活動の様子

フィジー共和国とトンガ王国で住民調査の準備に着手しました(G4:2024/12/4-15)

フィジー・ビティレブ島とトンガ・トンガタプ島で関係機関や住民代表と意見交換をしました

  現地で生活する人々が日常生活を営むうえで、ハザードについてどのような基本的な理解をしているのか。また、世代を超える時間スケールのなかで、ハザードの現象や記憶などをどのように伝承し、それが現代の暮らしに埋め込まれているのか。このような、住民の認知や意識を調査することを目標として、今回はその準備でフィジー共和国の主島であるビティレブ(Viti Levu)島とトンガ王国の主島であるトンガタプ(Tongatapu)島を訪問してきました。
  フィジー共和国では、首都スバでプロジェクトのカウンターパート組織であるMineral Resources Department(MRD)などの関係機関などと協議しました。また、MRD職員の同行を得て首都から東に約20キロに位置する3つのコミュニティ(Kuva、Daku、Nakorolevu村)を訪問し、住民の代表者と意見交換をしました。
  トンガ王国では、トンガタプ島の首都ヌクアロファでカウンターパート組織であるTonga Geological Services(TGS)などとの打合せに加えて、2022年1月のフンガ・トンガ=フンガ・ハアパイ火山の噴火により発生した津波の浸水被災地の巡検をしました。
  フィジー共和国の村の住民の代表者との意見交換で印象的であったことの1つが、日常生活のなかで自然な形でハザードが知覚されていることがわかったことです。ハザードを示す表現がフィジー語にあり、例えば、「ualoka」は津波と高潮の両方の事象を示したり、軽石は「soata」といいます。また、地域によっては、軽石が浜辺に漂着したり、軽石が漁の邪魔になったりすることがままある、ということがわかりました。その一方で、フィジー国立大学の教員によれば、住民は単語を知っていたとしても、それが意味する事象のメカニズムや、もたらされるかもしれない被害の様相などの理解については限定的ではないだろうか、というコメントをいただきました。
  トンガ王国では、住民の土地に対する考え方についての考え方が特徴的でした。トンガ王国では、多くの土地は王様が所有しており、津波で被災した住民が移転した際にも、王様の配慮により提供されたことになっています。土地に対する愛着なども他国とは異なる感覚である可能性があります。フィジー共和国でも、トンガ王国でも、今後の住民調査の詳細設計に向けて、示唆的で有意義な情報収集や意見交換などをすることができました。


左:MRDでの打合せの様子。中:フィジー・Daku村での意見交換の様子。
右:トンガ・Atata島民の移転地区の様子。(報告:井内加奈子・地引泰人)

バヌアツ共和国でのドローントレーニング報告(G1:2024/11/18-22)

バヌアツ気象・地象災害局の方々へドローントレーニングを行いました

  バヌアツ共和国の首都ポートヴィラ(エファテ島)において、バヌアツ気象・地象災害局(VMGD)の方々へのドローンのトレーニング、ドローンや関連機器の供与の手続きを行いました。本プロジェクトでは、バヌアツのアンブリム火山において、ドローンを用いたLiDAR測量(レーザーを使った地形測量)や空中磁気探査(空中における磁場の強さから、地下に存在する磁石の強さ(磁化)を推定する探査)を行う予定です。特に、LiDAR測量は、従来の地形測量である写真測量(写真を大量に撮影し、地形を復元する方法)に比べ、樹木の下の地形も調査できる可能性があるという点で優れており、さまざまな地域・対象に対する測量方法として有効です。今回のトレーニングは、ドローンの基本的な操作方法や安全対策、LiDARの使用方法に焦点を当てて行いました。
  1日目はドローンの基本的な安全対策や使用方法について座学を行いました。2日目から4日目までは、半日、ドローン飛行のフィールド実習を行い、半日、取得したデータの解析手法の実習を行いました。VMGDの方々は、非常に熱心に、また楽しそうに実習に参加されていました。近年のドローン技術の発展で、安定した飛行が簡単に行えるようになっていることも手伝って、VMGDの方々はあっという間に飛行方法を習得されていました。
  今後、VMGDの方々は標準作業手順書(SOP)を作成し、さらに技術を習得するために週に1回はドローン飛行トレーニングを継続していくつもりだとおっしゃっていました。また、ドローンを使った測量の対象もすでにたくさん候補を挙げられていました。安全に、積極的にドローンを活用していく気持ちが感じ取れ、嬉しくなりました。

