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地震研究所 オープンキャンパス / 一般公開 2012
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ミニ講演会
地震研究所の研究者と御来場の皆様が、素朴な意見や質問を交わして頂くことのできる場として、
ミニ講演会を開催いたします。30 分の講演で最先端の研究をご紹介いたします。その後は気軽な
雰囲気で講演者に自由に質問したり、研究生活について聞いてみたりしてください。
会場:1号館3階セミナー室
講演スケジュール:
- 10:30 - 11:15 前野 深 (火山噴火予知研究センター・助教)
- 11:15 - 12:00 小原一成 (観測開発基盤センター・教授)
- 12:00 - 13:00 昼休み
- 13:00 - 13:45 前野 深 (火山噴火予知研究センター・助教)
- 13:45 - 14:30 小原一成 (観測開発基盤センター・教授)
*ミニ講演会では午前と午後で同じ講演を行います.ご都合の良い時間帯に是非お越しください.

「カルデラ噴火の顛末を探る」
by 前野 深(火山噴火予知研究センター・助教)
日本列島にはいくつものカルデラ(阿蘇,十和田,洞爺,屈斜路など)が存在し,
どれも風光明媚な観光名所となっている.
しかしカルデラの存在は,かつてそこで破局的な巨大噴火が起こったことの証拠でもある.
国内では,カルデラを形成するような巨大噴火は歴史時代に発生していないが,
数千年に 1 回程度の頻度で確実に繰り返し発生している.
カルデラを形成する巨大噴火が発生した場合,
地表に放出された大量の火山砕屑物や火山ガスにより,
周囲の人間社会や自然環境は長期間,
広域にわたり(場合によっては地球規模で)深刻な影響を被ると考えられている.
いわゆる「低頻度大規模自然災害」である.
カルデラ噴火とはどのような現象であるかを理解することは重要だが,
そもそもどのように地下深部に大量のマグマが蓄積され,
地表に放出されるのか? どのようにカルデラ陥没が進行し,
破壊的な地表現象が発生するのか?といった基本的な問題も実はまだ良くわかっていない.
過去の巨大噴火について詳しく知るためには,
堆積物に残された痕跡を丁寧に読み解く必要がある.
海外の有史以降の実例では,観察・観測記録が重要なヒントを与えてくれる.
こうした様々なデータをもとに構築されてきた,カルデラ噴火の描像に迫りたい.
とくに縄文時代(7300 年前)に南九州で発生した鬼界カルデラの噴火や,
1883 年にインドネシアのクラカタウ島で発生した噴火に関する最近の研究からは,
カルデラ陥没の過程や,巨大火砕流と津波の挙動や規模など,カルデラ噴火について様々なことがわかってきた.
「東北冲地震に影響された地震活動-足元に潜む危険-」
by 小原一成(観測開発基盤センター・教授)
2011 年 3 月 11 日に発生した東北沖地震は、マグニチュード9という、日本周辺では観測史上
最大の超巨大地震であった。この地震は、太平洋プレートと呼ばれる岩盤が日本列島を載せている
陸側プレートの下に沈み込むために発生したものである。この地震によって日本列島は大きく変形
し、東北地方の太平洋沿岸部で最大 5m、日本海沿岸では 1m ほど東に移動した。つまり、平行移
動ではなく、地殻が東西に引き伸ばされたことになる。この変形により、東北から関東・中部地方
では、これまで働いていた力の向きや大きさが変わり、各地で新たな誘発地震が発生した。最も顕
著な活動は、福島県のいわきから茨城県北部の地域で、東北沖地震から約 1 カ月後の 2011 年 4
月 11 日にマグニチュード7の地震が発生し、現在もなお余震活動が継続している。この地震活動
の特徴は、震源の深さが 5∼10km と非常に浅く、東西の引っ張りの力によって発生していること
であるが、これとよく似た地震活動は、千葉県銚子付近でも起きている。ここでは、東北沖地震発
生直後から地震活動が活発化していたが、
これまでで最大の地震が東北沖地震から約 1 年後の 3 月
14 日に発生しており、引き続き、活発な状況が続いている。
一方、首都圏には、陸側プレートと太平洋プレートとの間に挟まるように、フィリピン海プレー
トが南東から沈み込んでいる。1923 年の関東大震災を引き起こした関東地震は、そのフィリピン
海プレートと陸側プレートとの境界で発生したものであるが、これと同様のメカニズムを有するプ
レート境界の地震活動が、東北沖地震の後に活発化していた。例えば、茨城県南西部ではもともと
プレート境界付近の地震活動が盛んであるが、
東北沖地震以降はさらに顕著になった。
このことは、
このプレート境界でのすべりが加速したことを示している。また昨年 11 月には、房総半島沖でス
ロースリップイベントが発生した。スロースリップ自体は、地震波を伴わずにゆっくりプレート境
界がずれ動く現象であるが、その周囲で中規模の地震を誘発する。前回 2007 年のスロースリップ
のときには、最大で M5 クラスの地震が発生した。このスロースリップは、過去 30 年間に平均6
年間隔で繰り返し発生してきたが、今回と前回との間隔がこれまでで最も短く、太平洋沖地震によ
って発生が早まったとも考えられる。
以上のように、太平洋沖地震は、陸側プレートの浅い地殻内だけでなく首都圏直下に沈み込むフ
ィリピン海プレートにも影響を与えており、今後、首都圏で、このような地震が発生する可能性が
ある。これらは、たとえ地震の規模が小さくとも、陸域直下の比較的浅いところで発生するため、
局所的に大きな揺れに見舞われる危険性がある。従って、足元に起きる地震にも常時備えておくこ
とが必要であろう。
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