課題番号:6015
国土地理院
ひずみ集中帯の地殻変動特性
ひずみ集中帯の特定の地域において、GPS、SAR干渉解析、水準測量等の測地学的手法による地殻変動観測を実施し、詳細地殻変動分布を解明するとともに、地形地質学的に得られている地殻変動分布との対比を通じた地殻変動特性の解明を行う。また、観測された地殻変動を説明可能な地下の変形過程モデルを考察する。
平成21年度においては、平成14年度から行われている糸魚川―静岡構造線断層帯周辺のGPS観測及びSAR干渉解析を継続して実施する。8年間のGPSキャンペーン観測をまとめることによって、既に得られている地殻変動速度の高精度化と信頼性の向上を行う。
平成22~25年度においては、新潟―神戸ひずみ集中帯の新潟県及びその周辺において、GPS繰り返し観測、SAR干渉解析、精密水準測量による稠密地殻変動観測を実施し、非地震時の定常的に進行する地殻変動の空間パターンを明らかにする。
平成24~25年度においては、新潟県地方の観測結果に基づき、ディスロケーションモデルや地殻の弾性常数の不均質を考慮して有限要素法を用いた地殻変動の再現シミュレーションを行う。
計画通り、糸魚川―静岡構造線断層帯周辺のGPS観測及びSAR干渉解析を実施し、断層帯周辺における高精度な地殻変動速度を明らかにした。
GPS観測より得られた地殻変動は、糸静線の中部地域から北部地域にかけて現在進行しつつある地殻変動パターンを明瞭に示し、糸静線の断層沿いに変形様式および地震発生様式が顕著に変化している可能性が示唆される。また、断層すべりによる変形のモデル化を実施した結果、糸静線中部では、ほぼ鉛直な断層の深部で左横ずれが起きているという解釈ができる一方、北部では、東傾斜の逆断層が地表付近まで非地震性のすべりを起こしている可能性が示唆された。
SAR干渉解析では、干渉SARによる微小な地殻変動の検出技術の向上を目指し、特性の異なるC-bandおよびL-band波長帯のSARデータを用いて、活断層周辺域の微小地殻変動観測手法の有効性について検証した。C-bandに関しては、スタッキング処理を行いS/N比を向上させることによって、GPS観測の結果と調和的な地殻変動分布を得た。これにより、断層帯近傍の微小な地殻変動を面的に検出できる可能性が示された。一方、L-bandデータに関しては、山間部における優れた干渉性を確認できたものの、データ数が少ないため有意な変動検出にはいたらなかった。
平成22年度については、新潟ー神戸ひずみ集中帯に位置する新潟県中部で佐渡から越後山地に至る測線上でGPS繰り返し観測点の新設と第1回目の観測、精密水準測量による活褶曲地域の上下変動検出を行う。
地理地殻活動研究センター 地殻変動研究室
有
名古屋大学環境学研究科地震火山観測研究センター(鷺谷 威)