(報告:田中 良)

トンガ王国でのドローントレーニング・地形地質調査報告(G2:2024/11/6-20)

トンガタプ島においてドローントレーニングと地形地質調査を行いました

  近年ドローン飛行やドローン搭載カメラによる調査の技術が向上しており、ドローンによって危険な地域の調査、詳細な地形計測、地熱活動の観測などを行うことができると期待されています。本プロジェクトでは日本からトンガへドローンやLiDARカメラ(レーザーを使うことで3D点群が得られるカメラ)、赤外線カメラなどを供与することとなっており、今回我々は供与の手続きやドローンのトレーニング、地形地質調査を行う目的でトンガを訪問しました。
  約2週間のトンガ滞在のうち、まず到着直後は島内を回って火山噴出物の地質調査を行いました。その結果、大規模な火山噴火によって形成されたと考えられる火山噴出物の層を見つけました。今年の7月には地質調査によって複数の津波イベントの痕跡を見つけていますが、これらの津波イベントとの関連性も含めて今回見つけた火山噴出物の調査分析を今後より詳しく行っていく予定です。
  週末を挟み、週明けにはTonga Geological Services(TGS)において機器の供与セレモニーを行いました。その後は機器の使用方法について講義やトレーニングを行い、トンガの方々に自分でドローンを使ってもらえるように指導しました。TGSの皆さんは興味津々にトレーニングに参加されていました。
  トレーニングの終了後は実際にフィールドへ赴き、海岸の地形を計測するためにTGSの方々と一緒にドローンのLiDARカメラによる測量を行いました。海岸の地形には過去の地震や環境変化による海面の高さの変動が記録されている可能性があり、今後得られたデータを解析して地形の形成原因を解明していく予定です。また同時にトレンチ掘削による地質調査も行いました。津波の可能性がある堆積物が見つかった地点もあり、こちらについても採取した試料の分析を行っていきます。


左:供与セレモニー、中:ドローンによる調査、右:LiDARによる津波石のスキャンデータ
(報告:池永有弥)

「世界津波の日」のフィジーでのイベントに参加しました

プロジェクトを紹介するポスターとビデオを展示しました

  2024年11月5日、世界津波の日に際し、フィジーの住民に対し津波に対する知識と津波発生時の対策を強化することを目的としたイベントが、プロジェクトのカウンタパート組織である、Mineral Resources Department (MRD)の主催で首都スバで実施されました。防犯知識を早い段階から持つことが重要との認識から、昨年と同様に地元の5つの学校(小学校~高校)も参画してもらう形で開催されました。
  本プロジェクトの取り組みについて、活動を紹介するポスターとビデオを展示しました。ビデオによる紹介では、MRDの共同研究者が、フィジーや隣国バヌアツ等でのフィールド調査の様子を見せながら、生徒達からの積極的な質問に答える場面もありました。本イベントでは、生徒が津波やその他の災害をテーマにした研究を発表するコンペを行い、火山災害について取り組んだSuva Grammar Schoolのクラスに対して「JICA/SATREPS賞」が授与されました。また、実際の津波発生を想定した避難訓練も実施され、その様子がドローン撮影されTV番組で生中継されました。当日は、National Disaster Risk Reduction(NDRR)等の関係省庁やUNDRRを含む国連組織、NGO等も含めおよそ総勢800名程が参加し大盛況で、このイベントに参加することにより、本プロジェクトとして効果的なアウトリーチ活動ができました。


左:ビデオで西之島噴火を紹介中、中:プロジェクトポスターと子供たちの絵、右:イベントの様子
(報告:吉田由香理)

バヌアツ観測・調査報告(G3:2024/9/22-10/8, G1:2024/9/26-10/11)

バヌアツ共和国で火山観測と火山噴出物の調査を行いました

  今回私たちはバヌアツ共和国の首都ポートヴィラ (エファテ島) を拠点に, バヌアツ気象・地象災害局 (VMGD) の協力を得て, タンナ島とガウア島で野外観測および地質調査を行いました. バヌアツは80の島々で構成される南太平洋の島国です. 近くのオーストラリアやニュージーランドから観光客が訪れますが, 日本や他のアジアからの観光客はほとんど見かけません. 拠点にしていたポートヴィラは, 活気溢れる市街地のマーケットやコバルトブルーの美しいビーチが魅力的なリゾート地です. 公用語はビシュラマ語, 英語, フランス語の3つで, 主に使用されるビシュラマ語は英語との共通点が多く, 日本人にも馴染みやすいです. バヌアツの人々は人懐っこく友好的で, 通りすがりの際には ”Hello! Good morning!” と声を掛けられます.


