2022年地震研一般公開 技術部展示

地震研技術部クイズ
何問正解できるかな?

2022/10/17(月) 更新
2022/08/03(水) 作成

問題1

この機器は、地震を観測しデータを送信する装置です。
どのような技術を利用してデータを送信しているでしょうか?

①衛星を利用した通信
②携帯電波を利用した通信
③音を利用した通信

①衛星を利用した通信
解説:地震観測点で観測される地震データは、特別な場合を除きそのほとんどが地震研究所へ送信されます。 通常データ送信には電話回線や携帯電波が主に利用されますが、電話線を引くことができず、また携帯電波も届かない離島や山間部で観測する場合は、写真のような装置を用いて衛星通信でデータを送信しています。 また大地震が起きた後は、周囲の携帯電話の基地局が被害を受け、携帯電波を利用した通信ができない場合があります。その場合でも、衛星通信であれば観測したデータを高い信頼度で地震研究所へ送信することができます。
(ただし大量の電気を必要とするので、停電の場合はたくさんのバッテリーを準備しなければならないなど、デメリットももちろんあります。)

衛星通信による地震観測テレメータシステム

問題2

宮城県沖の海底に設置された自己浮上式海底地震計(水中ロボットで撮影)

海底に設置した海底地震計を回収するために、研究船から海底地震計へ浮上命令を送ります。
さて、どのような方法で通信するのでしょうか?

①音による通信
②電波による通信
③光信号による通信

①音による通信
解説:水中は、大気に比べて音が伝わりやすく、研究船で使用している音響通信装置を用いると、最大でおよそ10キロメートル離れた海底地震計と通信ができます。なお、水中での音速はおよそ1500メートル/秒、大気中での音速はおよそ340メートル/秒で、水中の音速の方が大気中のそれよりずっと速いです。一方で、電波や光は、水中ですぐに減衰してしまうので、遠くまで届きません。

問題3

普通の計測機器が使えない場合に、観測装置を手作りすることがあります。
この器械は、何を観測する装置でしょう?

①電磁波
②地震波
③音波

②地震波
解説:これは地震を観測する装置です。2017年に鹿児島県の口永良部島火山で使用しました。
火山活動が活発になると様々な現象が起きます。その発生場所に近付いて観測することは現象の理解にとても役に立つのですが、噴火中の火口に人が近付くのは大変危険です。そこで、無人航空機(ドローン)で運搬・設置・回収できる装置を開発しています。
この装置の地震計は脚の先に取り付けてあり、保護のために黒い防水テープを巻き付けてあります。地震計が感じる地面の揺れは、茶色い箱の中にある記録計に収録され、白い小箱のようなアンテナから携帯電話回線を利用して送信されます。装置を動かす電力は、太陽電池で発電して脚の裏にあるニッケル水素電池に蓄えます。装置の周りに張り巡らされた針金は、回収するときにフックを引っ掛けるためのものです。デコボコな斜面でも安定して、台風でも飛ばされないように、何度も試行錯誤を繰り返してこの形になりました。
地震計のほかにも、爆発した時に空気の圧力を測る空振計や地盤の動きを観測するGPS装置を搭載するバージョンもあります。

問題4


地震研究所の観測点で現在使われている強震計はどれでしょう?

① A
② B
③ C
④ 全部

④ 全部
解説:強震計とは、「地震計」の1種類であり、強い揺れでも振り切れないで測ることを目的としています。地震研究所では、研究のために、強震計を用いた観測をさまざまな場所にて行っています。

A:地表の揺れを測るために、2m四方ほどの小さな鉄筋コンクリート建物を建設し、建物内に強震計を設置しています。

B:地表の揺れを測る観測点ですが、建物の建設が難しいので、強震計のみを簡易地震計台の中に設置しています。データを記録する装置は地震計台から約50m離れた建物の中に設置しています。

C:地中に強震計を設置することもあります。直径10cm程の穴を垂直に堀り、その中に強震計を入れるので、細長い形状をしています。数m~数百mに設置することが多いですが、地下数kmに設置している地中強震計もあります。

※ 地震計について ※

地震計は、地面などの「揺れ」を測る装置ですが、「揺れ」には、分子が振動するレベルの非常に微弱な揺れから、ビルが倒壊するほどの非常に強い揺れまであります。また、早く振動する揺れもあれば、ゆっくり振動する揺れもあります。現在、これら幅広い揺れを、すべて測ることができる地震計は存在しません。そこで目的に応じて、さまざまな種類の地震計が開発されて来ました。小さな揺れの測定を目的とした「高感度地震計」や、ゆっくりした揺れの測定も可能な「広帯域地震計」、強い揺れでも振り切れない「強震計」などです。


問題5

このアンテナは、地殻変動と呼ばれる地面の動きをとらえるために、
静岡県内のとある小学校の屋上に設置したものです。
このアンテナを用いて何を受信しているのでしょうか?

