2000年4月28日 地震研究所談話会
有珠山に於ける広帯域地震観測 - 長周期(12秒)微動の観測
蓬田清,森谷武男,小山順二(北大理),川勝 均,山本 希(地震研究所)

広帯域地震観測により阿蘇でわかったこと
1.噴火直前の地面の膨らみが見える (Kaneshima et al., 1996, Science; Kawakatsu
et al., 1999, JVGR in press)

2.熱水反応によると思われる長周期(15秒)微動の存在 (Yamamoto et al., 1999, GRL)

さて,有珠では?
どんな状況だったか

広帯域地震計が有珠で見たもの
観測点(広帯域地震計):

1.最初の噴火(マグマ水蒸気爆発)

上から,生(速度)波形,low-pass (10-30sec), 変位波形
600秒当たりが噴火に対応.その前のバタバタは,我々の存在そのもので,噴火の前兆ではないと考えている.
拡大図

積分した変位波形に,阿蘇のときのような超長周期のシグナル(噴火前の地面の膨らみ)は認められなかった!
2.4月1日2:50AM頃の爆発

この場合も同様に変位波形は静かである.が,low-pass波形には噴火の前兆のようなものが捕らえられているかもしれない(これからの課題).
#この後,3AMすぎの地震(有感震度4?)により,昭和新山観測点はしばらく機能せず(合掌)
長周期(12秒)微動の観測
Bandpass (8-20秒)フィルターを掛けた記録:

時間のずれは,噴火点に近いほど早い.
周波数スペクトルは?

12秒に明瞭なピークを持つ(その他のピークの可能性?)
センブランスによる震源の推定 (西山山頂を原点)

震源は,西山の西1.3km,北0.3km,海抜0m
(これについてはその後変更有り)

まさに,噴火の起こっている場所に決まる(図の0)!
スペクトルの時間変化:

赤い色が振幅大
時間変化(8−30秒フィルター):

観測時期によって振幅などに変動あり.火山の活動度との相関は?(今後の課題)
まとめ:
- 噴火直前の地下の盛り上がりは観測されなかった (阿蘇のようには)
−>> マグマが地下水に触れると,地下で圧力を溜めるプロセスを経ずに
シューっと上がってくる?
- 長周期(12秒)の火山性微動が観測され,震源位置が最初の噴火地点周辺にきまった
−>> マグマと地下水の熱水反応を見ている?
−>> 水蒸気爆発地点の予測をできた可能性?
(これについてはその後変更有り)
提案: 活火山に”もっと”広帯域地震計を置こう!(基盤観測?)