東京大学 地震火山史料連携研究機構(地震研究所・史料編纂所)

 

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1729年能登半島の地震の際の有感地震数について、既存の史料および資料を整理してまとめました。まとめた内容は地震調査研究推進本部地震調査委員会に提出しました。提出資料(2023年5月12日)(PDF)

1729年能登半島の地震の際の有感地震数

東京大学地震火山史料連携研究機構(地震研究所・史料編纂所)
(2023年5月13日更新)

※史料名に付した📖は地震史料集テキストデータベースへのリンク。

2023年5月5日の地震の震央周辺では歴史時代にもたびたび地震が発生している。1729年8月1日(享保十四年七月七日)に発生したM6.6〜7.0と推定される地震については、被害のようすだけでなく、その後の地震活動も記録されている(図1)。『真念寺鬼籍帳』(能登町柳田)📖や『重蔵宮奉加帳』(輪島市)📖によれば、正午ごろから地震があり、夕方の3度目が特に大きかったようである。ほかの史料でも8月1日の複数回の地震のうち、2度大きな地震があったと記録しているものがある。

震央周辺の史料に記録された地震発生数(有感記録数)をまとめた(図2)。宇佐美・他(2013)でも指摘されているように、地震後2週間は(有感)余震が継続していたことがわかる。『重蔵宮奉加帳』によれば、1729年8月15日以降は輪島では目立った地震はなかったようである。有感記録数は『日本歴史地震総表2020:416-1872』[宇佐美(2020)]を参照した。

図3は1896年4月2日(明治二十九年)の地震と今回の地震後の有感地震数である。

図1

1729年8月1日(享保十四年七月七日)以降の地震の記録地点(赤丸)と倒壊率分布(数字、%)。倒壊率は『眞偽一統誌』📖に書かれた被害状況をもとに、(全潰軒数+半潰軒数÷2)÷総軒数として計算されたもので、宇佐美(2020)による。

図2

図2.1729年8月1日(享保十四年七月七日)以降の地震発生数(有感記録数)。有感記録数は『日本歴史地震総表2020:416-1872』[宇佐美(2020)]を参照した。
(a) 能登町柳田(『真念寺鬼籍帳』「柳田村史」📖)、
(b) 穴水町中居(『加賀藩記事類編』・『菅家見聞集』📖)、
(c) 輪島市(『重蔵宮奉加帳』📖)、
(d) 輪島市(『加賀藩記事類編』・『菅家見聞集』📖)。
灰色の棒グラフは史料中に地震発生数が明記されているもの。6〜7回などと記されている場合は多いほうをとった。白色は「一日中」「折々」などと定性的に書かれているものや、ある期間の回数を1日あたりの回数に換算したもの。輪島市(『重蔵宮奉加帳』)では毎日4〜7回、輪島市(『加賀藩記事類編』)では1日から12日まで大小100回余りと書かれている。

図3

図3.(a) 1896年4月2日(明治二十九年)の地震後の有感記録数。珠洲(飯田・大崎村)で観測された回数。中央気象台「調査原簿」による。(b) 2023年5月5日の地震後の石川県能登地方の地震活動の最大震度別回数。震度2以上の回数を灰色、震度1を白色でしめす。歴史地震の有感回数は気象庁の震度2以上の回数におおよそ対応する[Satake and Ishibe (2020)]。

謝辞

地名からの緯度経度の取得にはROIS-DS人文学オープンデータ共同利用センター「歴史的地名/現代地名による境界データ検索」を利用した。

参考文献