令和6年度地震研究所職員研修会報告

研修運営委員会

 令和6年度地震研究所職員研修会を令和7年1月29日(水)~31日(金)の3日間にわたり開催しましたので,ここに報告いたします.

1.研修会の概要

 本研修会は昨年度に引き続き,オンライン参加と対面参加を組み合わせたハイブリッド形式にて開催しました.昨年度はオンライン参加に軸足を置いたハイブリッド開催でしたが,今年度は対面参加を重視し,コロナ禍以前の研修スタイルに近づけた形で実施しました.

 本研修会は主に「技術発表(口頭発表・ポスター発表)」,「所外研修」,「特別講演」の3部構成となっております.技術発表は1日目と3日目に,所外研修は2日目に,特別講演は3日目に実施しました.

 <1日目> 開会式に続いて,地震火山災害予防賞の授賞式(受賞者:名古屋大学 堀川信一郎氏)と受賞記念講演を行いました.その後,技術発表(口頭発表6件とポスター発表10件)を行い,最後に農学部生協食堂にて懇親会を開催しました.

 <2日目> 所外研修として,海上保安庁海洋情報部(東京都千代田区)と気象庁(東京都港区)を訪問しました.午前中は海上保安庁海洋情報部にて,GNSS-A海底地殻変動観測網や西之島火山噴火の観測に関する講義を受けました.午後は気象庁にて,地震津波業務と火山業務の概要,火山付近の観測点の整備,令和6年度能登半島地震における観測点障害と復旧作業,緊急地震速報の課題と今後の計画,Starlinkおよび閉域網を用いたテレメータ装置からのデータ伝送デモ結果についての講義を受けました.活発な質疑応答が行われたため予定の時間から約1時間超過してしまいましたが,講義の後は3班に分かれて気象現業室,地震火山現業室,記者会見室を見学しました.最後に気象科学館を自由見学して解散しました.

 <3日目> 初めに,技術発表(口頭発表5件)と研修報告(口頭発表1件)を行いました.続いて,小原一成教授(東京大学地震研究所)による特別講演がありました.最後に,地震研究所所長の古村教授による本研修会の講評と,体調不良により欠席した実行委員長の挨拶を実行副委員長が代読し,閉会しました.

 本研修会の事前参加申込者のうち,3日間全ての研修に参加を希望された方は47名で,その内訳は所内25名,学内(地震研以外)1名,他大学が21名でした.一部のみご参加いただいた方や,特別講演の聴講を含めると60名以上の方々に参加いただきました.

2.アンケート回答概要

  研修会の更なる改善を目指し,毎年参加者にアンケートをお願いしております.今年度は46通の回答をいただきましたので,要約してご紹介します.

 問1, 2では,各研修内容について5段階で評価していただき,概ね高評価をいただきました.高評価の理由としては,口頭発表の件数が多かったことや観測業務に役立つ知見が得られたこと,顔を合わせての意見交換や議論ができたこと,所外研修先での充実した講義や見学などが挙げられました.一方で,ポスター発表の時間が少なく全てのポスターを拝見できず残念だったといったご意見や,所外研修における時間管理に関するご意見も複数いただきました.

 問3ではハイブリッド形式についてご意見を伺いました.今後もハイブリッド形式での開催を望むご意見を多くいただいた一方で,少ないオンライン参加者のために労力を割く事は申し訳ないといったご意見もありました.ハイブリッド形式の利点として,遠方からの参加が容易になることや,参加者の多様なニーズに応えられることが挙げられます.実行委員会の負担も考慮しつつ,今後もできるだけ多くの方にご参加いただける研修会を目指してまいります.

 問4, 5では来年度の参加予定を伺いましたが,約8割の方から来年度も参加を検討していると回答されました.発表を予定している方は約4割となっております.来年度の発表についてもぜひご検討いただけますと幸いです.

 問6, 7では,研修会の開催時期の希望について伺いました.9割以上の方から,例年通りの開催時期(1月下旬~2月上旬)が適当であるとのご意見をいただきました.

 問8, 9では来年度の開催形式について,従来の対面集合形式と今年度のようなハイブリッド方式のどちらを希望するかをお尋ねしました.約7割の方がハイブリッド形式を希望され,このうちさらに7割の方が,実際にハイブリッド形式で開催された場合は対面形式での参加を希望すると回答されました.参加者にとって利便性の高いハイブリッド形式の開催が好まれる傾向がある一方,実際に参加する際は,他の参加者と直接交流する機会が増える対面形式での参加を希望される方が多いことがわかりました.

 問10-13では希望する所外研修先や所内実習,特別講演について伺い,具体的なご希望を多数ご記入いただきました.いただいたご意見は,来年度以降の職員研修会のプログラム構成の参考にさせていただきます.

 問14, 15では発表の際に気づいた点やその他のご意見を伺いました.多くの方から研修運営委員への感謝や労いのお言葉をいただいたほか,口頭発表のスタイルや運営の改善点について率直なご意見をいただき,深く感謝申し上げます.いただいたご意見を参考に,今後もよりよい研修会開催を目指してまいります.

 アンケートにお答えくださった皆様,誠にありがとうございました.

3.研修会を終えて

 今年度の研修会も例年どおり,野外観測の比較的少ない時期である1月下旬に開催いたしました.所内・学内からの参加に加え,北海道大学,秋田大学,東北大学,名古屋大学,京都大学,高知大学,九州大学,鹿児島大学,海洋開発研究機構から29名の参加がありました.

 技術発表の件数は昨年度から大幅に増加し,ポスター・口頭と合わせて22件となりました.野外観測,災害発生時の対応,観測ツールや装置等の開発,観測施設の維持管理,大学の地震観測網の整備・運用状況の紹介,広報アウトリーチ活動など,多岐にわたるテーマでご発表いただきました.口頭発表では多くの質問や意見が交わされ,ポスター発表でも活発な議論が行われて時間が足りなくなるほどの盛況ぶりでした.

 ご参加いただいた皆様のご協力により,今年度も無事に研修会を実施することができました.心より感謝申し上げます.今後も充実した研修会の開催を目指し,委員一同真摯に取り組んでまいります.

4.謝辞

 本研修会の職員参加に際し,ご賛同及び格別のご配慮をいただきました各施設長の皆様,開催期間中の業務につきましてご配慮いただいた所内教員の皆様,特別講演の依頼を快くお引き受けいただいた小原一成教授,事務手続きや修了証の発行等でご協力いただいた所内職員の皆様に,委員一同,心よりお礼申し上げます.この研修会は,専門部会や学会とは異なり,自由に技術や情報共有,問題提起ができる場です.これからも,話題の新旧や分野に気兼ねすることなく,積極的に発表していただければと思います.地震や火山に関わる全国の技術系職員や省庁・研究所職員が普段の業務活動で得られた知識や経験を共有する場として,本研修会が活用されれば幸いです.

5.参考資料


※ 令和6年度 研修運営委員 ※

行竹 洋平(運営委員長) ・ 一瀬 建日(運営副委員長) ・ 安藤 美和子(実行委員長) ・
西本 太郎(実行副委員長) ・ 秋山 峻寛 ・ 八木 健夫・ 宮川 幸治・ 佐伯 綾香