議事概要

第6回(平成26年度第2回)都市の脆弱性が引き起こす激甚災害の軽減化プロジェクト運営委員会
開催日時 平成27年2月20日(金) 13:30〜17:30
開催場所 東京大学地震研究所1号館3階 会議室

議事次第

[1] 報告

・開催の挨拶(武村)

・配付資料の確認(事務局)

・出席者の確認(事務局)【都26-2-1】

・前回議事録の確認(事務局)【都26-2-2】

・文部科学省挨拶・予算の説明(文部科学省)【都26-2-3】

・地震研究所共同利用・特定共同研究の登録(平田)【都26-2-4】

[2] 議事

研究計画 (平成26年度の進捗状況と平成27年度の実施計画)

1.南関東の地震像の解明

a.首都圏での地震発生過程の解明(地震研、平田)【都26-2-5】

b.プレート構造・変形過程と地震発生過程の解明(地震研、佐藤)【都26-2-6】

c.首都圏での中小地震と大地震の発生過程の関係の解明(地震研、佐竹)【都26-2-7】

d.首都圏の過去の地震活動に基づく地震活動予測手法の確立(地震研、鶴岡)【都26-2-8】

2.観測に基づく都市の地震被害評価技術の開発(地震研、堀)【都26-2-9】

3.サブプロジェクト@の管理・運営(地震研、平田)【都26-2-10】

4.統括委員会によるプロジェクト全体の運営(地震研、平田)【都26-2-11】

5.サブプロジェクト間の連携について(地震研、平田)【都26-2-12】

[3] その他

・平成26年度成果報告書の作成について(地震研、平田)【都26-2-13】

・総評

配布資料一覧

都26-2-1 出席者リスト

都26-2-2 前回議事録

都26-2-3 文部科学省資料

都26-2-4 地震研究所共同利用・特定共同研究の登録

都26-2-5 首都圏での地震発生過程の解明

都26-2-6 プレート構造・変形過程と地震発生過程の解明

都26-2-7 首都圏での中小地震と大地震の発生過程の関係の解明

都26-2-8 首都圏の過去の地震活動に基づく地震活動予測手法の確立

都26-2-9 観測に基づく都市の地震被害評価後術の開発

都26-2-10 サブプロジェクト@の管理・運営

都26-2-11 統括委員会によるプロジェクト全体の運営

都26-2-12 サブプロジェクト間の連携について

都26-2-13 平成26年度成果報告書の作成

出席者

委員

1.研究実施機関研究者

東京大学地震研究所 教授 平田 直

東京大学地震研究所 特任研究員 橋間昭徳(佐藤委員代理)

東京大学地震研究所 教授 佐竹健治

東京大学地震研究所 准教授 鶴岡 弘

東京大学地震研究所 教授 堀 宗朗

東京大学地震研究所 准教授 酒井慎一

東京大学地震研究所 助教 中川茂樹

2.再委託先機関研究者

神奈川県温泉地学研究所 主任研究員 本多 亮

防災科学技術研究所 主任研究員 木村尚紀

3.上記以外の有識者

(委員長)

名古屋大学減災連携研究センター 教授 武村雅之

(委員)

国土交通省 国土地理院 主任研究官 水藤 尚

気象庁 地震火山部管理課 地震情報企画官 吉田康宏

地震予知総合研究振興会 副首席主任研究員 笠原敬司

株式会社小堀鐸二研究所 副所長 小鹿紀英

筑波大学 准教授 庄司 学

兵庫県立大学 准教授 木村玲欧

東京都総務局 企画調整担当部長 裏田勝己

横浜市総務局 担当課長 新藤信孝(松原委員代理)

オブザーバー

(委託元)

文部科学省研究開発局地震・防災研究課 室長 丸山秀明

文部科学省研究開発局地震・防災研究課 室長補佐 清水乙彦

(再委託先等)

東京都総務局 防災専門員主任 渡辺秀文

東京都総務局 防災専門員 萩原弘子

東京都総務局 計画調整担当係長 渡邊裕美花

東京都総務局 計画調整係主任 野村公章

(地震研究所・事務局)