  タンナ島にはポートヴィラから小型機に乗って1時間で到着しました. 私たちは海岸沿いのSiwi カルデラの噴出物を調査し, カルデラ形成後にカルデラ中央にできたヤスール火山では, 火口縁から噴火を観測しました. わずか500 mほど眼下では轟音とともにマグマが吹き上がり, 規模の大きい爆発では, 赤熱した火山弾が目の高さまで到達します. プロジェクトではヤスール火山に観測小屋を兼ねたシェルターを設置するために, 事前調査として火山弾の大きさや密度, 火山斜面の地盤強度などを測定しました. 現在ヤスール火山ではA, B, Cの3つの火口が活動しており, 泡が弾けるような噴火 (パフィング) が数秒おきに, 規模の大きな爆発が数分おきに生じています. 今回, 火口から北東に500 m 離れた観測点で空振のアレイ観測と地震観測を2日間実施しました. アレイ観測では複数地点にセンサーを配置し, シグナルの到来方向を推定します. 今後の解析によって,観測された現象がA, B, Cのどの火口で発生したかを区別し, 活動メカニズムの更なる理解を目指します. さらに, ヤスール火山地下のマグマの様子を知るために, 村の水源で地下水の温度, ph, 電気伝導度, 酸素濃度などを測定しました.


 ガウア島には地質班が上陸して調査を行いました. ガウアはポートヴィラから飛行機で2時間ほどの距離にありますが, 定期便は無く, 観光客のほとんどいない離島です. 調査初日は観測班が準備した地震計を観測点に設置し, 可動する任務です. ポートヴィラに観測班, 日本に遠隔支援スタッフ, ガウアに地質班とVMGDスタッフという連携体制のもと, 無事に任務を達成することができました. 調査中日には島中央のカルデラ湖までジャングルを4時間ほど歩き, 道中の溶岩を採取しました. 今後年代測定などを行い, ガウア火山の噴火履歴を明らかにします. ガウア島の東側は周回道路があるため, 道路沿いで最近の噴出物を観察できます. 西半分は道路がないため, 調査最終日にはボートを借り上げて海岸沿いを調査しました. ボートが着岸可能なビーチには大抵小さな村があります. 上陸後すぐにVMGDスタッフが村長に事情を説明し, 彼らの土地に入る許可を得ます. インターネットもスマホもない村の住民は日本人が来たことや地質調査そのものに興味津々です. 私たちは大勢の見学者に見守られながら, カルデラ噴火堆積物を調査しました.


  タンナ島やガウア島は未舗装の道路が多いため, 現地のドライバーを雇っていました. 車での移動中,ドライバーが隣村まで歩いている人に声を掛けて荷台に同乗させることがよくありました. 離島では自給自足が基本であり, 家族でなくても無償で助け合う彼らの姿に, 日本人として深く感銘を受けました.
(報告:安田裕紀・柘植鮎太)

第一回JCC会議報告(2024/8/15-16)

本プロジェクト最初のJCC会議と関連した活動を行いました

  Joint Coordinating Committee Meeting (JCC会議)は,年1回開催することとなっています.本プロジェクトの第一回の会議を,フィジーの鉱物資源省をホストとして,フィジー・スバ市の由緒あるGrand Pacific Hotel にて開催しました.フィジー・トンガ・バヌアツ各国の代表機関のほか,対策機関や大学などの協力機関が出席しました.また,UNESCO-IOCもオブザーバー参加をしていただきました.日本チームは,8名が現地参加し,日本からもオンラインにて参加しました.付随して,衛星火山監視講習(森田助教・金子准教授)・南太平洋大学におけるセミナー(後藤教授)・災害対応に関する小会議(井内准教授)なども開催し,知識や意見を共有しました.プロジェクトに参加する多くのメンバーが集まり,楽しい時間を過ごすことができました.


