2.4.4 津波解析・警報システムの高度化

(1) 地震-津波同時シミュレーション法の開発

海溝型巨大地震の断層運動により発生する,地震動,地殻変動,そして津波を同時に評価することを目的として,弾性体を伝わる波動場を表す運動方程式に津波の伝播の原動力となる重力項を加えた方程式系を用いた,地震―津波同時シミュレーション法を開発した.京コンピュータを用いて2011年東北地方太平洋沖地震の地震津波シミュレーションを実施し(図7),釜石沖の海底ケーブルに記録された水圧変化から,地震動(水中音波),地殻変動,津波の発生・伝播過程の詳細な解釈を行なうとともに,現在敷設が進められている海底ケーブル津波計データの将来の津波警報への活用に向けて,想定地震に対する模擬データの計算を進めた.

(2) 津波・高潮の研究

本部門で行っている津波・高潮の研究は,被害津波の事例研究,津波検潮記録のデータ解析,流体力学としての津波研究,津波測定技術の改良と災害防止への応用研究の4点に分類される.2009年サモア諸島の津波,2010年チリ津波,そして2011年東北地方太平洋沖地震による津波等,このような被害を伴う津波が起きるたびに,他大学,および国外の研究機関と共同して直後の被害現地調査を行った.特に,東日本大震災の津波の調査に関して250頁にわたる報告をとりまとめ,出版した.また,津波被害の軽減に資するため,地震直後に迅速にメディアに出演し,避難を呼びかけると共に解説を行った.