3.6.4 霧島山

(1) 噴火に関連する微動活動

 主な噴火活動の約1週間前から開始した火山性微動について,周辺の定常観測点の振幅比分布と臨時アレイ観測のデータを用いて,震源位置推定を行った.その結果,前駆てきな水蒸気噴火または浅部の膨張に続いて,帯水層より深いところから地表に向けて,震源が移動する現象が3回見られ,主噴火に向けての熱や流体の移動によるものだと解釈された.同様な領域での震源上昇は,2017年10月の噴火の前にも見られたが,2018年3月に開始した噴火の際には,まだ確認されていない.また,2011年噴火の主噴火発生後の調和型微動について,非線形振動系を示唆する特徴を抽出し,流体の流れが励起する振動であることを提示した.

(2) 地殻変動観測とマグマ蓄積過程

 2011年1月26日に爆発的噴火を行った霧島新燃岳の噴火前後の地殻変動を稠密なGPS観測網で捉え,噴火前の山体膨張時の圧力源,噴火時の減圧源,噴火後の再膨張時の圧力源の位置を,誤差も含めて推定した.この噴火に関与するマグマ溜りは新燃岳北西約8km,深さ約8kmで,2009年12月からほぼ同じ蓄積率でマグマが蓄積され,噴火直前には21×106m3に達した.噴火時には,その蓄積量の約65%の13×106m3のマグマがマグマ溜まりから排出された.噴火後もほぼ同じ蓄積率で再蓄積し,噴火前の90%まで蓄積した時に再蓄積が終わった.更に,2013年6月から2014年8月までわずかな蓄積があった.この1年後の2015年12月頃より霧島山硫黄山の熱活動が活発になった.2017年7月には再度マグマの蓄積が始まり,約18×106m3程度が蓄積した後,2017年10月の小規模な水蒸気噴火を経て,2018年3月に約7年ぶりのマグマ噴火に至った.このように長期にマグマ溜まりへのマグマ蓄積の時間変化を精度よく捉えられたことから,マグマ蓄積と噴火発生の関係の解明につなげて行きたい.

(3) 火口近傍多項目観測による噴火過程の解明

 霧島山新燃岳の火口近傍で観測された広帯域地震計,傾斜計により,2011年噴火活動初期の準プリニー式噴火,マグマ湧出期,ブルカノ式噴火という異なる火山活動に伴う火道浅部に起因する傾斜変動を捉え,これらの火山活動に関連する火道浅部のプロセスに関する知見を得た.ブルカノ式噴火では,噴火に先行する傾斜の時系列の特徴を明らかにする事を通じて,噴火に先行する火道浅部でのプロセスを推定した.最初に発生した3つの準プリニー式噴火では,地震・空振の振幅を他の観測データと比較することにより,1番目と3番目の噴火は浅部での急激な減圧より,2番目の噴火は火道のより深部に起因するトリガー機構によって引き起こされたという知見が得られた.2017年10月に再噴火が発生した際には,火口近傍の広帯域地震記録から抽出された傾斜成分から,噴火に先行して火口下1㎞付近において104m3程度の体積膨張が発生していたことが明らかになった.