カテゴリー別アーカイブ: 部門・センターの研究活動

Fig.6

外核の化学組成の違いによるニュートリノ振動確率の変化.  40億eVのエネルギーを持ったニュートリノが地球の中心を通過したときのニュートリノ振動をシミュレーションした結果.ニュートリノは地球を通り抜けていく間に,ミュー型(赤)から電子型(緑)へ,またミュー型へと変化していく.実線は外核の組成が鉄(Fe)100%の場合,破線は鉄に2%の水素(H)が混ざった場合で,検出器で捉えられるミュー型と電子型の割合は10%程度変わる.

 

Fig.5

画像再構成の結果.青い表面は密度2.4g/cm3 の境界を表す.ある高さ(20.8m)の断面における密度分布を示したもの.

 

Fig.4

ミューオグラフィーと重力の統合逆解析によって得られた昭和新山の3D密度構造.(a) 昭和新山周辺の地形図.色のついた四角い点は重力観測点で,色の違いは重力異常値を表す.Mと記された青い点はECC設置点を示し,青い直線で囲まれた東側の領域はミューオンで観測できる視野を示す.(b)ECCによるミューオン観測によって決定された平均密度値とそれに伴う誤差.(c) 統合逆解析により求められた3次元密度分布.青い直線はミューオンの到来経路を示し,赤い点は重力観測点を示す.

 

Fig.3

(a)Stromboli火口周辺の地形図.白い線が放射状に出ている点が,検出器設置点で,白い線は典型的なミューオンの飛跡を示す.白い丸で囲まれた点は,ミューオン余剰が観測された北東クレーターを表す.(b)山体の密度を2.2g/cm3で一様であると仮定した時のミューオン数期待値と観測値のずれ.横軸・縦軸はそれぞれ方位角・仰角のtangent,等高線は山体の厚み(m),色の違いは,期待値と観測値のずれを表し,赤いほど観測値の余剰を意味する.ビンサイズは縦軸・横軸共に0.020であり,火口付近での空間分解能に換算すると10mである.

 

Fig2

下部マントルの組成の違いによる、電子ニュートリノの生存確率の変化;ここでの生存確率とは、太陽表面から放射された電子ニュートリノが、電子ニュートリノとしてそのまま観測される確率を指す。左は下部マントルがパイロライト(普通に考えられているマントル物質)の場合、中央は下部マントルが仮にH2Oであった場合、右は両者の差。横軸はニュートリノエネルギー、縦軸はニュートリノの進行方向(黒矢印)と、地球への入射点における天頂方向(青破線)のなす角Θの余弦,cosΘ.  cosΘ< -0.4の範囲で、下部マントルを通過するので、この範囲で生存確率に最大で1%程度の影響が現れる。

 

Fig1

雲仙岳平成新山の山頂部付近におけるエアボーン・ミュオグラフィ観測の様子(上)と、得られた密度コントラスト(下)。赤い部分ほど密度が高い。上右の白丸内にヘリコプターが小さく写っている。

 

 

 

 

3.4.8 災害科学系研究部門研究会の開催

本研究部門では年に数回,災害科学系研究部門研究会を開催し,災害科学に関係する所内外の関係者,大学・研究機関のみならず,行政機関・民間企業等の理工学研究者,防災担当者などとの交流を図る機会を設けている.これまでの通算開催回数が120回を数える.2017年度は未開催であったが,2018年度以降も継続して実施を予定している.

3.6.4 霧島山

(1) 噴火に関連する微動活動

 主な噴火活動の約1週間前から開始した火山性微動について,周辺の定常観測点の振幅比分布と臨時アレイ観測のデータを用いて,震源位置推定を行った.その結果,前駆てきな水蒸気噴火または浅部の膨張に続いて,帯水層より深いところから地表に向けて,震源が移動する現象が3回見られ,主噴火に向けての熱や流体の移動によるものだと解釈された.同様な領域での震源上昇は,2017年10月の噴火の前にも見られたが,2018年3月に開始した噴火の際には,まだ確認されていない.また,2011年噴火の主噴火発生後の調和型微動について,非線形振動系を示唆する特徴を抽出し,流体の流れが励起する振動であることを提示した.