東京大学地震研究所 准教授 長尾大道

東京大学地震研究所 特任研究員 石辺岳男

東京大学地震研究所 特任研究員 村岸 純

東京大学地震研究所 特任研究員 パナヨトプロス・ヤニス

東京大学地震研究所 特任研究員 横井佐代子

東京大学地震研究所 特任研究員 加納将行

東京大学地震研究所 特任研究員 西山昭仁

東京大学地震研究所事務部 事務長 戸張勝之

東京大学地震研究所研究支援チーム 係長 水津知成

議事録

〔報告〕

・武村委員長より開会の挨拶があった。

・事務局から配布資料の確認があった。また資料【都26-2-1】に基づき出席者、委員欠席者ならびに代理委員の確認が行われた。その後、資料【都26-2-2】に基づき前回議事録の確認依頼があった。

・文部科学省丸山室長から挨拶があり、本プロジェクトの中間評価ならびに平成27年度の予算について説明があった。

・平田委員より資料【都26-2-4】に基づき、地震研究所共同利用・特定共同研究の登録について説明があった。続いて資料【都26-2-5】に基づき中間成果報告会及び中間評価の報告があった。

〔議事〕

研究計画(平成26年度の実施計画と進捗状況について)

2.観測に基づく都市の地震被害評価技術の開発

・堀委員から資料【都26-2-9】に基づき、「a.地震動・地震応答の大規模数値解析法の開発」について説明があった。引き続き、資料【都26-2-9-2】に基づき、「b.大規模数値解析結果の先端可視化技術の開発」について説明があった。

・平田委員から層間変形角が10分の1を超す確率が示されているが、この値を超えると建物が損傷するのか、被害発生確率に相当するものと考えて良いか質問があった。これに対し堀委員からその通りである、損傷程度の判定や設計に際し、層間変形角が用いられているとの回答があった。これを数値計算できると現場で実際の建物の層間変形角と照らし合わせることで、損傷程度の判定に対応するであろうと回答があった。

・平田委員から地震学に基づき断層モデルを仮定することで、シミュレーションから変形角を算出し、被害予測をすることができるのかとの質問があった。これに対し、被害関数曲線を用いた従来の統計的手法よりも高精度かつ科学的合理性をもって被害推定ができると考えているとの回答があった。

・文部科学省丸山室長から実際に地震が発生した場合に、簡易な手法と「京」のようなスーパーコンピュータを用いた大規模な手法との相違について質問があった。これに対し堀委員から、スーパーコンピュータの場合にはモンテカルロシミュレーションが可能であるため、1つの建物に対し1万個のモデルを作成して計算することができる。大地震による地震動の場合には非線形性から2つのピークをもつ確率分布になることがあり、詳細な検討にはモンテカルロシミュレーションは必要である。一方でばらつきが小さい、あるいは応急的な場合には3自由度の簡易的な手法で計算する。「京」コンピューターは地震前に計算してデータを蓄積していくが、地震直後に使用することができるとは限らないため、地震直後には簡易な手法を用いることになるであろうとの回答があった。引き続き、文部科学省丸山室長から現在は「京」は使用していないのか質問があった。これに対し、堀委員から使用しているとの回答があった。さらに、文部科学省丸山室長から簡易センサーについてE−ディフェンス等実際の振動台実験に用いたことはあるのか質問があった。これに対し、堀委員から今年から始めたものでそこまでいけば良いと考えている、現在はコンセントに差し込むことでその部材の層間変形角を測定できるよう回路を設計した段階にある。今後はプログラムや回路を修正後に振動台を用いていきたいとの回答があった。

・武村運営委員長から停電時について質問があった。これに対し堀委員からバッテリーが内蔵されているとの回答があった。引き続き武村運営委員長から,簡易センサーは変位計・地震計であるのかとの質問があった。これに対し、堀委員から相対変位を測定する場合は2つ必要となる、角度が測定可能なジャイロであれば1つで済むため、ジャイロが内蔵されているとの回答があった。

・平田委員からデータはどこに保存されるのか質問があった。これに対し堀委員から、センサー内に保存されるとの回答があった。

・武村運営委員長から、センサーの目的は建物の部材損傷程度を即時に判定することであるかと質問があった。これに対し堀委員からその通りである、MeSO-net観測点から離れた建物については現在の手法からは分からないため、そこは直接計測する方針であるとの回答があった。引き続き武村運営委員長から誰がデータを見てどうするのかとの質問があった。これに対し堀委員から、センサーが反応した場合に、専門家を呼んで調べてもらう流れであるとの回答があった。

