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都市の脆弱性が引き起こす激甚災害の軽減化プロジェクト(2012-2016)

我が国の観測史上最大のマグニチュード9を記録した東北地方太平洋沖地震は、広範囲にわたる大きな揺れ、大津波、原子力発電所の事故をはじめとする未曾有の広域複合災害を引き起こし、これまでとは異なる新たな地震災害像を示しています。広範な液状化、多数の帰宅困難者、交通機関の麻痺、事業活動の停止、電力やライフラインの途絶、日常生活物資の不足等々、都市特有の課題が顕在化し、大地震に対する備えの重要性が改めて認識されました。多くの機能が集中高度化し、社会経済活動の中枢である首都圏は、災害に対する脆弱性を内在しており、予期せぬ大災害へ発展するおそれがあります。

そこで、今後予想される首都直下地震や、東海・東南海・南海地震等に対して、都市災害を軽減することを目的に、5カ年の研究開発プロジェクトが実施されることとなりました。

本プロジェクトは、3つのサブプロジェクトからなり、それぞれが研究・技術分野の境界を越え効果的な連携を図って進めます。

@首都直下地震の地震ハザード・リスク予測のための調査・研究
(中核機関:国立大学法人 東京大学地震研究所)

東北地方太平洋沖地震以降の新たな地震像を解明するとともに、大規模シミュレーション数値解析法を開発し、都市の詳細な地震被害評価技術を開発して災害軽減策の検討に供します。

(1)南関東の地震像の解明

「首都直下地震防災・減災特別プロジェクト(2007-2011)」で設置したMeSO-netの観測データを利用して、首都圏のプレート構造の解明を進め、プレートの詳細な構造と2011年3月11日以降活発化した地震活動の関係を解明し、将来発生が予想される首都直下地震の地震像(地震規模、地震発生頻度、発生場所)を解明します。さらに、首都圏の地盤の揺れの特性も解明します。

a.首都圏での地震発生過程の解明
MeSO-netを維持し、詳細なプレート構造と首都圏の地震発生過程を解明するための調査研究を行います。
b.プレート構造・変形過程と地震発生過程の解明
首都圏の伏在活断層・プレート構造を制御震源探査と自然地震観測に基づいて調査し、地殻・プレートの変形をモデル化します。活断層等の活構造の調査を行い、首都圏の三次元的な震源断層の総合モデルを構築し、首都圏の浅い内陸地震の全体像を把握します。関東下で予想される岩石の高温・高圧下での弾性波速度を測定し、構成岩石モデルを構築します。
c.首都圏での中小地震と大地震の発生過程の関係の解明
関東の太平洋沖で進行している平成23年東北地方太平洋沖地震の余効滑り等により活発化した中小地震を含めた最近の中小地震の類型化を図ります。また、計器観測記録、歴史資料、津波堆積物等の記録を収集し分析することで、南関東で過去に発生した大地震の地震像を明らかにし、新たな時系列モデルを構築します。これらをもとに中小地震と大地震の発生過程の関係を解明します。
d.首都圏の過去の地震活動に基づく地震活動予測手法の確立
過去に発生した地震の活動から将来の地震活動を予測する統計地震学的手法を発展させた新たな地震活動予測手法を提案します。そのために首都圏の過去の地震活動に最適化した時空間的に高分解能かつ高精度な地震活動予測アルゴリズムを開発します。またそれらのアルゴリズムを評価・検証するための基盤構築を行い、地震活動予測の実験を行って、地震活動予測手法の妥当性を検証します。

(2)観測に基づく都市の地震被害評価技術の開発

MeSO-netで観測したデータと広域都市モデルを使い、都市の地盤と構造物の揺れを計算する大規模シミュレーション手法を開発し、観測と計算を融合させた、都市の地震被害評価技術を開発します。また、サブプロジェクトAと連携して地盤−基礎−建物系の地震動計測データの収 集・蓄積を行い、個別建物シミュレーションの高度化を図ります。その成果は、サブプロジェクトBと連携して、災害対応能力の向上方策の検討に利用 されます。

a.地震動・地震応答の大規模数値解析手法の開発
都市の表層地盤と構造物群を忠実に表す都市モデルを構築し、大規模数値解析によって地震動と構造物地震応答を計算する手法を開発します。
b.大規模数値解析結果の先端可視化技術の開発
地震被害評価は大規模数値解析の計算結果に基づきますが、これには膨大な量の計算結果を効果的に可視化することが必須となります。3次元視とマルチスケールが可能な可視化を開発するとともに、応急評価に使えるよう高速処理も併せて実現します。

A都市機能の維持・回復のための調査・研究
 (中核機関:国立大学法人 京都大学防災研究所)

B都市災害における災害対応能力の向上方策に関する調査・研究
 (中核機関:国立大学法人 京都大学防災研究所)




首都直下地震防災・減災特別プロジェクト(2007-2011)

都市災害プロジェクトに先行して、首都圏地域で発生する地震による被害を軽減するためのプロジェクトが文部科学省により進められていました。このプロジェクトでは、首都圏に稠密かつ高精度な地震観測網(MeSO-net)を整備し、東北地方太平洋沖地震の本震ならびに数多くの余震等の重要な観測記録を得ました。それらの記録を用い、首都圏下のプレート構造を明らかにし、過去の首都圏の地震と複雑なプレート構造との関係の解明、首都圏で発生する地震の断層モデルやそれによる地震動の解明等の研究が進められました。フィリピン海プレートの深さが、これまでより数km浅い部分があることがわかり、そのため、再計算された地震動が大きくなった箇所も見られたことや、過去のM7級の地震が、プレート境界型ではなかったこと等が明らかになりました。
本プロジェクトの研究成果はこちらをご覧下さい。


MeSO-net観測点分布図

首都圏の296地点に地震計が設置されています。

データを見るには「@スクール地震学」をご覧下さい。


観測点の概要

地下20mの深さに地震計が設置され、その信号をテレメータ装置が、地震研究所へ24時間365日連続して送信しています。




大都市大震災軽減化特別プロジェクト(2002-2006)

このプロジェクトでは、首都圏や京阪神などの大都市圏において、大地震が発生した際の人的・物的被害を大幅に軽減するための科学的・技術基盤を確立することを目的とした研究開発を実施しました。我が国の地震防災対策に最先端の科学技術を効果的に活用することを目指し、理学・工学・社会科学など異分野の研究者が結集して、課題の解決に取り組みました。本プロジェクトの研究成果はこちらをご覧下さい。