-「地震研究所図書室特別資料」公開記念-
地震研究所図書室では、地震・火山・津波など地震研究所に関連の深い災害をテーマとした貴重資料のコレクションを所蔵しています。これまで、これらの資料をデジタル化して「東京大学地震研究所図書室特別資料データベース」でオンライン公開してきましたが、今年度から「東京大学デジタルアーカイブポータル」の「地震研究所図書室特別資料」としてリニューアル公開しました。
今回は、リニューアル公開を記念して、掲載されている貴重な資料の中から代表的なものを精選して展示します。
『安政見聞誌』は、上・中・下の全三巻で構成されている木版本。仮名垣魯文の編著で、地震後の安政3年(1856年)に出版された。文章に加えて29の挿絵が収録されており、地震被害や人々の行動について具体的な様子を知ることができる。
図は亀戸天神社~柳島町の周辺の様子である。図の右端が亀戸天神社で、本殿は無事であったが境内の建物は大破した。その周辺の武家屋敷や町屋には倒壊が多く、絵図の右端から起こった火災によって門前町が一丁(約1㌶)焼失した。図の左側にある柳島町でも町屋や通りの南側にある武家屋敷の長屋などが軒並み大破・倒壊しており、その後火災により焼失した。
「鯰絵」は、地震の元凶とされた「鯰」を主に描いた刷物である。特に江戸時代後期の安政江戸地震(1855年)後に多数版行され、地震後わずか約2ヵ月間に、現存しているだけで200種類にもおよぶ鯰絵が出回った。
地震直後には地震の鎮静化を期待して、鹿島大明神が地震鯰を押さえ込んでいる姿や、被害に遭った人々が鯰を懲らしめて発散する姿が多く描かれた一方、復興景気で職人たちが恩恵を受けたり、富裕層の富が崩れて庶民に再分配されたりするようになると、「世直し鯰」として肯定的に描かれることも多くあった。
地震研究所図書室では約100点の鯰絵を所蔵している。
ジョン・ミルン(John Milne)は1876年に鉱山学を教えるお雇い外国人として来日したが、日本の地震や火山活動に関心を深め、日本地震学会の設立を主導するなど、1895年に帰国するまで日本の地震研究の発展に貢献した。
イギリスに帰国後はワイト島のシデ(シャイド、Shide)に地震観測所を設置して地震研究を行った。この間、ミルンはイギリスのキュー観測所長であったチャールズ・クレーに度々手紙を送っている。地震研究所ではクレー宛ての手紙を中心に1898年~1912年に書かれた53枚の書簡を「ミルンの手紙」として所蔵している。
Yours very truly,
John Milne
敬具
ジョン・ミルン
名誉幹事を務めた英国協会地震調査委員会を通してミルンが発出した文書。ミルンは、世界各国の地震観測所の観測データの収集・比較検討にも取り組んでいた。
敬具
英国協会地震調査委員会
名誉幹事ジョン・ミルン
寛政4年(1792年)の雲仙岳の噴火と、島原半島での被害について描かれた絵図。絵図の中央上端に雲仙岳の一部である普賢岳、右側に山麓を流れ下る溶岩、中央に地震によって大崩壊した前山(眉山)と崩壊した土砂に押し潰された村々、右下に辛うじて被害を免れた島原城が描かれている。
前山の大崩壊で発生した岩屑流(がんせつりゅう)と、その流入によって有明海で発生した大津波のために、島原の城下町だけでなく沿岸の村々も壊滅的な被害を受けた。有明海に流入した岩屑流によって、城下町沿岸の有明海が埋め立てられ、沖合には幾つもの島ができた。絵図下端の有明海の中には島が描かれており、前山の大崩壊と大津波の直後は約30の島があったようである。
参考文献:北原糸子・他編『日本歴史災害事典』(吉川弘文館,2012年)
江戸での被害の様子が描かれた瓦版。上段の詞書には、日本橋を起点に東西南北の江戸市中の被害の様子が記されている。
日本橋より東、隅田川沿いでは町屋や大名屋敷の倒壊・焼失が多く、日本橋より西、市ヶ谷や四谷では建物の倒壊は少なかったとあり、日本橋より南、三田では建物の倒壊は少ないが、築地の武家屋敷では被害が大きく、
日本橋より北、吉原や浅草では町屋の倒壊・焼失が多かったとある。
さらに、丸の内での大名屋敷の多数焼失について追記されており、末尾には、江戸市中の土蔵の破損が41万ヶ所余あったことや、御救小屋(被災者救済のための仮小屋)の場所(5ヶ所)について記されている。
下段の絵には、倒壊した町屋や土蔵、町屋の下敷きになった人々とそれを助け出す人々、倒壊した町屋からの出火と逃げ惑う人々といった、安政江戸地震における江戸市中での被害の特徴が描かれている。
地震研究所図書室が所蔵する地震・火山・津波など地震研究所に関連の深い災害をテーマとした貴重資料のコレクション(鯰絵や瓦版など)を検索・閲覧できます。 今回展示している資料もすべて地震研究所図書室特別資料から画像データを公開しています。
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