熊野灘のスロー地震
熊野灘は、紀伊半島の南に位置する海域で、地震活動が活発な地域です。特に、スロー地震と呼ばれる、通常の地震よりも長い時間をかけてエネルギーを放出する地震が頻繁に発生しています。これらのスロー地震は、地下の断層面でゆっくりとすべりが進行する現象であり、通常の地震とは異なるメカニズムで発生すると考えられています。 海底地震計の稠密観測データを用いて、熊野灘のスロー地震の発生メカニズムや地下構造との関連を解析しています。これにより、スロー地震がどのような条件下で発生するのか、また、通常の地震との違いは何かを明らかにすることを目指しています。
テクトニック微動の震源決定手法の開発
テクトニック微動とは、スロー地震の一種で、数分間にわたって地震波が連続的に発生する現象です。これらの微動の震源を正確に決定するための新しい手法を開発しています。 新手法では、地震波の到達時刻だけでなく、振幅の情報を活用するほか、ベイズ統計に基づく確率的な震源決定を行うことで、従来の方法よりも高い精度で震源位置を推定できるようになりました。
図1: 新手法で求めたテクトニック微動の震央分布。
スロー地震の断層滑りを規定する地下構造の要因
テクトニック微動の分布に基づいて、スロー地震の断層滑りを規定する地下構造の要因を調べています。断層の折れ曲がりや上盤側の硬い岩盤が、断層すべりを止める役割を担っていることが明らかとなってきました。
図2: テクトニック微動の震源分布と海底地形図ならびに地下構造の対応。
参考文献
- Akuhara, T., Yamashita, Y., Sugioka, H., & Shinohara, M. (2023). Locating tectonic tremors with uncertainty estimates: time- and amplitude-difference optimization, wave propagation-based quality control and Bayesian inversion. Geophysical Journal International, 235(3), 2727–2742. https://doi.org/10.1093/gji/ggad387
- Akuhara, T., Shiraishi, K., Tsuji, T., Yamashita, Y., Sugioka, H., Farazi, A. H., et al. (2026). Structural barriers control the spatial extent of slow earthquake slip. Nature Communications. https://doi.org/10.1038/s41467-025-68179-1