課題番号:7005

平成21年度年次報告

(1)実施機関名

気象庁

(2)研究課題(または観測項目)名

震源過程解析の実施と高度化

(3)最も関連の深い建議の項目

    • 1.地震・火山現象予測のための観測研究の推進
      • (1)地震・火山現象のモニタリングシステムの高度化
        • ア.日本列島域

(4)その他関連する建議の項目

(5)本課題の5か年の到達目標

震源過程解析の解析例を増やすと共に、震源過程解析の高精度化を目指す。

(6)本課題の5か年計画の概要

 震源過程解析の解析例を行うことにより改良点の洗い出しを行い、震源過程解析プログラム及び解析手法の改良を行う。また、過去地震の震源過程解析の解析及び調査から、客観的な計算パラメータの設定手法及び解析結果の評価手法の調査を行う。
 経験的グリーン関数を用いた解析手法を取り入れることなどにより、解析可能な地震の下限を下げる検討を行う。

(7)平成21年度成果の概要

・遠地実体波を用いた震源過程解析
 現在,M7程度以上の地震を対象に解析を行っているが,平成21年度は日本国内では基準に達する地震は発生しなかった.そのため,解析例を増やすために,海外で発生したM7程度以上の以下の地震について解析を行った.また,解析した結果の妥当性を検討するために,震源過程解析から計算される地殻変動とSAR干渉解析結果との比較を行った.遠地実体波を用いて解析した震源過程解析結果はその解の解像度は低いものの,SAR干渉解析結果を大まかに説明することができた.解析した結果は地震調査委員会などに提出するとともに,気象庁の報道発表資料として公表した.
  ・2009/05/28 ホンジュラスの地震
  ・2009/07/15 ニュージーランドの地震
  ・2009/09/30 サモアの地震 Mw8.0
  ・2009/09/30 スマトラ南部の地震 Mw7.5
  ・2009/10/08 バヌアツの地震 Mw7.5
  ・2009/10/24 バンダ海の地震 Mw6.9
  ・2010/01/12 ハイチの地震 Mw7.1

・近地強震波形を用いた震源過程解析
 8月11日に発生した駿河湾の地震(M6.5)について,気象庁の震度計,防災科学技術研究所のK-NET,KiK-netのデータを用いて,震源過程解析を行った.一枚の矩形断層で解析したすべり慮分布では余震分布との対応が悪かったが,DD法で解析した余震分布から二枚の矩形断層を想定し,解析を行うことによって,余震分布と対応が良いすべり量分布を得ることができた(図1).これらの結果は地震防災対策強化地域判定会の定例会などに提出するとともに,学会でも発表を行った.

(8)平成21年度の成果に関連の深いもので、平成21年度に公表された主な成果物(論文・報告書等)

  • 上野寛・迫田浩司・吉田康宏,2009,近地強震波形を用いた駿河湾の地震(平成21年8月11日;Mjma6.5)の震源過程解析,日本地震学会2009年秋季大会,P1-19.

(9)平成22年度実施計画の概要

 引き続き,遠地実体波及び近地強震波形を用いた震源過程解析を行うとともに,客観的な計算パラメータの設定手法及び解析結果の評価手法の調査を行う.
 また,遠地実体波を用いた震源過程解析において、二枚以上の矩形断層を用いて解析が行えるようにプログラムの改修を行う.

(10)実施機関の参加者氏名または部署等名

気象庁地震火山部地震予知情報課 震源過程調査係及び発震機構係

他機関との共同研究の有無

(11)問い合わせ先


近地強震波形を用いた駿河湾の地震(平成21年8月11日;M6.5)の震源過程解析結果
DD法で計算された余震分布を基に二枚の矩形断層を想定し,すべり量分布を求めた結果であり,上図が地表面に投影したすべり量分布,下図が矩形断層面上に投影したすべり量分布を示す.すべり量が大きい領域では余震の発生が少ないことが分かる.