大都市圏地殻構造調査研究
神奈川県山北町ボーリング調査の実施について
防災科学技術研究所(以下,防災科研)は,文部科学省が実施している「大都市大震災軽減化特別プロジェクト」の一環として強震動の予測を行うために,東京大学地震研究所や京都大学防災研究所などと連携して「大都市圏地殻構造調査研究」(研究代表者 東京大学地震研究所教授 平田 直)を実施しております.この中のサブテーマ「大規模ボーリング調査」の一環として,平成15年度は神奈川県山北町でボーリング調査を行います.
神奈川県南西部にはフィリピン海プレートと本州側プレートの衝突境界と沈み込み境界が位置し,地下には関東地震(1923年)を起こした震源断層が推定されています.足柄平野東端にはA級の活断層である国府津・松田断層が位置し,そのテクトニクス上の位置づけが重要な課題となっています.
防災科研では,東京大学地震研究所が担当する大深度弾性波探査の「相模湾岸測線」と「関東山地東縁測線」に隣接する神奈川県山北町において,深さ約2,000mのボーリング調査を行います.それによって,以下の事項を明らかにする事を目的としています.
足柄平野下に伏在する可能性の高い断層をコアや検層によって解析し,大深度弾性波
探査の解釈に資する.
国府津・松田断層系全体の平均すべり速度の推定に寄与できるデータを抽出し,地震断
層モデルの構築に貢献する.
地震地盤から地表までのP波・S波速度構造を明らかにする.
調査後のボーリング孔を活用して高感度地震観測点を整備し,南関東地域の地震観測
の一翼を担う(観測は16年度開始を予定).
掘削予定地
神奈川県足柄上郡山北町山北字丸山1834-7 [地図]
掘削と試料採取の概要
ボーリング2,000m級.
コア回収は深度1,000m以上を目標に行う.
カッティングスは原則として5m毎に150gを採取.
測定の仕様
・ ケーシング挿入前に以下の検層を行う:
比抵抗,地層密度,音波,孔径,ガンマ線,ボアホールテレビュアー
・ ケーシング挿入後に以下の探査を行う:
VSP法速度探査
・ コア測定:
熱伝導率測定,微化石分析など
文部科学省では、平成14年度から、「大都市大震災軽減化特別プロジェクト」を実施しています。このプロジェクトは4つの研究開発課題から構成されておりますが、「大都市圏地殻構造調査研究」はその一つです。
地震発生源の特定が難しい関東平野南部などの大都市圏において、阪神・淡路大震災級の被害をもたらす大地震を発生させる仕組みを解明するため、大規模な地殻構造の調査研究を行い、これに基づき、高精度の地震動予測(長期評価、強震動評価)を行うための断層モデル等を構築します。
地震調査研究推進本部の方針を踏まえ、原則として、首都圏と近畿圏を対象とした調査研究を行います。