八つの計画推進部会

海溝型地震巨大地震の解明と予測

近年の研究により、同じ場所で繰り返し発生する小さな地震があることや、地震波があまり発生しない比較的ゆっくりとした断層すべりがあることが分かってきました。この現象を解析することによって、プレート境界のすべりの様子が高精度で推定できるようになっています。また、断層すべりを支配する摩擦の物理を考慮したプレート境界地震の物理モデルが構築されています。海溝型地震部会では、様々な観測データとモデルにより、巨大地震を引き起こす可能性のあるプレート境界型地震のメカニズムを解明し、その発生予測につなげることを目指しています。

日本列島下には太平洋プレートとフィリピン海プレートが沈み込んでいるため、プレート境界および沈み込む海洋プレート内部で多くの地震が発生します。東日本大震災を引き起こした2011年東北地方太平洋沖地震、1923年関東地震、そして過去に約100年間隔で繰り返し今また発生が懸念されている南海トラフの巨大地震は、海溝型のプレート境界地震です。これら地震の震源域はほとんど海底下ですが、マグニチュード8以上の規模が大きい地震が比較的頻繁に発生して津波を引き起こすので、しばしば大被害をもたらします。海洋プレート内部の地震も、巨大地震の頻度は低いですが津波などにより被害をもたらすことがあります。海溝型地震の起こり方を解明することは、これらの地震に備えるために重要です。

プレート境界の巨大地震は内陸地震に比べ発生間隔が短いために、その繰り返しの性質が調べられています。しかし、地震計記録などから調べられるのは最近の地震だけなので、津波痕跡や地形など、また後述の史料・考古データから過去に発生した地震を調べることにより、地震の長期的な予測の改善を目指しています。

  • 部会長:小原 一成(東京大学地震研究所)
  • 副部会長:西村 卓也(京都大学防災研究所)

内陸地震地殻構造の不均質性とひずみの集中

大きな地震が発生すると、たくさんの余震が発生します。地震の発生直後に多くの地震計を臨時に設置して余震を詳しく調べる研究もよく行われます。内陸地震の場合、震源域の直上に多くの観測点を設置でき、余震を詳しく調べると同時に詳しい地殻構造が推定できます。本震の破壊過程の特徴と余震分布の比較などから、断層近傍の物質の性質や地震を引き起こした力のことなどが推定でき、内陸地震の解明に役立てています。

日本の内陸には多くの活断層があり多くの地震が発生します。海溝型地震に比べると巨大地震の頻度は低いですが、阪神・淡路大震災を引き起こした1995年兵庫県南部地震のように人々が生活している地域の直下で発生すると甚大な被害をもたらします。内陸地震による被害を軽減するためには、内陸地震はどこで、どのくらいの頻度で発生するか、どのような地震動を引き起こすかを解明することが役に立ちます。

プレート境界地震はプレートの相対運動が直接的な原因であるのに対し、どのような力が内陸地震の原因になっているかは詳しくは分かっていません。これまでに内陸大地震が発生した断層などで地殻構造を調べる研究が進められています。地下の岩石の性質が場所によって異なること(不均質性)が原因で地殻のひずみが集中することがあり、これが内陸地震の発生につながることが分かってきました。ひずみの集中過程も観測から分かるようになっています。地殻構造を詳しく調べるとともに実験などで岩石の性質を調べて物理モデルをつくり、モデルから期待される現象と地震や地殻変動の観測データを比較することにより、内陸地震の発生メカニズムをより詳しく理解しようとしています。

  • 部会長:松本 聡(九州大学大学院理学研究院)
  • 副部会長:上嶋 誠(東京大学地震研究所)