・平田委員から商用電源のACラインを使用しているのか質問があった。これに対し堀委員からそうである、その点については工夫した、簡易センサーをコンセントに差し込むだけで良いとの回答があった。

・庄司委員からGISデータに基づく形状判定の精度について質問があった。これに対し堀委員から、10数cm程度の誤差があるとの回答があった。

・小鹿委員から簡易センサーについてサブプロジェクトAでもモニタリングは重要な課題であるので、意見交換をしてはどうかとのコメントがあった。これに対し堀委員から、研究者レベルでは交流がある、回路レベルから作成する試行錯誤の段階にあり今後は建築分野の研究者とも情報交換・連携をしていきたいとの回答があった。

・武村委員長から設置数について質問があった。これに対し堀委員から、センサーの価格と予算に依存するとの回答があった。

・裏田委員から東京都の木造家屋率等を取り纏めたデータを提供することができたとのコメントがあった。これに対し平田委員から、なるべく現実の東京都に近い都市モデルに対して、被害予測を行いたいとのコメントがあった。

・武村運営委員長から、事前にシナリオに基づき計算した被害予測と実際に発生した地震は異なる可能性がある、事前に計算した結果は地震発生後に利用することはできないのか質問があった。これに対し堀委員から、事前に計算したシナリオと同じ地震であればそれをそのまま使い、事前に計算したシナリオと異なる地震の場合であれば、実際の観測データを用いることになる。可能であればシミュレーションすることになるとの回答があった。引き続き武村運営委員長から、MeSO-net観測点がない地点における地震動の評価は重要であるとのコメント、ならびに推定誤差は何と比べてのものか質問があった。これに対して堀委員から2つの推定誤差がある、1つは理論解からの推定誤差で、もう1つは東北地方太平洋沖地震の際に記録されたデータから、ある観測点がないものとして周辺の観測点から推定した値と観測との比較から求めた誤差であるとの回答があった。さらに武村運営委員長から解析解と比較して補間後の波動場は固まって動いているように見えるとのコメントがあった。これに対し、長尾オブザーバーから推定方法はまだ不完全である、より平滑化する必要があり手法の改良を始めたところであるとの回答があった。

・小鹿委員から、損傷基準の50分の1は建物ごとに大きく異なることを考慮する必要があるとの指摘があった。これに対し堀委員から、東工大の建築が専門の研究者に加わって頂いて検討しているとの回答があった。

・武村委員長から、都市モデルの建物では、木造とRC造とS造の区別はつくのか質問があった.これに対し,堀委員から東京都から提供していただいたデータからモデル化できるとの回答があった。

1. 南関東の地震像の解明

・佐竹委員から資料【都26-2-7】に基づき、「c.首都圏での中小地震と大地震の発生過程の関係の解明」について説明があった。

・武村運営委員長から安政江戸地震の内閣府による震度分布と本課題で推定した震度分布との間には震度が高い領域に顕著な相違があるのではないか質問があった。これに対し佐竹委員から、本課題における計算は広域震度分布の再現を対象にしたものであり分解能が低い、関東における詳細な震度分布を検討するためにはより詳細な減衰構造を用いる必要があるとの回答があった。引き続き、武村運営委員長から安政江戸地震と関東地震による江戸における震度分布が類似していることはその通りであるが、広域震度分布でもそれほど変わるのかどうか、歴史地震では震源から離れた震度が低い点には推定震度には大きな推定誤差が含まれる、震源決定に対する今後の見通しについて質問があった。これに対し佐竹委員から、1つは関東地方における震度分布の特徴、もう1つは最近の地震に対する震度分布との比較が震源位置の推定に対して重要であるとの回答があった。

・平田委員から、1つは史料に記述された被害から震度を推定することは容易ではない、最終的には課題2の手法を江戸時代に適用できれば良いが、そのためには様々な要素技術を開発する必要がある、現在のところ既存の被害記述と震度の対応表に準じているがこれには曖昧さが含まれている。現在の地震学の知見を取り込み、現在の震度分布あるいは3次元減衰構造を取り入れたシミュレーションとの類似性を評価することで確率論的に歴史地震の震源を推定していくことがこの課題の目標であるとの補足があった。佐竹委員から、歴史学の研究者が用いることができる信頼性の高い史料のデータベース化も重要であるとの説明があった。

