予知協の中核機関としての東京大学地震研究所

地震・火山噴火の解明とこれらに起因する災害の予防

東京大学地震研究所(地震研)は共同利用・共同研究拠点であり、日本の地震・火山科学を推進する役割を担っています。そして地震・火山噴火予知研究協議会(予知協)は、2014年からの建議「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画の推進について」に基づく研究を推進するための母体として、地震研の中に設置されています。

観測研究を、研究コミュニティーが提案する「建議」に基づき進めていることは重要です。建議では「研究目的・推進に不可欠な要素」を明確に示しており、向かうべき方向が妥当か、予知協が常に確認できます。

建議に基づく研究は、全国の研究機関による共同研究として進められますが、そのためには、しっかりとした枠組みが必要です。この枠組みとして重要な役割を果たすのが予知協です。現在、15大学と1研究機関が参加しています。一方、地震研は海外の研究機関との共同研究も進めており、国内外の連携を強化しています。予知協は国内の共同研究体制のまとめ役を担っているかたちです。

新しい観測研究計画では、これまで理学のアプローチが中心だった研究に災害に関係する工学、社会科学と歴史学が加わりました。災害を軽減することによって社会の役に立つ体制となったのです。社会科学分野には、理学の研究成果をどのように社会に伝え、災害軽減を実現していくかが期待されています。歴史学は、現在のことを知る地球物理学的なアプローチと、千年スケール以上の現象を解明する地質学・地形学的なアプローチの時間的な隔たりを埋めてくれるでしょう。

  • 寺田寅彦が起草した地震研究所の使命(東京大学地震研究所1号館1階エレベーター脇)寺田寅彦が起草した地震研究所の使命
    (東京大学地震研究所1号館1階エレベーター脇)
  • 東京大学地震研究所 所長 小原一成東京大学地震研究所 所長
    小原 一成(おばら かずしげ)

全国連携で実現する地震・火山噴火予知研究

地震・火山噴火予知研究協議会議長 平原和朗 (京都大学大学院理学研究科教授)地震・火山噴火予知研究協議会議長
平原 和朗(ひらはら かずろう)
(京都大学大学院理学研究科教授)

地震や火山噴火の発生を私たちは防ぐことはできません。そうであるならば、そのメカニズムを解明し、発生予測の精度を高め、想定される災害を軽減することに、地震・火山予知研究は貢献していきます。

日本は世界有数の「地震・火山大国」で、これまで多くの地震災害や火山災害に見舞われてきました。東日本大震災、御嶽山噴火等、甚大な被害を引き起こす災害が頻発しています。今後、数十年の間に、南海トラフや首都直下を震源とした巨大地震災害や、大規模な噴火災害が発生することは十分に予想されています。

全国の大学・研究機関の研究者は、地震や火山噴火現象を解明してその予測を実現するために、地震・火山噴火予知研究協議会のもとに集結し、連携・協力しながら地震予知研究と火山噴火予知研究を実施しています。

地震は地下の岩石の破壊現象であるのに対して、火山噴火はマグマの上昇と噴出という、本質的に異なる現象ですが、共に岩石の変形や破壊などが大きく関与する現象です。また日本列島周辺では、海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込むことにより、プレート境界や内陸で地震が発生し、また日本列島の地下の上部マントルではマグマが生成され火山活動に至るなど、地震と火山噴火は地球科学という共通のバックグラウンドを持っています。

そのため地震と火山の研究には、観測項目や解析手法の一部が共通しています。同時に、長期の観測データを効率的に蓄積するデータベースが重要のため、両方の研究計画を統合することで、大きな利点が生まれます。相互の研究分野の長所を取り入れて研究の幅を広げることにより、地震および火山噴火予知研究の両方を一層発展させることを目指して、両研究計画の統合が行われなければならないことは明らかでした。

研究を充実させるためには、人材育成も求められています。若い世代に研究自体により注目してもらい、地震・火山噴火予知の研究にかかわってもらえる人が一人でも増えるように、研究意義を発信していかなければなりません。