①テレビの電波
②携帯電話の電波
③GPSの電波

③GPSの電波
解説:このアンテナはGPS受信用のアンテナで、地球上での正確な位置情報を観測しています。これにより、地殻変動と呼ばれるプレート運動や断層運動などを捉えることができます。近年では、スロースリップと呼ばれる地震よりもはるかに遅い滑り現象が捉えられることもあります。
皆さんのスマートフォンにもGPS受信機が入っていると思いますが、位置が数メートルくらいずれることもあるのに対し、このアンテナは数センチメートル以下の精度で測ることができます。
この位置精度の違いは受信機の性能の違いが大きいです。従来のスマートフォン用のGPS受信機では1種類の電波を受信していますが、このアンテナは2つの異なる周波数の電波を受信することが可能です。
これにより、電離層と呼ばれる大気の乱れによって生じる誤差を小さくできるようになりました。
最近のスマートフォンにはこの2種類の周波数に対応したものや、日本のみちびき衛星の電波を受信できるものもでてきました。ご自身のスマートフォンのGPSの性能を一度確認してみると面白いかもしれません。

問題6

これは何の観測をしているところでしょう?

①水準測量
②地磁気絶対観測
③ガス観測

②地磁気絶対観測
解説:地球は大きな磁石になっていて、地球が作り出す磁場を地磁気といいます。 地殻変動や火山活動があると、その周りで地磁気が変化することがあります。 その変化を検出するためには、基準点で精度の高い観測値が必要ですが、 地磁気を観測する磁力計は温度の変化などに影響を受けてしまいます。 地磁気絶対観測は、それらの影響を取り除き観測値の校正をするために定期的に行われ、そこで初めて精度の高い値を得ることができます。 現状では自動で行うことが難しく、非常に高い技量を持った観測者が必要となります。
地磁気観測は他に、その場所の磁場の大きさ(全磁力)を測定するプロトン磁力計なども用いられています。

フラックスゲート磁力計


プロトン磁力計


問題7

これはどんな装置でしょう?

①フライス盤
②ターニングセンタ
③ボール盤

②ターニングセンタ
解説:切削加工は工具を回転させて切削する「転削」と、工作物を回転させ切削する「旋削」があります。転削加工をする代表的な機械がフライス盤で、旋削の代表機械が旋盤です。ターニングセンタは1台で転削・旋削の両方を行えることが特徴的な工作機械です。主軸の割出(加工物の回転角度の指定)・工具交換機能を備えており、数値制御(NC)による加工を行います。
技術開発室のターニングセンタはオークマ社製のLB-300MYで10インチのチャックで最大加工径は340mm、工具の移動範囲はX軸280mm・Y軸120mm・Z軸1000mmです。C軸(加工物の回転角度)の割り出し精度は±0.015度で工具はタレット式で12本取付可能です。

工具を取り付けるタレット

問題8

これはどんな装置でしょう?

①リフローオーブン
②リワークステーション
③基板加工機


③基板加工機
解説:ここでの「基板」は電子回路基板をさします。電子回路は複数の電子部品同士を導線(電気の通り道)でつないだものですが、この装置は生基板(絶縁体の板の上に薄い銅箔が貼られたもの)から電気の通り道「以外」の銅箔を削り取ることで回路基板を作ります。CADデータを用意すれば、データどおりの基板を作ることができます。 最近はCADデータを送るとオリジナルの基板を作ってくれるサービスもありますが、研究で用いる回路はたくさんは要らない場合が多いので、1枚からすぐに作れる基板加工機が役立っています。

回路図と基板のCAD画面


加工された基板(電子部品をはんだづけして使います)
ちなみにこの基板は 2018年の一般公開の工作教室 で使用したものです。


問題9

これはどんな実験をする装置でしょう?

