今から約百年前に、ドイツのウェーゲナーはいわゆる大陸移動説を提唱しました。1960年代
にいわゆるプレートテクトニクスの考えが生まれ、海洋プレートの拡大によって大陸の移動を含む
地球内部の活動を説明する理論として確立しました。しかし、プレート運動を可能にしているアセ
ノスフェア(プレートの下にあるやわらかい層)のやわらかさの原因は謎として残されています。
ここでは、「ふつう」の海洋マントル(海底拡大の時間と共に表面から冷えているマントル)を
対象にした観測研究を紹介します。この研究は、北西太平洋のふつうの海底において地震研で開発
した最先端の海底観測機器による観測を実施し、地震波速度と電気伝導度(電気の流れやすさ)と
いう異なる物理量でのイメージングにより、アセノスフェアのやわらかさ原因を明らかにすること
を目指します。研究開始当初は、ふつうの海洋マントルの構造は、プレートの冷却期間(海洋底の
年代)だけでほぼ決まっていると予想したのですが、それは見事にはずれました。しかし、予想も
しなかった結果が得られるのが、観測研究の醍醐味なのです。
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