・武村委員長から、歴史地震のデータからどの程度の空間分解能で震源を推定できるのかをシミュレーション等により検証するべきではないかとの指摘があった。これに対し、佐竹委員からそのためには減衰構造が重要であるとの回答があった。続いて平田委員から近年に観測されている地震のどれと類似しているかを議論・比較をするために、近年の地震による震度データを収集・整理しているとの補足があった。これに対し武村委員長から、必ずしも近年に地震活動がある場所で過去に大地震が発生したとは言えないとの指摘があった。これに対し、平田委員から両方の可能性を検討していくとの回答があった。

・武村委員長から東山北に嘉永小田原地震の万霊塔が残されており、天明や嘉永小田原地震の慰霊碑等は小田原より北に残されているものが多いため、震源位置は必ずしも小田原近辺にないのではないかとのコメントがあった。

・橋間委員代理から資料【都26-2-6】に基づき、「b.プレート構造・変形過程と地震発生過程の解明」について説明があった。

・武村委員長から東北地方の弾性不均質と関東地方の弾性不均質を別個に取り入れることに整合性はあるのか、との質問があった。これに対し橋間委員代理から、東北地方の弾性不均質を考慮すると、地殻変動場だけでなくインバージョンで得られる東北沖地震のすべり分布そのものに影響が出るので、まずは既存の地震波速度構造などの研究からおおまかに推定した不均質領域を用いて、すべり分布に対する効果を調べている。一方、関東地方の弾性不均質は震源から遠いのですべり分布に与える影響はより小さいと考えられるので今回は考慮しなかったが、東北沖地震のすべり分布に影響する場合にはそれも含めて計算する必要があり、この点について今後検討していきたいと回答があった。

・吉田委員から東北地方の不均質領域の設定について確認があった。これに対し橋間委員代理から、本発表で仮定した弾性不均質は最終的な設定ではなく、最適な不均質領域を得るまでの試行錯誤的な段階にある、様々な不均質の空間的広がりと度合いを試していきたいとの回答があった。引き続き吉田委員から、20 GPaの不均質は密度を仮定する必要があるが、速度構造としてはどの程度の変化に対応するのか質問があった。これに対し橋間委員代理から、20 GPaはマントルと下部地殻間との不均質を想定したものであるとの回答があった。さらに吉田委員から関東地方におけるクーロン応力変化と地震活動度変化との対応について質問があった。これに対し石辺オブザーバーから、東北沖地震の震源域からの距離や受け手側の断層面の向きによって値の大小は様々である、地震活動との対応についても調査し論文として出版されているためそちらを参照いただきたいとの回答があった。

・酒井委員から資料【都26-2-5】に基づき、「a. 首都圏での地震発生過程の解明」について説明があった。

・武村委員長からスロースリップが発生しているプレート境界領域で、岩石学的な解釈は可能かと質問があった。これに対し酒井委員から、解明を目指したいとの回答があった。引き続き武村委員長から、歪が蓄積しているとされるスロースリップ域の南側領域はこの研究の範疇であるのかとの質問があった。これに対し酒井委員から、重要な領域であるが観測網が陸域に限られてデータがないため現状では難しい。現在、日本海溝沿いにはケーブル式の海底地震計が設置されており、より広域のデータが利用になれば解明が進むのではないかとの回答があった。

・武村委員長から、MeSO-netのデータを公開する際には設置方位の情報を含めていただきたいとの要望があった。これに対し酒井委員からその予定であるとの回答があった。武村委員長から、設置方位の推定は重要であるとのコメントがあった。また、渡辺オブザーバーから20 m程度の深さでも設置方位に誤差が生じるのかとの質問があった。これに対し酒井委員から、地下の地震計と地上部の目印は正しく結合しているが、地表部の目印は方位磁石と目視によって方位を測定しているので、周辺に車やフェンスなどの鉄製の物が多くある都会ではこの程度の誤差を生じるとの回答があった。

・鶴岡委員から資料【都26-2-8】に基づき、「d.首都圏の過去の地震活動に基づく地震活動予測手法の確立」について説明があった。

・武村委員長から、3月11日以降に予測性能が低下したのは地震の起こり方が変化したことを意味しているのかとの質問があった。鶴岡委員からこれに対し、その通りである、その後に予測性能が戻ったのは発生予測モデルが実際の地震発生様式を学習し追随できたことを意味しているとの回答があった。