(報告:市原美恵)

DAS観測成果報告(G3:2024/7/21-26)

トンガ王国・トンガタプ島においてDAS観測の成果報告を行いました

  2022年1月のフンガ・トンガ=フンガ・ハアパイ火山の噴火により,トンガ王国の主島であるトンガタプ島とハアパイ諸島・ババウ諸島を結ぶ海底ケーブルが切断されました.損傷がなかったトンガタプ島から30km程度の区間で分散型音響センシング(DAS)を使った地震の観測が2023年2月に行われ,データの解析を進めています.DASを用いた地震観測では,海底地震計に比べ安価にリアルタイムの地震観測が可能であり,フンガ・トンガ=フンガ・ハアパイ火山のような海底火山による火山性地震を観測できる可能性を秘めています.
  今回の渡航では,DAS観測の成果報告をトンガケーブル社(Tonga Cable Ltd.)や自然災害に関連する政府機関の方に対して行いました.報告では,DAS観測の原理や観測データの解析方法について説明し,観測データを用いた地震の解析結果を報告しました.報告においては,更なる観測に向けた交渉も行いました.また,ハアパイ諸島のリフカ島へ渡り,海底ケーブルの状態を確認する試験を実施しました.
  予定の合間には,トンガの美しい海の景色を観ることができ,トンガと太平洋の深い関係を感じることができました.
(報告:中尾俊介)

火山・津波地質調査(G1,G2:2024/8/6-12)

フィジー・Kadavu island(カンダブ島)において火山噴出物と津波堆積物の調査を行いました

  300以上の島からなる南太平洋の島国フィジーは,ビーチやサンゴ礁が美しいリゾート地として有名で,日本からも観光客が訪れます.フィジーには日本よりは少ないものの火山が存在し,過去数百年の間に噴火した火山としてはNabukelevu(ナブケレブ)火山とTaveuni(タベウニ)火山が知られています.また過去には津波被害が発生しており,1953年の地震では首都スバなどで津波による死者が出ています.フィジー近海で発生する津波以外に,遠くの国で津波が発生した場合でも,太平洋を波が伝播することでフィジーに被害が生じる可能性があります.そのためフィジーにおいて過去の噴火や津波の履歴を地質学・物質科学的に調査することは,将来の災害に備える上で重要であると考えられます.
  今回の調査では,人口1万人ほどの離島であるカンダブ島(Kadavu island)に渡り,フィジーの鉱物資源省の方2名とともにNabukelevu火山および津波堆積物の調査を行いました.火山については,麓の村周辺やボートを使わないと到達できない海岸などを調査し,火砕流や降下火砕物,溶岩など様々な種類の噴出物を見つけることができました.噴出物はサンプリングを行い,日本に持ち帰って化学組成などの分析を行う予定です.津波については,津波が来た際に浸水しうる標高の低い場所を中心に複数のトレンチを掘削し,津波堆積物の有無を調べました.その結果,津波によって形成された可能性のある層が見つかりました.地元の長老に話を聞いたところ,1960年に突如津波が村を襲い,村は壊滅したそうです.ひょっとしたら今回見つけた層はこの津波に関連しているのかもしれません.1960年の津波といえば日本でも被害が発生したチリ地震が有名ですが,長老の話ではチリ地震とは日付が大きく異なるため,チリ地震とは別のイベントによる津波があったようです.当初の想定には全く無かった津波の話を聞くことができ,とても有意義でした.

(報告:池永有弥)

津波堆積物調査(G2: 2024/7/2-12)

トンガ王国・トンガタプ島において津波堆積物調査を行いました

  トンガ王国の周辺にはトンガ海溝や海底火山が多数存在し,津波リスクが非常に高い地域となっています.実際に,2022年にはフンガ・トンガ=フンガ・ハアパイ火山噴火により,首都のあるトンガタプ島では最大遡上高20m もの大津波に襲われました.しかし,トンガ王国における津波堆積物研究は乏しく,津波の発生履歴はほとんどわかっていません.そのため,将来の津波リスク評価が難しい状況になっています.
  そこで今回我々は,トンガ王国のトンガタプ島においてトンガ地質サービス(Tonga Geological Services)の研究者と共同で津波堆積物調査を実施しました.調査の際には,主に津波石(津波によって海から陸に運ばれた巨大な岩塊)の直下にトレンチを掘ることで,津波堆積物の発見を試みました.その結果,複数地点において津波堆積物の可能性のある堆積物を発見することができました. また,調査の初日にJICAトンガ支所を訪問し,調査におけるJICAとの連携について確認を行いましました.さらに,調査の最終日にはトンガ政府の国土資源省(Ministry of Lands and Natural Resources)を訪問し,CEOに今回の調査結果の報告を行いました.

(報告:中田光紀)

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