(2) 地殻変動観測とマグマ蓄積過程

 2011年1月26日に爆発的噴火を行った霧島新燃岳の噴火前後の地殻変動を稠密なGPS観測網で捉え,噴火前の山体膨張時の圧力源,噴火時の減圧源,噴火後の再膨張時の圧力源の位置を,誤差も含めて推定した.この噴火に関与するマグマ溜りは新燃岳北西約8km,深さ約8kmで,2009年12月からほぼ同じ蓄積率でマグマが蓄積され,噴火直前には21×106m3に達した.噴火時には,その蓄積量の約65%の13×106m3のマグマがマグマ溜まりから排出された.噴火後もほぼ同じ蓄積率で再蓄積し,噴火前の90%まで蓄積した時に再蓄積が終わった.更に,2013年6月から2014年8月までわずかな蓄積があった.この1年後の2015年12月頃より霧島山硫黄山の熱活動が活発になった.2017年7月には再度マグマの蓄積が始まり,約18×106m3程度が蓄積した後,2017年10月の小規模な水蒸気噴火を経て,2018年3月に約7年ぶりのマグマ噴火に至った.このように長期にマグマ溜まりへのマグマ蓄積の時間変化を精度よく捉えられたことから,マグマ蓄積と噴火発生の関係の解明につなげて行きたい.

(3) 火口近傍多項目観測による噴火過程の解明

 霧島山新燃岳の火口近傍で観測された広帯域地震計,傾斜計により,2011年噴火活動初期の準プリニー式噴火,マグマ湧出期,ブルカノ式噴火という異なる火山活動に伴う火道浅部に起因する傾斜変動を捉え,これらの火山活動に関連する火道浅部のプロセスに関する知見を得た.ブルカノ式噴火では,噴火に先行する傾斜の時系列の特徴を明らかにする事を通じて,噴火に先行する火道浅部でのプロセスを推定した.最初に発生した3つの準プリニー式噴火では,地震・空振の振幅を他の観測データと比較することにより,1番目と3番目の噴火は浅部での急激な減圧より,2番目の噴火は火道のより深部に起因するトリガー機構によって引き起こされたという知見が得られた.2017年10月に再噴火が発生した際には,火口近傍の広帯域地震記録から抽出された傾斜成分から,噴火に先行して火口下1㎞付近において104m3程度の体積膨張が発生していたことが明らかになった.

3.6.3 富士山

(1) 地質・岩石学的データに基づく火山発達史

 2001-2003 年度の深部掘削で得られた試料の岩石学的検討を進め,先小御岳火山,小御岳火山,富士火山はそれぞれ独自の化学組成上の特徴をもち,安山岩組成の小御岳から段階的に富士の玄武岩組成の火山へと変化してきたことを明らかにした.一方,古期後半のスコリア層のメルト包有物を主体とする解析から,富士山の浅部には安山岩質の小マグマ溜りが存在(深さ約4-6㎞と推定される)し,深部の主玄武岩質マグマ溜りから上昇したマグマとこの安山岩質マグマとが混合することによって,富士山の噴出物が生じているとするモデルを提案した[図3.6.2].

 さらに,新期のスコリア層の解析も進め,新期では安山岩質マグマ溜り内のマグマがやや分化し,よりSiO2に富む組成となっている可能性を指摘した.宝永の噴火で想定されているデイサイト質小マグマ溜りは,このような浅部マグマ溜り内のマグマがより分化し高いSiO2量となったものと解釈できる.また,最後の山頂噴火である湯船第二スコリアの噴出メカニズムを微斑晶の解析に基づいて行った.

(2) 富士山深部のマグマ供給系

富士山においては,過去に発生した低周波地震の震源分布や岩石学的な考察から地下15-20 km付近にマグマだまりがあると考えられていたが,地震学的に確かな証拠が存在しなかった.我々はレシーバ関数解析を行い,富士山周辺の数10 kmまでの深さの地震波速度の不連続構造を明らかにした.その結果,富士山下40-60kmの深さに南北に沈み込む顕著な速度境界面があり,富士山直下でその境界面は不連続になっていた.また,富士山下で火山性の低周波地震が発生する地下10-20kmの領域の下,およそ25kmの深さに顕著な速度境界面を発見した.さらに,レシーバ関数と富士山周辺の表面波分散曲線を合わせて逆解析することで富士山直下の深さ約50km以浅のS波速度構造を明らかにし,富士山直下の深さ20kmから40kmの深さに大きなマグマ溜まりが存在する可能性を示した[図3.6.3] .

[図3.6.2]

[図3.6.3]