①高圧の海水中でも耐圧容器が耐えられるかどうかの実験
②高温の水蒸気を発射させて火山噴火のシミュレーションを行う実験
③高温高圧の環境下で岩石試料を破壊する実験

③高温高圧の環境下で岩石試料を破壊する実験
解説:地震(地殻岩石の破壊)の多くは地下10-20kmの深さで起こっています。このような場所は、圧力が数千気圧にも達し、温度も数百度になっています。岩石がどのような条件で破壊されるのかを詳しく調べるためには、実際の圧力温度環境で破壊実験を行うことが重要です。
この実験装置の真ん中に丸い物体があります。これは圧力容器といって、内部を高温高圧にすることができます。直径が約50cmで、肉厚が15cmあります。つまり、中の空洞は直径20cmほどしかありません。ここに岩石試料(直径2cm、長さ4cmの円柱状)を設置し、空洞を高圧の油で満たします。また、一緒に入れたヒーターで試料を加熱します。この圧力容器の上下左右にピストンが挿入されています。これらを中にゆっくり押し込むことにより、岩石試料にピストンの先を押し当てて破壊します。圧力容器内の圧力は4000気圧まで、温度は500℃まで上げることができます。また、上下ピストンは600トンの力で押し込むことができます。
地震の発生には、地下水が大きく寄与していると考えられています。この実験装置は、圧力容器内に設置した岩石試料に水を注入することができます。水の有無で岩石の破壊強度がどう変わるかといったことも検証できます。


問題10

これはどんな装置でしょう?

①マイクロフィルムスキャナ
②(古い)パソコン
③テレビ

①マイクロフィルムスキャナ
解説:マイクロフィルムとは、新聞や図面などを縮小撮影して保存する記憶媒体です。この装置はマイクロフィルムを拡大表示し、パソコンに取り込むことができます。
地震研究所には古い地震の揺れを記録した記録紙がたくさん保管されています。この記録紙はもろく、扱いが難しいため、より手軽に閲覧できるよう、1975年ごろから少しずつマイクロフィルム化を行いました。35mmロールフィルム1本に縦30cm・横80cmほどの記録紙約600枚分の記録が縮小保存されています。マイクロフィルムに保存されている最も古い地震の記録は1880年代まで遡ります。

35mmロールフィルムと保存用の箱


マイクロフィルムをスキャンしたところ、1975年のスタンプが確認できる


問題11

これは偏光顕微鏡で観察したあるものの写真です。何の写真でしょうか?

①富士山の地下にある岩石
②黒胡麻風味の雷おこし
③ヒトの皮膚細胞

①富士山の地下にある岩石
(玄武岩質マグマに捕獲され地表に出てきた斑れい岩の薄片)
解説:偏光顕微鏡とは偏光板(≒ニコル)という特殊なフィルターを有した顕微鏡です。光は進行方向に対して垂直に振動する性質(横波)を持ちます。その振動方向は自然光ではランダムですが、光を偏光板に通過させると振動を一定方向(偏光)に揃えることができます。
鉱物中を通過する偏光は、鉱物の種類や結晶の向きなどによって、その強度や向きが変化します。また、この変化は入射する光の波長の違いによっても異なります。このため、偏光顕微鏡を使って薄片(岩石などの鉱物試料を厚さ≒0.03mmにしたもの)を観察すると、偏光の影響を受けて鉱物が干渉色とよばれる色調を帯び、様々な鉱物の同定に適した像が得られます。


オープンニコルで観察した薄片
右上の濃灰色部分は玄武岩です。拡大部(問題文の写真)を含む、中~粗粒な結晶で構成される部分は斑れい岩です。


クロスニコルで観察した薄片
斑れい岩の部分には、偏光顕微鏡によって色を付けられた様々な鉱物が観察できます。白色~灰色の結晶は斜長石などの長石類、カラフルな結晶はカンラン石・輝石など、黒色は主に磁鉄鉱です。

火山の噴火活動によって火山灰や火山ガス、溶岩など様々な物が地表に噴出します。これらの噴出物は、地下数km~数10kmに存在するマグマ溜まりからマグマが移動し地表に現れたものです。マグマは地下の岩石が融解して出来た液状の物質ですが、中には様々な種類の鉱物結晶や水・ガスなどの揮発成分が含まれています。これらの「マグマの材料」の組み合わせによって、火山の噴火の仕方には様々なバリエーションがあります。また同じ山で噴火でも、マグマが上昇する際の温度圧力変化や、別のマグマの混合などによって、マグマの組成が変化することもあります。
加えて、マグマが地表に移動する際には、途中にある地下深くの岩石を取り込んでくることもあり、地下深くのマグマの上昇経路についての情報も得ることができます。さらに、今現在噴火している火山の噴出物だけではなく、古い時代の噴出物についても、同じ様に観察・分析することが出来ます。このように、マグマが固まった溶岩や火山灰に含まれる物質を調べることで、火山噴火についての様々な情報を得ることが出来るのです。


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