課題番号:7021
気象庁
沖合・沿岸津波観測等による津波の高精度予測に関する研究
津波波源(地震断層運動;津波伝播計算に必要な初期値)に関する知識の蓄積・改善および、津波伝播過程の高精度再現を図る。
沖合津波観測データの津波予測への活用手法を検討するとともに、津波波源の推定手法に関する技術基盤を強化する。
・地震津波の発生メカニズムに関する研究
検潮記録などの解析、比較的大きな津波の場合は沿岸津波痕跡調査、あるいは大地震直後の余震活動や通常の背景的微小地震活動を明らかにするための海底地震観測などの調査に基づき、過去の地震津波の、より現実的な津波波源モデル、すなわち津波発生メカニズム、を明らかにする。また、津波波源に関する知識の蓄積および改善を図り、現行の津波予報システムの改良に資する。
・津波伝播に伴う津波減衰特性の研究
過去観測された多数の津波後続波の検潮記録をデジタル化し、実際に観測された津波の減衰特性を類型化あるいは共通項の抽出を行うとともに、津波の減衰過程を予測するための理論的あるいは経験的な手法を構築し、適切な津波警報の解除に資する。
・沖合津波観測データを用いた津波予測手法の検討
主としてGPS波浪観測点における沖合津波観測データを活用し、観測点近傍の沿岸エリアに到達する津波の到来時刻および振幅を予測するための手法を構築する。また、GPS波浪観測も含め沖合津波観測技術・観測網の発展を踏まえて研究を進める。
・歪計・広帯域地震計データを用いた津波波源域(震源域)の即時推定手法の開発
現行の津波予報システムが用いている地震観測よりも、長周期成分の地震波を観測できる歪計や広帯域地震計の波形データを活用することにより、従来の経験則などに依らずに、断層面の広がり・形状、すなわち津波波源域(震源域)を即時的に推定する手法を開発し、津波予測の精度向上に資する。
※ ここでいう「即時的」とは概ね10分以内を意味しており、例えば緊急地震速報で数秒以内という意味で使われる「即時的」とは異なる。
・2004年12月インド洋大津波の発生メカニズムを調べるためにスマトラ北西沖の海域で精密海底地形調査を実施し、巨大津波の発生に寄与したと考えられる分岐断層である可能性がある海底表層のリニアメントを特定した。
・移動自乗平均振幅、津波コーダ、無次元化津波振幅の三つの新尺度を導入することにより、長時間の時系列水位データから津波の減衰過程を定量的に解析する手法を開発するとともに、津波の減衰過程において、移動自乗平均振幅の3倍以上の半振幅の波が出現することが稀だという性質があることを見出した。また、波源・伝播経路・観測点近傍の各段階の時間関数で表現する、簡略化した津波エネルギーの伝播モデルを設定した。
・海岸の潮位観測施設と全国港湾海洋波浪観測網(NOWPHAS)の沖合波浪観測施設との両方で津波の記録が得られた観測例を収集し、両者での津波第一波振幅と最大振幅について、それぞれ関係式を導いた。
・日本周辺および国外の地震津波の発生メカニズムの調査研究を行うとともに、遠地津波について、検潮所での津波観測波形のデジタル化と減衰特性の抽出を行う。
・海岸付近での津波を高精度かつ効率的に計算可能な津波数値計算手法の検討を行うとともに、GPS波浪計の津波観測精度の評価、東海海底水圧計などのデータ収集を行う。
地震火山研究部
無