枠1
博士『地球の中はどうなっている?』

【深海魚ちゃん】:潜水艦で海底まで行くことはできても,地球の中には入っていけないんだね.
【 博士 】:だから地球の中を通ってきたメッセンジャーに聞くのさ.地震が起きると地上では地面が揺れる.この揺れをもたらす地震波は有力なメッセンジャーだ.調べてみると,地球はタマゴによく似た構造をしていることがわかってきたよ.
【深海魚ちゃん】:地球タマゴ!? 黄身(きみ)と白身(しろみ)と殻(から)があるの?
【 博士 】:そうなんだ.黄身にあたる部分は「核」という.もちろん黄色ではないがね,きっと白銀の美しい世界だよ.電気もバチバチ通っているだろう.地球タマゴの黄身は鉄でできているんだ.白身にあたる部分は「マントル」という.これも白い色をしているわけではないが,きっともっと美しいだろう.なんといっても地球の中の宝石箱だからね.
【深海魚ちゃん】:マントルには宝石があるの?ダイヤモンドとか,赤や緑や青の奇麗な石が?
【 博士 】:そうなんだ.我々のターゲットはこのマントルだ.宝石狙いをしているわけではないけどね.すべてが明らかになったら宝石よりもすごいものが手に入るはずだ.人類の英知,新しい地球観...おっと脱線してしまった.殻に当たる部分は「プレート」という.
【深海魚ちゃん】:プレートは知ってるよ.日本の下にプレートが沈み込むから地震が起きるんだ.どうして沈み込むんだよう.地震なんて起きなければいいのに.
【 博士 】:プレートが動いている理由は,マントルにあるんだ.実はマントルはゆっくりと動いているんだ.我々が見ているプレート運動は,このマントルの動きの一部だと言われているよ.だからプレートの動きを止めること,つまり地震を止めることはできないんだ.でも地震が起きても被害が起きないようにすることはできる.そのためには地震のことや地球のことをもっと知る必要がある.そんな想いもあるんだよ.
【深海魚ちゃん】:ふーん.僕もメッセンジャーの言うことをいろいろ聞いてみよう.まずは,こだわり派の地震観測オヤジさんに地球の中がどうなってるか聞いてこよう,っと.
深海魚ちゃん
地球内部構造
地球内部構造を調べるには,地震波の解析,鉱物の高圧実験,あるいはコンピュータシミュレーションなどが使われる.地震波には伝搬速度の速いP波と遅いS波とがあるが,S波は液体の中を伝わることができないという特徴を持っている.このため,一つの地震に対してS波が観測されないエリアを細かく調べることで,地球の内部には液体の層があることが分かってきた.地球タマゴの黄身の外側は液体の金属(鉄やニッケル)でできており,これを外核という.その内側は内核と呼ばれ,固体の鉄でできている.地球内部は,固体の鉄(内核),液体の鉄(外核),岩石(マントルおよび地殻)で構成されている.
深海魚と教授との会話では「地殻」と「プレート」との区別をあいまいにしたが,実際は,プレートとは「地殻+マントルの上部」のことである.地殻とマントルは構成される岩石の種類が異なるという物質による区分である.一方で,地殻とマントル上部は一体化して動いているため,この部分がプレートであると言えよう.力学的な区分として,プレートのことを「リソスフェア」,その下にある部分を「アセノスフェア」と呼んでいる.ふつうの海洋マントルプロジェクトでは,アセノスフェアを詳しく知ることがターゲットの一つだ.



内部構造1


枠3