課題番号:6014

平成21年度年次報告

(1)実施機関名

国土地理院

(2)研究課題(または観測項目)名

プレート境界面上の滑りと固着の時空間変化の把握

(3)最も関連の深い建議の項目

    • 2.地震・火山現象解明のための観測研究の推進
      • (2)地震・火山噴火に至る準備過程
      • (2-1)地震準備過程
        • イ.非地震性滑りの時空間変化とアスペリティの相互作用

(4)その他関連する建議の項目

  • 1.地震・火山現象予測のための観測研究の推進
    • (1)地震・火山現象のモニタリングシステムの高度化
      • ア.日本列島域
      • イ.地震発生・火山噴火の可能性の高い地域
      • ウ.東海・東南海・南海地域
  • 2.地震・火山現象解明のための観測研究の推進
    • (1)日本列島及び周辺域の長期・広域の地震・火山現象
      • ア.列島及び周辺域のプレート運動,広域応力場
    • (2)地震・火山噴火に至る準備過程
    • (2-1)地震準備過程
      • ア.アスペリティの実体

(5)本課題の5か年の到達目標

測地学的手法を用いて、プレート境界面上の滑り分布の推定精度及び分解能の向上を図り、プレート境界面における固着及びゆっくり滑りの時空間的推移を解明する。また、日本列島全域の地殻活動をより高度に理解することで、中長期的な地震発生予測の精度向上を目指す。

(6)本課題の5か年計画の概要

 GPS連続観測データを用いて、日本列島周辺のプレート境界の滑り欠損分布を推定し、地域ごとの地殻変動及び滑り欠損の特徴を明らかにした上で,その空間分布および時間変化を詳細に把握する。
 また、GPS連続観測データ及び過去の測地観測データを用いて、房総半島沖、豊後水道、東海地方等、繰り返し発生するゆっくり滑りや大地震発生後に引き続いて発生する余効すべり等の解析を行い、プレート境界面上で発生する様々な滑り現象に伴う地殻変動の特徴やその履歴を明らかにする。そして、これらの現象が、プレート境界大地震の発生サイクルに与える影響を定量的に明らかにする。

(7)平成21年度成果の概要

 1998年1月~2000年1月までのGPS連続観測データを用いて日本列島周辺のプレート境界面上のすべり欠損分布の推定を小領域9箇所(300~600 kmの領域)および中領域3箇所(500~1200 kmの領域)の2つの空間スケールにおいて行った。中領域においては最新(2007年1月~2009年1月)のデータを用いた推定も行い、10年前(1998年1月~2000年1月)の推定結果と比較した。
 推定されたすべり欠損の特徴は、北海道東部根室沖で最大8 cm/yr、東北地方宮城県沖で最大8 cm/yr、関東地方房総半島南端付近のフィリピン海プレート上で最大3 cm/yr、四国室戸岬沖合で最大6 cm/yrで、青森県沖合ではすべり欠損が小さい。10年前と最新との推定結果を比較すると、房総半島を含む西南日本のフィリピン海プレートではほとんど変化がないが、東北日本の太平洋プレートでは大きく異なる結果が得られた。10年前に比べて、北海道襟裳岬沖、宮城県~福島県沖ではすべり欠損が小さくなっている。襟裳岬沖は、2003年十勝沖地震後まだすべり欠損がほとんど回復していない。宮城県~福島県沖合は、2008年5月茨城県沖の地震と2008年7月の福島県沖の地震、それぞれの地震時の変動は取り除いているが、余効変動を含んでいるため小さく推定されていると考えられる。一方青森県沖合では、1994年三陸はるか沖地震後すべり欠損が徐々に回復し、大きく推定されていると考えられる。

(8)平成21年度の成果に関連の深いもので、平成21年度に公表された主な成果物(論文・報告書等)

  • 国土地理院,2010,GPS連続観測に基づく日本列島周辺のすべり欠損分布,地震予知連絡会会報,83,550-582.
  • 水藤尚,2009,GEONETに基づく日本列島周辺のすべり欠損分布の推定,日本地震学会講演予稿集2009年度秋季大会,B22-04.

(9)平成22年度実施計画の概要

プレートの剛体運動成分を考慮したすべり欠損の推定を実施し、日本列島全体として見た場合のすべり欠損の時空間分布を把握する。また、2003年十勝沖地震の余効変動のモニタリングを実施し、大地震発生後にプレート境界面上の固着の回復過程の時空間変化を把握する。さらにGEONETでのプレート境界面上で発生する非定常すべり(スロースリップ、前兆すべり等)の検知能力の把握を試みる。

(10)実施機関の参加者氏名または部署等名

地理地殻活動研究センター 地殻変動研究室

他機関との共同研究の有無

(11)問い合わせ先

  • 部署名等
    地理地殻活動研究センター 研究管理課
  • 電話
    029-864-5954
  • e-mail
    eiss@gsi.go.jp
  • URL


図1.1998年1月~2000年1月の地殻変動速度から推定した中領域でのすべり欠損分布


図2.2007年1月~2009年1月の地殻変動速度から推定した中領域でのすべり欠損分布
関東地方に関しては、2005年1月~2007年1月の地殻変動速度から推定した結果。星印は各領域(東北日本、関東地方、西南日本)での固定点。