・武村委員長から発生場所は変わるのかとの質問があった。これに対し鶴岡委員から場所は詳しくみると変化する、予測マップには時間的に若干の変化がみられるとの回答があった。引き続き武村委員長から、このモデルを今後防災等に何に生かすのか質問があった。これに対し、鶴岡委員から今後は予測対象地震のマグニチュードを上げることを検討している。その場合に現在の数値的な評価手法はそのまま用いることができる、との回答があった。

・武村運営委員長から関東における今後M7級地震の発生確率についても評価できるのか質問があった。これに対し鶴岡委員から、それぞれのモデルでは規模別頻度が仮定されていて、小地震のデータからM7級の地震の発生確率に変換できる。ただし、これらの予測性能を評価は、実際に発生した地震を用いるので、M7級の地震が発生しなければ本当の意味での検証はできない。現在は、発生しているM5級程度までが検証が可能であるとの回答があった。また平田委員から、地震の発生予測では起こることだけでなく、起きないことを含めて予測することが重要であるとの補足があった。

・吉田委員から、ポアソン過程で確率を計算する固有地震的なスキームはこの中に入ってこないのか質問があった。これに対し平田委員から、モデルとしてはBPT(Brownian Passage Time)分布等の更新過程等を用いたものも許容される、そのモデルの予測結果を評価する際には、ある時空間領域に発生する地震数がポアソン過程に従うという仮定の基で実施しているとの回答があった。また鶴岡委員から、ポアソン過程を仮定する本手法でもモデル評価はできているものと考えているとの回答があった。さらに吉田委員から、過去からの状態が変われば、予測できなくなるかとの質問があった。これに対し平田委員から、状態が変化すると予測の性能は悪くなるとの回答があった。さらに、平田委員からは、RI(Relative Intensity)モデルは過去の地震活動を平滑化した単純なモデルであるが、それでも一様モデルよりは遥かに予測性能が良いことが今回示せた。また、東北沖地震によって関東地方の地震活動が変化したが変化後の地震活動をモデルに取り込むことによって予測性能は回復する、モデルにはETASモデルのような統計学的モデルに加えて過去の大地震によるクーロン応力変化を取り入れた物理モデルや、ひずみ蓄積レートや速度構造・減衰構造等を取り入れたモデルもある、との回答があった。鶴岡委員から、東北沖地震前ではRIモデルは一様期待値モデルに比べて3〜10倍程度の確率利得で予測している、東北沖地震後に予測性能が落ちて回復するという時間的な変化が客観的に評価できているとの補足があった。

・平田委員から、現状ではデータが豊富でモデルパラメータの修正が可能なマグニチュード4程度の地震は一様期待値モデルに比べて統計的に有意な成績をだしている。一方で(巨)大地震についてはデータが少ないために現状では評価が困難である、今後は予測できるマグニチュードの上限を広げていくことが重要であるとのコメントがあった。

・吉田委員から、発生時刻やマグニチュードにある程度の幅をもつ歴史地震を含めたモデルを作成していくことも可能であるか質問があった。これに対し鶴岡委員から、課題1cの歴史地震カタログを用いることで、予測性能が向上したかは尤度の比較から定量的に評価できるとの回答があった。続いて武村委員長から、カタログに欠測がないことが重要ではないかとの指摘があった。これに対し鶴岡委員から、過去の地震履歴の不完全性を考慮したモデルを作ることは可能であるとの回答があった。

3.サブプロジェクト@の管理・運営

・平田委員から資料【26-2-10】に基づき、サブプロジェクト@の管理・運営について説明があった。

4.統括委員会によるプロジェクト全体の運営

・平田委員から資料【26-2-11】に基づき、統括委員会によるプロジェクト全体の運営について説明があった。

5.サブプロジェクト間の連携について

・酒井委員から資料【都26-2-12】に基づき、サブプロジェクト間の連携について説明があった。

・武村運営委員長からサブプロジェクトBとの具体的な連携について質問があった。これに対し、木村委員からサブプロジェクトBのジオポータルにおいて地震や火災シミュレーションを行うことができるソフトウェアの開発を進めており、火災シミュレーションを課題2の可視化技術に応用するための議論を始めたところであるとの回答があった。

