歴史学には史料が不可欠です。現在まで伝えられてきた史料があるからこそ、現在を生きる我々
は過去に起こった出来事の日時や場所、関係した人々の存在を詳しく知ることができるのです。史
料には、その時代に生きた人々の日常生活や事件などが書き記されており、火災・洪水・地震など
の災害の記述もあります。史料に記されている災害の多くは頻繁に発生した火災や洪水であり、地
震災害は人の一生のうちに一度も遭遇しないような珍しい出来事でした。
古代や中世といった古い時代の史料は、その後の災害や戦乱によって失われたものが多く、現存
しているものは限られます。しかし、17 世紀になると史料の量は増加し、18 世紀中頃からは多種
多様になっていきます。史料が豊富で多彩になった 19 世紀以降に発生した地震災害は、史料にど
のように記されているのか、また、史料を読み解くことでわかる地震災害の特徴は何かについて解
説したいと思います。
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