令和2年度地震研究所職員研修会報告

研修運営委員会

令和2年度地震研究所職員研修会を令和3年2月4日(水)~5日(金)の2日間にわたり開催しましたので,ここに報告いたします.

1.研修会の概要

 本研修会は例年3日間の集合研修で企画しておりましたが,今年度はコロナ禍の中,従来どおりの集合研修が困難であることからオンライン開催といたしました.これに合わせて構成も変更し,従来の「技術発表」・「所外研修」・「特別講演」の3構成から,「技術発表」に相当する「口頭・ポスター発表」,「特別講演」に加えて,新たな試みとして「自己紹介セッション」を導入した2日間の日程で開催しました.

 <1日目> 開会式に引き続き,自己紹介を2セッション,口頭発表(4件)とポスター発表(5件)を行いました.

 <2日目> 初めに自己紹介最後のセッションを,続いて森田裕一教授(東京大学地震研究所)による特別講演を行いました.その後,口頭発表(5件),次に地震火山災害予防賞の表彰式(受賞者:東北大学 中山貴史氏)と受賞記念講演が行われ,最後に地震研究所所長佐竹教授の講評と本研修会副実行委員長の挨拶をもって修了式といたしました.

 本研修会への事前参加申込者のうち,2日間全ての研修に参加をご希望された方は32名,その内訳は所内からが21名,他大学からが11名でした.残念ながら都合により一部のみ参加となられた方もいらっしゃいましたが,特別講演の聴講を含め60名以上の方々にご参加いただきました.

2.アンケート回答概要

 研修会では更なる改善を目指して,毎年参加者にアンケートをお願いしております.今回は29通の回答をいただきました.アンケートにお答えいただいたみなさまに感謝申し上げ,ここに要約してご紹介いたします.

 問1-2では研修会の内容を項目別に5段階で評価していただきました.全ての項目(「口頭発表」・「ポスター発表」・「自己紹介セッション」・「特別講演」・「全体」)で概ね高い評価をいただき,その中でも特に口頭発表と特別講演の評判が良かったようです.今回,初めて導入した自己紹介セッションについては,雰囲気がつかめず戸惑った方もいらっしゃったようですが,「面白い取り組み」,「(すでに知っていた人の)業務など改めて知れて良かった」と好評価をいただきました.これも,積極的に自己開示いただいたみなさまのご協力のおかげと感謝しております.

 問3-9では次回の参加予定と開催時期,開催形式の要望をお伺いしました.大変ありがたいことに,大多数の方々が次回も参加していただけると回答して下さいました.また,開催時期は例年と同じ1月~2月上旬の日程を希望される方がほとんどでした.地震火山に関わる技術系職員にとって,この時期は比較的,野外活動の少ない閑散期にあたり,複数日にわたる本研修会にも参加されやすいのだと思います.

 問10-12では研修のあり方,および希望される所外研修の訪問先や所内研修の内容をお伺いしました.ほとんどの方が所外研修を望むとのお答えで,訪問先として気象庁,防災科学技術研究所を筆頭に鉄道総合技術研究所,地球科学総合研究所,宇宙航空研究開発機構,その他多くの研究所や施設を挙げていただきました.所内研修としては,測地観測,機械工作,地震観測,等のご希望をいただきました.所外研修の希望が多岐にわたり,みなさまの業務の幅や興味の方向性の広さがうかがえる一方,所内研修では業務へのかかわりの深い研修の希望が多く,より広い,より深い知識と技術の習得が望まれていることが分かりました.

 問13では特別講演の講師や内容についてのご希望をお伺いしました.講師は地震研究所の教員が複数名,講演内容は南海トラフ海底地震津波観測網(N-net)や今後の地震・火山観測分野における動向について話を聞きたい,というご要望をいただきました.

 問14では修了証書の配布形式についてお聞きしました.今年度はオンライン開催に合わせてPDFでの証書発行としたところ,ほとんどの方がPDFなどの電子データをご希望でしたが,従来の紙の証書を希望される方もいらっしゃいました.できるだけご要望に沿えるよう,柔軟に対応したいと思います.

 問15では発表された方に,気が付いた点やアブストラクトテンプレートへのご意見を伺いました.昨年度より導入したアブストラクトのテンプレートは今回もご活用いただけたようです.今後も継続していきたいと考えています.

 問16ではその他のご意見等をお伺いしました.多くの方から感謝のお言葉,委員への労わりのお言葉をいただきました.本問ほか,アンケート全体を通して,オンラインならではのメリットを感じたとともに,顔を合わせて話すことの価値を再認識したとの意見が多かったように思います.また,ベル音や発表時間の表示等,細やかなアドバイスもいただきました.これらのご意見をもとに,より充実した研修会を目指していきたいと考えております.

3.研修会を終えて

 本研修会には,所内からの参加のみならず,北海道大学,東北大学,名古屋大学,京都大学,高知大学,そして気象庁よりご参加いただきました.距離の制約がないオンライン開催ということで,今まで移動のご負担をおかけしていた方々には,かえって参加しやすいという良い面もあったのではないかと感じております.

 毎年,新しい技術を取り入れた観測や実験の発表が豊富なこの研修会ですが,今年度も新型コロナ感染症対策を踏まえつつ業務を進めるノウハウ,在宅勤務の紹介など,世情を反映した新たなトピックが発表されました.この研修会は,専門部会や学会とは違い,自由に技術や情報共有,問題提起ができる場ですので,話題の新旧や分野に気負うことなく,積極的に発表していただきたいと思います.

1971年ごろから所内の勉強会として始まった本研修会は,所外・学外の方にも参加いただく「職員研修会」に発展した1992年から数えて,来年で30周年を迎えます.これからも幅広い分野の方々がご参加・ご発表しやすい環境を整え,諸先輩方がつないできた交流の機会を継承していきたいと考えております.

4.謝辞

 本研修会にご参加いただきましたみなさまに,感謝申し上げます.また,職員参加につきまして,ご賛同及び格別のご配慮をいただきました各施設長のみなさま,開催期間中の業務につきましてご配慮いただいた所内教員のみなさま,特別講演の依頼を快くお引き受けいただいた森田裕一教授,事務手続きや受付・修了証の発行等でご協力いただいた所内職員のみなさまに,この場をお借りしてお礼申し上げます.今回ご参加のみなさまにつきましては,次回以降も積極的に参加・発表いただきますよう重ねてお願い申し上げます.地震や火山に関わる全国の技術系職員や省庁・研究所職員が普段の業務活動で得られた知識や経験を共有する場として,本研修会が活用されれば幸いです.

5.参考資料


※ 令和2年度 研修運営委員 ※

前野 深(運営委員長) ・ 馬場 聖至(運営副委員長) ・ 阿部 英二(実行委員長) ・
上原 美貴(実行副委員長) ・ 藤田 親亮 ・ 宮川 幸治 ・ 辻 浩・ 渡邉 篤志 ・ 浦野 幸子