〔その他〕

・中川委員から資料【都26-2-13】に基づき、成果報告書の提出について説明があった。

・総評

・裏田委員から、基礎的な知識がないと議論の詳細を理解することは難しかったが、課題dに関してモデルの評価について客観的に数値で評価する事は、研究成果を一般の方々に誤解なく伝わるようにするための取り組みとして重要ではないかとのコメントがあった。

・渡辺オブザーバーから、構造と地震発生条件との関連について前回に比べて最終的な報告書に向けてイメージがはっきりしてきたので結構である、今後も継続してほしいとのコメントがあった。

・萩原オブザーバーから、課題1cにおいて安政江戸地震等の震源像が解明されることは今後の発生予測等に向けて重要であり期待しているとのコメントがあった。

・笠原委員から、プロジェクトが着々と進展しているので安堵している。課題2の中で簡易センサーについては興味深く多くの可能性を秘めている、今後は目的や汎用性についてより詳細な説明をしていただきたいとのコメントがあった。

・庄司委員から話の内容は分かりやすく、どの課題からもバランス良く成果が上がっている。一方でその精度や適用性についても触れて欲しいとのコメントがあった。これに対し酒井委員からは精度は場所や時期によって異なり一括で表現することは難しいため、図面を工夫していきたいとの回答があった。

・吉田委員から、MeSO-netを長期にわたり維持・運営してきたことは評価でき、敬意を表したい。長周期地震動や緊急地震速報への適用を想定した場合、減衰構造や地震波速度構造は重要であると考えており、今後も継続が望まれる。サブプロジェクト@課題1は理学的で分かりにくいので、サブプロジェクトBとどのように見せていくかについて議論するとより成果を社会に発信していくことができるのではないか、とのコメントがあった。

・水藤委員から、本日の議事次第のほうが前回に比べて理解しやすかった。プロジェクトの成果が出てきているが、プロジェクト開始時に想定していなかった成果やその発展性についても言及していただきたいとのコメントがあった。

・小鹿委員から、層間センサーにサブプロジェクトAとのすみわけができているとのことでよかった。損傷判定の閾値については構造の専門家が揃っていても難しいためサブプロジェクトAと意見交換・連携していく必要がある。損傷評価を行うことは非常に困難である。例えば1995年兵庫県南部地震について、実際に損壊した家屋に対してシミュレーション解析を行っても実現象よりも壊れやすくなる傾向にあるという印象を持っている、この点についてもサブプロジェクトAと意見交換をしてはどうかとのコメントがあった。

・木村委員から、今回の枠組み・くくりについては分かり易かった、このように進めたほうが良い。精度が何を意味しているのか理解が難しい、どのように相手に利用してもらいたいのか、どう相手に学んでほしいのかのためにこの進捗があるのか見えづらい、情報を受け取る側は専門家ではないので研究が理解されない難しさがあるのではないかとのコメントがあった。

・文部科学省清水オブザーバーから、進行議事の仕方は良かった。ここまでの到達点が良く理解できた。連携につながる研究が進展しているように感じた。前回の運営委員会からの進捗が分かり易く説明されると良かったのではないか。MeSO-netがモニタリングのための根幹を成すシステムであることを社会にアピールし、サブプロジェクトA・Bと連携していくべきである。残り2年間でその先につながる成果を出していただきたいとの激励のコメントがあった。

・武村委員長から、発表の仕方は今回のほうが良かった。理学的な研究であるから、どうしても社会に役立つまでに間がある。サブプロジェクトAやBと連携することで、より高い社会的貢献に向けた視点が開けるのではないか。精緻にやることが必ずしも良いことでないのでこの点についてもサブプロジェクトAやBと連携して欲しい。例えば安政江戸地震の震源推定は重要な課題であるが、安政江戸地震によってどこで何が起こったか、現在の東京で同様の地震が発生した場合にどのようになるのかなど当初計画と異なる成果も、予算の範疇で含めていただきたいとのコメントがあった。

・平田委員から、残り2年間でまず約束した成果を出すことが重要である。被害を含めて安政江戸地震の震源像をより詳細に解明して、サブプロジェクトBに成果を活用していただけるような形に連携していきたいとのコメントがあった。

〔閉会〕

・武村運営委員長、平田委員から挨拶があり、閉会した。