかになった。
脆性-塑性遷移領域では蛇紋岩の摩擦-流動則の変遷が系統的な変形メカニズムの変化によって制御されていることが判明し定式化した。封圧の擾乱が微小破壊に及ぼす影響を実験的に調べ、発生する微小破壊は封圧が減少した時に活発になることが判った。
中央構造線ボーリングコア解析に基づき、当該岩石の変形履歴、脆性-塑性遷移経験時の断層挙動を支配する変形プロセスを明らかにする。脆性-塑性遷移領域における大地震の発生機構を明らかにする為、比較的低温でも脆性-塑性遷移領域が現れる蛇紋岩を用いて、その高温高圧下での変形挙動を観測し遷移領域での摩擦構成則を確立する。断層周辺の応力状態の微小変動が微小地震活動に与える影響を実験的に測定・評価する。
活断層・地震研究センター 地震素過程研究チーム
無