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-まるで宇宙ステーションのように,海底にひろがる希望の窓-

窓から見えるのは,新しい地球
Q.【深海魚ちゃん】:海底にひっそりといる観測機器たち.何をやっているの?

 

A.【 博士 】:地球の中からの声を聞いて,記録しているんだよ.地球内部にはまだ人類は到達していないから,地球の中のことを知りたいときは,地球の中を通ってきたメッセンジャーに聞くのが一番だ.その声を録音しているようなものさ.

Q.【深海魚ちゃん】: 地球の中を通ってきたメッセンジャー!?

 

A.【 博士 】: そう.何だと思う? 体の中の骨を見たい時はX線を使ってレントゲンを撮るだろう.それと同じだ.地球の中,僕たちはマントルと呼んでいるんだが,これを知りたいときは,地球の中を通ってきた「地震波」や「電磁波」を使う.観測機器によってそれぞれが得意な波を記録している.何種類あったか数えてごらん.

 

Q.【深海魚ちゃん】: これらは全部,日本のチームが開発したの?

 

A.【 博士 】: そうだ.日本の陸上での観測網は世界でも類を見ない.しかしそれと同じ品質のデータを海底で得ようと思うと,これはなかなか難しい問題だった.僕たちはこの課題を解決するまで,これまでずっと技術開発に取り組んできたんだ.現段階で,地震観測と電磁気観測の双方で,海底でも陸上と同じ品質のデータを取ることを可能にしたのは,世界中を見回してもこの研究チームだけさ!


Q.【深海魚ちゃん】: へええ.地球内部からのメッセンジャーをとらえて,地球の中のマントルのようすを調べるんだね.あれ?でも地球の中を僕は知ってるよ.プレートが潜り込んでいって,バーンって地震を起こすんだ.

 

A.【 博士 】: それが起きるのは地球のごく一部の特殊領域なんだよ.特殊な領域では現象も派手だから,従来の品質の観測機器でいろいろと調べることができた.でも逆に言うと,特殊じゃない,本当の地球の性質を持っている部分についてはほとんどわかっていない,ということなんだ.

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Q.【深海魚ちゃん】:特殊じゃないところ...ふつうのところ!

 

A.【 博士 】: そう,だからこのプロジェクトは,名付けて『ふつうの海洋マントル』.ふつうが一番難しい.人生も同じだ.覚えておきたまえ.

 

 

    

 

20世紀の積み残し課題の解決と,21世紀の最重要課題へ挑む
プレートテクトニクスの登場による地球科学のパラダイム転換は,20世紀のもっとも重要な「科学革命」のひとつでした.地球の表面がいきいきと活動しているというこのモデルの根本には,硬いプレート(リソスフェア)が,柔らかいアセノスフェアの上をすべるように動くという考えがあります.したがって,プレートの底がどうなっているかを理解することはプレートテクトニクスの最重要課題であったにもかかわらず,四半世紀がたった今なお残る問題として世界中が注目しています.この研究プロジェクトによってその決着がつくだろうと国内外に高く評価され,『ふつうの海洋マントルプロジェクト』は始まりました.
 

さらにプロジェクトメンバーはもうひとつの問題を自分たちに課しました.地球にある水は,地球内部のどこにあるのか.海洋は,地球が形成され,冷却していく過程の中で,雨となってできたもので,いわば固体地球の中から出てきたものといえるでしょう.45億年の地球の歴史でさらなる冷却を受けて,現在海水は地球内部に逆流していると考えられます.固体地球内部の水の存在は,地震の発生や火山の生成などに関わる重要なファクターで,沈み込み帯での水の循環などの理解はずいぶんと進んできました.また,近年,この大量の水が,地球内部の上部マントルと下部マントルの境界である『遷移層』に貯蔵されている可能性が指摘されてきました.地球の大半を占める『ふつうのマントル』の遷移層での水の存否を明らかにしない限り,問題の根本解決にはほど遠い,と自らにもう一段階深い,まさに21世紀の最重要課題を設定したのです.


これらの2つの課題に取り組めるのは,地震観測と電磁気観測の双方で,海底でも陸上観測と同程度の品質のデータを取得することを可能にしたことにあります.地震学者や地球電磁気学者自らの手で開発してきた地震・電磁気観測機器.それをやはり自らの手で解析し,得られた結果をどう解釈するのか.このウェブサイトで報告していきたいと思っています.

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