火山観測研究の展望 火山ごとに異なる噴火の予測と災害の軽減を目指す

北海道大学大学院理学研究院教授
橋本 武志(はしもと たけし)

日本には110 の活火山がありますが、噴火予知の達成度は火山によって大きな開きがあります。例えば桜島火山では、噴火が頻繁に起きており、豊富な観測データに基づいた研究が進んでいるため、山体の膨張や小地震の発生といった前兆現象に基づいて、個々の噴火の発生予測が可能になってきています。

しかし、活火山であっても何十年も噴火していない山も少なくありません。そうした火山では、マグマ溜まりの位置や規模が分からない場合が多く、また観測点が少ないために、噴火前兆現象を検知するのが難しい。この格差の解消は、今後の火山研究で考慮すべきポイントの一つでしょう。

現在の噴火予知は、過去の噴火履歴や観測事例に頼るところが大きく、今までにないパターンが起きたときは、次に起きることの予測が簡単ではありません。山体内部の構造や噴火の仕組みを理解して、観測データからその後の推移を予測する方式を実現する研究を進める必要があります。

新しい研究分野が加わって、新たな進歩も生まれようとしています。

一つは、歴史学・考古学の分野です。地球物理学は現在の姿を観測し、地質学は言わば「太古」を対象としています。この大きな時間の差を埋めてくれるのが、古文書や遺跡などの人間活動の記録から研究を進めている歴史学・考古学です。もう一つは社会科学の分野で、私たち理学者による研究成果を社会に役立てる、つまり災害を軽減するための研究を担っています。

噴火予測の精度を高めつつ、新しい研究分野とも連携して、社会に役立つ研究を進めていきます。